人形列車 鉄亜鈴城10
和希さんに案内されるままに道を歩いていくと、体育館くらいの大きさの建物が見えてきました。
「見えるか? あれだぞ」
「次は室内なんですね」
「へ~。ここも結構人がいるのね~」
「まあクリア出来なくても見学は出来るからな。とりあえず中に入るぞ」
「そうですね」
まず先頭の和希さんがゲートの前に行くと、入り口のセンサーが反応して通行止めのバーが上がり、中に入れるようになりました。
リニスも続いてゲートをくぐり、最後に私もゲートをくぐろうとすると―――――。
ピピーッ!
「はうっ!?」
警告音と共にゲートの横にあるバーが下がってきて、私の入場を拒んで来たのでした。
「ええっ!? なんで!?」
「桜はファーストステージをクリアして無いからじゃないかしら?」
「…………あ」
2人が続けてクリアしたので忘れてましたが、そういえば私は壁を登った所でタイムアップになっちゃったんでした。
「横に観戦用の入り口があるから、そっちからなら入れるぞ?」
「…………そうですね。私は観客席から応援してるので、私の分まで頑張ってきてください」
「まっかっせて~」
2人の入場を見送った後、私はシャンティと一緒に観客席へと続く階段を登って行くことにしました。
階段を登りきり観客席への入り口をくぐると、そこにはセカンドステージに挑まんとするチャレンジャーを応援する観客の熱気で溢れかえっていました。
観客席は会場の真ん中に作られたアスレチックステージを囲むように作られていて、7割くらいの席が埋まっている感じです。
少し上の方にはプレイヤーの様子をアップで映すモニターも用意されていて、直接見るかモニターで見るか二通りの楽しみ方が出来そうです。
流石にセカンドステージだけあって、ファーストステージよりもかなり難しくなってるようで、今もアトラクションから滑り落ちたチャレンジャーが池に撃沈して失敗になってました。
「…………本当にあれをクリア出来る人がいるんですか?」
「少ないけど、ちょくちょくいるみたいだね~」
シャンティの出力してくれたデータを確認すると、確かにクリア出来ている人が何人かいるようで、人類の可能性が見えた気がします。
「あっ。次は和希の番みたいだよ」
「本当です!? 和希さ~~~ん。がんばれ~~~~~!」
私が今座っている2階席からアスレチックステージまではかなり距離があって、和希さんまで声が聞こえるのかわかりませんが、私は必死に声を出して応援しました。
声が聞こえたのか、和希さんは一瞬だけこっちをチラリと見てから集中してステージへと挑みはじめます。
和希さんはリアルでもスピードタイプなのか、飛んだり跳ねたりする場所は順調にクリアしていきましたが、純粋にパワーを必要とする場所はちょっと苦戦しちゃってるみたいです。
それでも何とか得意ゾーンのアドバンテージを活かしてギリギリでゴールへと滑り込み、なんとかクリアしてくれました。
「おおっ!? 凄いですっ!?」
どうやら和希さんが今日始めてのクリアプレイヤーみたいで、お客さんの盛り上がりも最高潮!
歓声に包まれる中、和希さんは「ふぅ」と息をひとつ吐いてクールに去っていきました。
そして次はリニスの番。
流石に2人連続で女の子という事で驚きを隠せない人は多いようですが、和希さんが良い流れを作ってくれたので、勢いに乗ってクリアして欲しいですね。
スタートのブザーが鳴り、勢いよく飛び出していくリニス。
しかし、何故だかファーストステージを正確無比な動きでクリアした時とは別人みたいなぎこちなさで、序盤から大苦戦しているみたいです。
「あれ? 調子が悪いんでしょうか?」
そのままリニスは細い道を渡っている時に足を滑らせて水の中へと落下してしまい、セカンドステージでリタイアになってしまいました。
2人の挑戦が終わったのでとりあえず私達は合流する事にして、私は建物の入り口で2人を待つことにしました。
少し舞っていると、最初に和希さんが1人で歩いてやってきました。
「おや? 1人だけですか?」
「あいつは服が濡れたから乾燥機で乾かしてから来るんだとさ」
「そうだったんですか」
リニスが来るのを待ちながら、近くにいた和希さんなら何か不調の理由をしってるかもと思ったので聞く事にします。
「あの。そう言えばリニスに変わった様子とか無かったですか?」
「別に変わった様子は無かったぞ。ただ知らなかっただけじゃないのか?」
「――――知らなかった?」
「最初のステージは全ての器具を知っていた。そして、ここにあるのは知らなかった。私にはそうとしか見えなかったぞ」
どういう事でしょうか。
私はてっきり室内が苦手だと思ったけど、そうじゃない?
「あっ!? いたいたぁ。2人共おまたせ~」
すこしたってから、服を乾かし終わったリニスがやってきました。
「残念でしたね」
「な~んか。体が上手く動かなかったのよね~」
「まあ、こんな日もあるだろ。それよりこれからどうするんだ?」
「えっと。これでステージは終わりなんですか?」
「あと1つあるけど、別に他に行きたい場所があるならそっち優先でもいいぞ?」
「いえ。せっかくここまで来たんですし、このまま最後までチャレンジして行ってください」
「そうね。私も和希が完全制覇する所はみたいかも」
「…………別にクリア出来るって確証は無いんだが。まあ、やれる所まではやってみる」
私達は和希さんが最終ステージに挑むのを見守る事にして、最終ステージが設置してある広場へと向かう事にしました。
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