第五章 第十一話「激写! 美少女だらけの撮影会」
自分の部屋というテリトリーの中に、大好きな美少女が三人そろってる。
この好機を生かさぬわけにはいかない!
私は生唾を飲み込み、みんなにカメラのレンズを向けた。
「あのぅ……。それでですね……。みんなの写真を撮っても、いいでしょうか?」
ためらいながらお願いするふりをしているけど、心の中ではワクワクが止まらない。
早く撮り始めたくて仕方がない。
「写真? それは資料なのですか?」
ヒカリさんはキョトンとした表情で私を見あげている。
「はい。正確に特徴をとらえるためには資料が必要なんですよ~。特にイラストを完成させるには時間がかかるので、皆さんが帰った後も確認できるように、きちんと写真に残しておかなければいけないんです!」
本当は資料が不要なほどに脳にインプット済みだけど、それはそれ! これはこれ!
私はいたって真面目な顔で説明した。
すると、ほたか先輩は微笑み、改めてベッドの上でさっきのポーズをとってくれる。
「お姉さんはもちろんいいよっ! ……こんな感じでいい?」
さすが、ほたか先輩!
私の
「こ……これはいい感じです! 視線をもっと上目遣いに!」
「こ……こう? じゃあ、枕を抱きかかえて……こんな感じはどう?」
「ふひょぉー! バッチリですよ!」
最高すぎる!
やっぱりほたか先輩は最高の美少女だ。
どんなアングルでもさまになっている。
「つ、次は唇に指を当ててみてください!」
「えっと……こう?」
ほたか先輩は唇に触れながら、照れくさそうにレンズを見てくれている。
以前のキスを思い出しているのかもしれない。
その様にしむけたのだから、計算通りだ。
すると、
「ぬ~。アタシも撮ってくれよぉ」
「いいよぉ~! じゃあ、腰に手を当ててモデル立ち!」
モデルと言われて美嶺は恥ずかしそうな顔をしたが、リクエスト通りにポーズを決めてくれる。
高身長の美嶺はスッと立っているだけで、すでにかっこいい!
「いいね~。美嶺、かっこいいよ! ……次は腕組みして、見くだす感じで! そう、ゴミを見るようにに私を見て!」
「そんな……マニアックな! こ、こんな感じか? ……って、ましろ、それじゃローアングルすぎるだろ。ス……スカートの中、見えてないか?」
「はぁ……はぁ……。大丈夫、大丈夫っ! まったく見えてないよ~」
本当は見えてるけど、それは内緒だ!
「あ、そうだ! 手でハートの形を作ってみてよ~」
「できるわけないだろ! そんな恥ずかしい真似……」
「お! 顔が赤くなった! いいね、いいね~」
顔を赤くしてる美嶺を見るだけで興奮してきた。
私は夢中で写真を撮り続ける。
「と、撮るな!」
「いいではないか~」
私が美嶺に迫って写真を撮っていると、ヒカリさんが私の肩をトントンと突っついてきた。
「ましろさん……。美嶺さんが困ってるのです」
その眼は真面目そのものだ。
ヒカリさんに言われてしまうと、なぜだか逆らうことが出来ない。
私は申し訳なくなって美嶺を解放した。
「あぅぅ。美嶺、ごめんね……。じゃあ、お次は千景さん。いや、ヒカリさん?」
「ヒカリなのです。……なにかポーズをとったほうが良いのでしょうか?」
床の上にぺたんこ座りしているヒカリさんは首をかしげながら言った。
その仕草があまりにも可愛くて、意気消沈した私の心に再び火がともる。
なんというか、欲情にも似た感情がふつふつと湧き上がるのを感じた。
「ふあぁぁ……。そのままで最の高です……。可愛すぎる!」
「あ……あの。カメラが近すぎると思うのですが……」
困るヒカリさんの顔も最高だ。
私はかまわずに撮り続ける。
「大丈夫です。私に任せて! ふひひ。……次は銀髪を取って、千景さんになってくださいな」
言われるがままにヒカリさんがウィッグを取ると、千景さんの恥ずかしそうな顔が見えた。
そのとたんに私はムラムラっと来てしまった。
「あ、あのですね……手を胸の下にあてて、持ち上げる感じでっ! いや、こう? こうかな?」
千景さんの手を握り、ちょうど良い位置を探る。
「ま、ましろさん! あ……、そ、それは……」
「おい、ましろ……。ちょっと変態っぽいぞ?」
美嶺が横から口をはさんできたけど、私を止めることなんてできない!
できるわけがない!
銀髪のウィッグを外した千景さんは、ヒカリさんだったときとは打って変わって恥ずかしそうにモジモジしはじめた。
胸を持ち上げる動作を恥ずかしがっているので、私は手ほどきするようにポーズを補佐する。
「あ……。は、恥ずかしい」
「はぁ……はぁ……はぁ……。千景さん、その顔、いいですよぉ」
その時、私の両腕が左右からつかまれてしまった。
「ましろちゃん! ちょっと落ち着いて!」
「そうだ、落ち着け!」
ほたか先輩と美嶺が
千景さんから引き離され、私は急に我に返った。
「はっ……。私は何を……?」
ようやく冷静になった私は状況が見えてきた。
なんと、千景さんのブレザーのボタンをはずそうとしているところだったのだ。
すでに第一ボタンが外されており、白いブラウスに包まれた胸元があらわになっている。
危なかった……。
止められていなければ、ブレザーどころかブラウスのボタンまで外していたかもしれない。
「……ましろさん。エッチです」
千景さんは恥ずかしそうに私を見あげているが、軽蔑の目では見ないでくれているので、本当にありがたい。
「あぅぅ……。本当に……失礼しました! ……あの、私って興奮すると暴走しちゃう癖があってですね……」
「知ってるって」
「知って……ます」
「お姉さんも知ってるよ~」
三人は口をそろえて笑っている。
そうだった。
それこそ入部した日から始まり、この一か月間で何度やらかしたことか……。
みんな、私の変なところを知ったうえで受け入れてくれていると分かって、嬉しいような恥ずかしいような複雑な気持ちになってしまった。
ひとまず、私のスマホには十分な数のお宝写真が満たされた。
堪能するのはあとにして、今は絵を描こう。
私はみんなが見守る中、ペンを握りしめた。
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