お店を守れ!! ラーメンバトル編 5



「……シャンティ、どうしましょう?」

「えっと、ボクに聞かれても困るんだけど」


 戸惑っている私にファイターがマップの説明を兼ねた実況を始めてくれました。


「ここはクラウンデュエルの基本ステージの1つ、コロニー7。無数にある建物はバリケードとして使ったり、上に乗って隠れてる相手を狙い撃ったり出来るぞ! 上空は屋根になって塞がってるからあんまり高く飛びすぎると、頭をぶつけちゃうから注意だ!」

 

 ――――なるほど。

 どうやら地形を防御に使って戦えば試合を有利に進められる感じですね。

 だったら私の選んだクラスはかなり良い選択かもしれません。


 何故なら2段ジャンプを使えば簡単に建物の上に回避したり他の建物に移動出来るので、地形を最大限に使えるクラスと言っても過言ではないでしょうか。


 ――――私は試しに2段ジャンプで建物の上に昇ってみる事にします。

 スキルを使った2回めのジャンプには羽が羽ばたくエフェクトが加わり、とてもかわいい感じの演出が追加されてました。

 

 建物の横を見たら上にあがる為の階段があり、ほとんどのクラスは階段をわないと駄目みたいですが私のクラスだと使う必要は無さそうですね。


「えっと、店長さんは…………いました!?」


 くふふ。呑気に建物の影に隠れてるようですが、ここから丸見えです。

 ここは速攻で近付いて一気に決めるっ!

 

「おっと、ここで桜ちゃん。建物をジャンプで飛び越えながら、いきなり相手に突進していくぅううううう!?」

「さ、桜!? もうちょっと慎重に行ったほうが良くない?」

「問題ないです! 不意打ちでさっさと決めます!」


 店長さんが隠れている建物の上に到着した私は、そのまま店長さんの真後ろに着地するように降りて、大剣で横に一閃―――――しようと思ったら店長さんがどこにもいないっ!?

 

「あれ? どこにもいませんね…………」

「桜、下っ!?」

 

 シャンティの声に反応して身構えると、突然下から強い衝撃が体を襲ってきました。


「おおーっと。これはトラップによる電撃攻撃だーーーー! これ自体には大したダメージは無いけど、動きを拘束されるから追撃がくるぞーーーー!」


 ファイターの言った通り電撃自体にたいしたダメージはありませんが、どうやら電撃が収まるまでその場から動くのは無理そうです。

 私は電撃が収まるまでなんとか耐えようと思ったのですが、そう簡単にはいかないようで―――――。


「なんとここで、動けない桜ちゃんに向かって店長が突撃してきたぞーーー!」

「――――――くっ!?」


 店長さんは手に鞭を持っていて、中距離メインで戦うタイプみたいです。

 電撃トラップで相手を痺れさせてから、電撃の届かない距離から鞭で攻撃する感じでしょうか。


 …………って、呑気に観察してないで攻撃に備えないと!


 私は大剣を横に構えて盾代わりにして攻撃を防ぐ事にします。


「おおっと、桜ちゃん。ガードの姿勢を取って店長の攻撃を受け止めるきだーーーっ!?」

「真正面からの攻撃なんて――――」

「足元がお留守だよ!」


 突然足元に何かが巻きついたと思うと、私の体は逆さまになって宙に打ち上げられてしまいました。

 そして、店長さんもジャンプして空中で鞭による連続攻撃が始まります。


「こいつを喰らいな!」

「きゃうっ!?」

「おおっと、ここで店長の空中コンボ炸裂だああっ!? ラッシュ、ラッシュ、ラーッシュ! 体制を崩された桜ちゃん、まともに防御する事も出来ずライフがぐんぐん減っていくーーっ!?」

「こいつで、終わりさ!!」

 

 コンボの最後に強烈な一撃を受けた私は後ろに吹き飛ばされ、その衝撃で建物の1つが破壊されてしまいました。


「……かはッ」

「だ、大丈夫? 桜!?」


 ちょっと油断していまいましたが、まだここにいるって事は試合は終わって無いって事。

 全然逆転のチャンスは残ってますっ!!!!



「大丈夫ですシャンティ。それより残りのライフは?」

「――えっと。まだ余裕はあるけど、もう1回アレをくらったらやばいかも」

「つまりコンボをもう1度受けるのは危険だけど、単発なら数発は耐えられるって感じですか?」

「そだねー。けどあの攻撃は単発でも結構減るから、ガードより回避をメインにした方がいいかも」

「りょーかい、ですっ!!!!」


 とりあえず壊れた建物はバリケードには使えないので、ひとまずここから離れないと。


「どうやら吹き飛ばされた桜ちゃんは無事みたいだ。――――けど、そんな桜ちゃんに店長の追撃がせまるぞーーっ!?」

「桜、攻撃が来るよ!?」

「わかってますっ!」


 迫りくる店長さんの鞭を、私は二段ジャンプをしながらの後ろ宙返りでかわし、壊れてない建物の裏に緊急避難する事に成功しました。


「隠れても無駄よ! おとなしく出てきて、ついでに私のラーメンの味にもひれ伏しなさい!」

「さっきも言いましたが、私の家のラーメンの方が絶対に上なんです!」

「こっちは40年間継ぎ足した秘伝のタレを使っているの。40年分の歴史を味わって良くそんなデダラメが言えるわね!」


 …………40年?


 これですっ!?


 私は建物の上に飛び乗って店長さんを挑発する事にしました。

 

「くふふ。今40年と言いましたか?」

「そ、そうよ! だから――――」

「私の家の秘伝のタレは4000年前の物………つまり、店長さんのスープより100倍美味しいのです!!!!!!」

「な、なんですってえええっ!?」


 私は店長さんに指をさして宣伝すると、店長さんの顔に少しだけ動揺が見えました。


「…………ねえ、桜。タレの美味しさって古さで決まるの?」

「シャンティは黙っててください。それに100倍古いなら100倍の味が濃縮されてるに決まってます!!!!」

「そうなの?」

「むぅ。そんなに疑うなら1回食べてみますか?」

「…………いや、そもそもどうやってボクに食べさせるのさ?」

「だったら上からスープをかけます!」

「壊れちゃうよ!!!!」


 シャンティにスープの味を教える方法は後で考えるとして――――。

 店長さんへの精神攻撃に成功したので、今のうちに勝負を決めるっ!!


「おおーっと、桜ちゃん。建物からジャンプして店長の真上まで飛んでいったーーーっ!?」

「これで終わりっ!」


 しかし、店長さんは突然不敵な笑みを浮かべ。


「――――そうくると思ったよ!」

「おおーっと、店長バックステーーップ。そして、店長のいた場所には罠が設置されてるぞーーーっ!?」

「もう1回電撃を喰らいな!」

「私が同じ攻撃を2回も受けるとでも?」

「なんだって?!」


 普通ならあそこからジャンプしたら店長さんのいる場所までしかジャンプ出来ず、罠にひっかかってしまう。


 ――――けどっ!


「やあーーーーーーっ!」

 

 私は空を蹴って軌道を変え、店長さんへと猛スピードで突進していきます。



「なにぃっ!?」

「おっとここで桜ちゃんのスキル、フェアリーステップが炸裂ーーーーっ。空中で軌道を変えた事で床に着地してないからトラップが発動しないぞーーーっ!」


 ――――そう。

 私のスキルは空中でもう1回ジャンプして軌道を変える事が出来る。

 つまり、落下中に前方に向かってジャンプする事も可能なのですっ!!!!


「必殺、ウインド、ブリーズ、ブラストっ!!!!!」


 私の全力を込めた必殺の一撃が店長さんにクリーンヒットし、店長さんはフィールドの外にログアウトしていきました。


 そして、勝敗を決するジャッジ杉田さんの声がフィールドに響き渡ります。


「勝者、風宮 桜!!!!!」






 ――――次の日

 隣町に拳剣軒の2号店が誕生しました。

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