カードマスターさくら編 3
私は忍さんがブチ切れして机をひっくり返そうとするのを必死の思いで机を抑えてなんとか踏みとどまらせました。
「し、忍さん落ち着いてください」
「ふんだ。もう良いわよ、こんな対戦すぐに終わらせちゃうんだから! ドロー!」
忍さんは勢いに任せて思い切りデッキからカードを引き抜くようにドローしました。
…………傷の全く無いスリーブですね。と言う事は最近デッキに入れたカードの確率が高いです。おそらく忍さんの事なので多分しょうもないカードだとは思いますが、知らないカードなので一応警戒はしておいた方が良さそうですね。
――――くふふ。まあ、私の前回大会優勝者のデッキを研究して全く同じカードで組んだデッキがそう簡単に負けるとは思いませんが。
「私はソウルドローを発動! ライフを好きなだけ支払って、その分だけデッキからカードをドロー出来る! 私はライフを15払って15枚ドローするわ!」
「…………忍さん。そんなにカードをドローしてどうするんですか」
「カードが必要だからドローしたのよ!」
一応、キャッスルゴーレムと言うカードを召喚する条件に手札を20枚捨てると言うのがあるのですが、このカードは世界に2枚しか存在していなくて、その2枚とも私が持っていたので心配は無いですね。
まあ、このゲームはデッキに同じカードは1枚しか入れる事が出来ないので少し前にネットオークションで1枚は手放したのですが、どっちみち今は関係のない事です。
「私は手札のカード20枚を捨て札にして――――」
あれ? なんだかちょっと雲行きが悪くなってきたような…………。
「手札からキャッスルゴーレムを特殊召喚っ!」
「――――なっ!!!?」
忍さんのフィールドに突如巨大なお城が出現して、土煙を立ち上げながら手足を出現させ巨大なゴーレムへと変形していきました。
「ど、どうして忍さんがそのカードを?」
「これ? オークションで見かけたらから買ったのよ」
買ったのは忍さんだったのですか!?
………むぅ。匿名配送で発送したのですが、まさか転売相手が忍さんだったとは予想外です。
「ふっふ~。キャッスルゴーレムの効果発動。相手の手札とフィールド上にあるカード全てを捨て札にする! キャッスルコンフィスケイション!」
キャッスルゴーレムのお城の石垣の部分がパカッと開いて、そこから全てを吸い込むような凄い勢いの風が私のデッキ以外の全てのカードを吸い込んでしまいました。
「こ、これはかなりピンチです!!」
「キャッスルゴーレムの更なる効果発動! キャッスルゴーレムはすぐに行動出来て他のカードの効果を受け付けない。そして攻撃力は100だからこの攻撃が通ったら私の勝ちぃ!」
勝利を確信した忍さんは勝ち誇った笑みを浮かべながら私に指を指しながら宣伝してきました。
「な~っはっはっは。これで終わりよ桜、キャッスルゴーレムのキャッスルパンチをくらいなさい!」
キャッスルゴーレムはンゴォと雄叫びを上げながら、巨大な腕で力任せにパンチを繰り出してきました。
「…………フゴッ」
巨大な腕が私のお腹にクリーンヒットして私は吹き飛ばされ、そのままライフが0に―――――なんて、なりません!
攻撃を受けた衝撃でフィールドには砂煙で覆われてしまいましたが、数秒後に煙が晴れたときには私はまだ立っていました。
「え!? 桜に直接攻撃が入ったからもうライフは残ってないはずじゃ…………」
「し、忍さん。わ、私は罠カードを発動していたのです」
「罠カード? キャッスルゴーレムに罠は通用しないわよ!」
「はい。なので罠を発動したのはモンスターカードにでは無く、私自信にです! 罠カード、オール・ワン。このカードはターン終了まで指定した物の数値を1に固定します。私は自分のライフを1に固定したので、このターンはライフが0になりません」
「そ、そんなカード持ってたなんて――――。けど別にいいわ、次のターンになったらもっかい攻撃して私の勝ちよ! ――――私は罠カードを設置してターンエンド」
忍さんはカードを一枚伏せてターンを終わらせました。
けど、その前に……………。
「てるてる仮面がフィールドを離れた事により、さっきまで雨雲だった空が晴天になってフィールド魔法カード太陽の訪れがセットされます。このカードはお互いの攻撃力が1プラスされるカードです」
何とかピンチは凌ぎましたが、忍さんのフィールドには強力なモンスターが1枚。私の場にはモンスターカードは1枚も無く、手札も0枚です。更にライフも1なのでモンスターカードの直接攻撃どころか、ダメージを与える魔法カードを使われるだけで私の敗北が決定してしまう事になります…………。
「…………こうなったら、次のドローに全てを賭けるしか無いみたいんですね」
「ふふん。どんなカードを引いたって私のお城は崩れさ無いわ!」
「私のターン―――――」
一回軽く深呼吸をしてから精神を集中させて…………。
「ドローです!!」
私はカードをめくると、カードからは今までにない熱量の様なものを感じます。
カードを見なくても分かります。どうやら私の魂を込めたドローは逆転の一枚を引き当てたのでした。
「私は魔法カード宝箱の選択を発動します。このカードは大小2個の宝箱から1つを選択して、中に入っている分のカードが手に入ります」
突然私の前にポワンと大小2つの箱が現れ私の手に小さな鍵が握られました。箱は両方共南京錠がかかっているので片方しか開ける事は出来ません。
「私はもちろん大きい方の宝箱を開きます!」
「あれ? 小さい方じゃなくていいの?」
「大きい方がいっぱい入ってそうですから」
私は鍵を使って箱を開くと、中には3枚のカードが入っていました。
そして箱を開いた瞬間、2つの箱は音もなく消え去ってしまいました。
「むぅ。予想より少なかったです…………」
「ほら。やっぱり私の言う通りにしてた方が良かったじゃん」
けれど、今更悔やんでも仕方がありません。何とかして今あるカードで現状を打開する方法を見つけ出さなければ――――。
私が引いたのは召喚したターンに行動出来るモンスターカードが2枚と相手モンスターを破壊出来る魔法カードが1枚です。
厄介な事にキャッスルゴーレムには守護の効果も付いていて、このモンスターを倒さないと忍さんに直接攻撃する事が出来ません。
フィールド魔法の太陽の訪れで攻撃力を1上げた所で焼け石に水でそんなに意味は無いですし、キャッスルゴーレムには破壊カードが通用しません。
というか、あの太陽のカードは無くても変わらない気が…………ん? 太陽が無くなる?
――――これは行けるかもしれません!
「私はモンスターカード、ツインザウルスを召喚します。このカードは1ターンに2回まで攻撃する事が可能性です!」
私のフィールドにティラノサウルスみたいな恐竜が2匹召喚されました。
「でもさ、それ攻撃力5でしょ? 私に直接攻撃出来たらそれで勝てるけど、キャッスルゴーレムを破壊しないと私に攻撃は通らないわよ?」
「知ってます。なので、ツインザウルスで攻撃!」
「ええっ!? 桜、もしかして自爆する気!?」
「――――忍さん。誰がキャッスルゴーレムを攻撃すると言いましたか?」
「…………ふぇ?」
キョトンとする忍さんに私は空に手を掲げて言い放ちました。
「私が攻撃するのは太陽です! ツインザウルス、ザウルスビーム!」
恐竜の1匹が口を開くと、そこからビームが発射され太陽に向かって飛んでいき、太陽に直撃した瞬間、太陽は粉々に崩れて無くなったのでした。
「そ、そんな事してどうするのよ? 私のお城はびくともしてないわよ?」
「確かにお城はびくともしていません。しかし、太陽が無くなった事で、お城を操縦している人はどうなるでしょうか?」
「操縦してる人……………ああっ!?」
「そうです! 太陽が無くなって夜になったら操縦している人は眠ってしまうので、キャッスルゴーレムの機能は停止します!」
キャッスルゴーレムはドシンと足をくずしてその場に座り込むように倒れて、元の普通のお城に戻ってしまいました。
これで、お城の横を通る事が出来るようになって忍さんに直接攻撃が出来ます。
「私はもう1体のツインザウルスで、こうげ……………!?」
「ふっふ~。ツメが甘かったわね、桜」
私のフィールドの恐竜たちはいつの間にかその場に倒れてしまっていました。
いえ、これは倒れたと言うより…………。
「太陽が破壊された事でフィールドに氷河期が訪れたわ。寒さに弱い恐竜たちは冬眠するから攻撃は出来ない」
「――――――むぅ。そこまで考えてはいませんでした……………」
「さっ、次の私のターンでお城を起こして―――――」
私がもう何もすることが無くなったと思った忍さんが、カードをドローしようとしたので私は引き止めました。
「忍さん。いつから私のターンがこれで終わったと勘違いしたのですか?」
「…………ふぇ? だって寒さが何とかなるまで召喚しても攻撃出来ないでしょ?」
「甘いです、忍さん! 私はモンスターカード、シロクマナイトを召喚!」
私の場にシロクマに乗った騎士が現れました。騎士は鎧では無く防寒着を着ているのでとてもあったかそうです。
「シロクマは白いので寒さの中でも動く事が出来ます」
「ええっ!? くっ。まさか、そんな手があったなんて」
「これで、終わりです。ベア・ナックル!」
シロクマナイトが忍さんの元に向かって突撃していきました。この攻撃が通ったら私の勝利です。
「まだよ! 私は罠カード、笹の葉の呼び声を発動するわ!」
忍さんが横に手を払うと、地面から笹の森が出現して、森の中からカンフーの道着を来たパンダがアチョーとポーズをしながら飛び出してきました。
「このカードは相手に直接攻撃された時にパンダマスターを召喚してガード出来る。こっちのパンダも白いから寒さに強いわ! これでガードすれば桜の攻撃は通らない!」
「むぅ。こしゃくな真似を――――。けど、このカードで最後です! 魔法カード、マジカル・クイズ発動!」
私がカードを天にかざすと、下からゴゴゴとクイズ番組のセットの様な物がせり上がってきて、私の前には司会者の立っているような台が出現して忍さんの前には回答者の座る座席と押したらピコンと鳴るボタンが出現しました。
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