まず最初に、登場人物が若者であるため、どの年齢層の方でも感情移入がしやすい作品です。
窃盗事件を題材にしています。これは、広義のミステリー(刑法犯)に当てはまるため、巷にあふれてきた「別に解かなくてもよい謎」でないのも推奨できる点です。通常、盗んだ人は誰なのか? 知りたいですよね。
語弊があるかもしれませんが、ミステリー小説の入門として適切な小説です。これはなにも単純であるという意味ではありません。
それは何故か。
フーダニット(誰が犯人か)とホワイダニット(なぜ犯行に及んだのか=動機)がうまい具合に融合されているのです。
と言って頭がこんがらがるような複雑さはなく、伏線もフェアであるため、「ミステリー小説を読んだことがない」という人でも、すんなり読了できるかと思います。
この『友達しかみられない』は、ミステリー小説は決して敷居が高いジャンルでないということを教えてくれる作品でもあります。
さあ、肩肘張らずに読んでみましょう。読み終えた後は、一服の清涼とともに、作者様の他の作品も読みたくなること請け合いです。
主人公、渡貫 詳の『お悩み相談サークル』に持ち込まれる数個の謎について、鮮やかに解かれている作品。
主人公の感情の根底にある謎からも目が離せなくなるような構成になっており、単なるミステリーとは一線を画します。
読者は待ち受ける最初のミステリ、八代 愛美の浮気調査の依頼で程よいジャブが効いてくるのを感じてくるでしょう。ジャブが効いたらあとは自然に目が離せなくなっていきます。
そして最後の「死神盗難事件」……物語を通じて撒かれていた伏線が絡み、解かれる様に一気に目を瞠ります……!これは是非ミステリー好きでもそうでない方も目を通していただきたい物語です。読後感はすこぶる良く、すっきり晴々とした気分を味わえます。
最後に、この小説を面白くないという人は——きっとマッドサイエンティストにロボトミー手術を施されたか、海馬に電極でもぶっ刺されたに違いない——