私に投票してください! 生徒会長選挙バトル1
本日、私はフローターを引きながら学校へと向かっていました。
フローターとは伝説の運び屋コジマさんも愛用している荷物を運ぶ道具で、地面から数センチ浮いた鉄の板の上に荷物を置いたら自動で私の後を追尾してくれる便利な道具の事です。
この道具のおかげで私でも大量の重い荷物を運ぶことが出来るので、お届け物をする時には欠かせません。
学校の門をくぐり倉庫の前に到着すると、売店のオバチャンさんが私を出迎えてくれました。
「桜ちゃん。いつもごくろうさん」
「これも仕事ですから。では、ブツの確認をお願いします!」
私は薄ら笑いをしながら悪っぽく言うと、オバチャンさんはちょっぴり苦笑いを浮かべな
がらフローターに摘んである鉄製の箱を1個持ち上げて箱を開くボタンを押しました。
「相変わらず美味しそうね~」
「お店の看板の1つですから」
オバチャンが箱の中に入っている袋を取り出すと、中からビニール袋に包まれたラーメンの麺が出てきたのでした。
どうして私が学校に荷物を運んで来たかというと、私のお店の中華料理店は定期的に学校の学食にラーメンを提供しているからです。
ちなみに家のラーメンは生徒の評判はかなり良くて、学食の人気メニューの1つになってます。
「じゃあお代は後で振り込んでおくから」
「まいど~」
それから私は荷物を倉庫に入れるのを手伝い、荷物が全て無くなったらフローターのボタンを押すと、ガシャンガシャンと変形を始め丁度リュックサックくらいの大きさになりました。
コンパクトな大きさになったフローターを私はよいしょと背中に背負い、家に帰ろうとすると後ろからオバチャンさんに声をかけられました。
「そういえばもうすぐ学生選挙があるみたいね~」
うぐっ。
早く帰ろうと思ったのに捕まってしまいました。
オバチャンさんの話はかなり長いので、日常会話をするだけでかなり疲れてしまいます。
かといってお得意様なので無下にする事も出来ないので、適当な所で無理にでも切り上げて帰る事にした方が良さそうですね。
「そういえば、そんなのありましたか。私はあんまり興味ないので、すっかり忘れてました」
「ずっと生徒会長やってた子が去年卒業しちゃったから、今年から新しい子になるでしょう? オバチャン最近ずっとそれが楽しみでね~」
「――――はぁ」
私の学校は4年生から会長に立候補する事が出来て、去年卒業した会長さんは4年生から6年生になって卒業するまで3年間ずっと生徒会長を勤めた凄い人です。
流石に卒業してまで会長を続ける訳にもいかないので、今年からは誰か他の人が生徒会長になるのですが、果たしてどんな人がなるんだか。
まあ生徒会長なんて誰がやっても同じですし、私には関係ない話です。
「ところで、桜ちゃんは立候補とかしたりしないの?」
「私ですか? ゲームやる時間が減りそうなので、予定は無いですね」
「あらそう? 桜ちゃんが生徒会長になったら毎日面白そうな事件が起こりそうなのに」
「そんなよく分からない期待をされても困ります…………」
配達後の雑談も終わり、私は家に帰って行きました。
―――――次の日。
私は朝起きてからいつも通り学校へ向かったのですが、どうやら今日は校門の前で誰かがスピーカーで演説をしているみたいです。
そう言えば昨日オバチャンさんが生徒会選挙がどうとか言っていたので、たぶん立候補者の人ですね。
校門に差し掛かると、演説をしている人物が私に気が付いてスタスタとこっちに歩いて来ました。
「あらあら、誰かと思えば桜さんじゃありませんこと」
この人は中川麗華さん。
私のクラスメイトの1人でもあります。
有名な財閥のお嬢様で多少ワガママな所もありますが根はそこまで悪い人では無く、一般常識の無さを外から見てる分には逆に面白いまである人です。
「生徒会長に立候補するんですか?」
「あら、よく分かりましたわね。その通り、わたくしが次期生徒会長の中川麗華ですわ!」
「あの。まだ結果は出てないと思うのですが…………」
「おーっほっほっほ。そんなの結果を待つまでもなく、わたくしの圧勝で決まっているので、無駄な心配ですわよ」
「はあ、そうですか」
麗華さんが会長になったら変な学則がいっぱい増えて面白い事になりそうなので、私的には別にいいかといった感じですね。
それに麗華さんの家は学校に多額の寄付をしているので、理事長や校長先生すら逆らう事が出来ないので当選確定と言っても言い過ぎでは無いでしょう。
「そうそう。わたくしの公約一覧をまとめておいたので、是非後で見てくださるかしら。ス佐藤、例の物を」
「はい。麗華様」
麗華さんはパンパンと手を叩くと、おつきの生徒の1人の佐藤さんが手に持った端末を操作して私の電子学生手帳にデータを送信して来ました。
多分さっき言っていた公約一覧のデータファイルですね。
まあ全部見るのも面倒なので、暇な時間に適当に流し見してから削除する事にしましょうか。
それから何事もなく授業が始まり、休憩時間に少し暇ができたので朝に麗華さんに無理やり渡されたデータを、ちょっと面倒だなと思いつつ見ることにします。
早速バーチャルモニターにデータを表示すると。
「あれ? 何見てるの?」
と、前の席の忍さんが話しかけて来ました。
「ちょっと朝に麗華さんからデータファイルをもらったので、一応見ておこうかと思って」
「あ~。それなら私も貰ったけど、まだ見てなかったわ。ちょうどいいから一緒に見ていい?」
「はい。それでは、一緒に見ましょうか」
私は椅子をちょっと横にずらして2人並んで座れるくらいのスペースを開けると、忍さんは自分の椅子を私の机に持ってきて隣に座り。
「じゃあ開きますね」
入力端末を操作してファイルを開くと、いきなり麗華さんのドアップの顔が全画面に表示され、私達はちょっぴりドン引きしてしまいました。
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