お店を守れ!! ラーメンバトル編 3
――――外に出た私達は、少し離れて対峙しています。
道行く人が何か始まりそうだと集まってきていてちょっぴり恥ずかしいですが、今はそんな事気にしている状況では無さそうです。
「それじゃあクラウンデュエルで勝負よ!」
「わかりました。では、クラウンデュエルで…………って、ええっ!?」
……………ク、クラウンデュエルって何でしたっけ?
確か週刊eスポーツで見たことがあったような……………。
そ、そうです。確か、私がよくやってるバトルロイヤルゲームの簡易版で、最近になって審判団が結成されたとかあったような…………。
「――――その勝負、私が引き受けよう!」
私が戸惑っていると、お店の上の方から男の人の声が聞こえて来ました。
見上げてみると、プロレスなどでよく見るレフリーの人が着ているレフリーウェアを身に着けた人が屋根の上で仁王立ちしています。
「高いとこから、こんにちわ! とうっ!!!!」
男の人は3階の屋根から勢いよくジャンプしました。
「ええっ!?」
そして、そのまま地面に何事もなくシュタッと10点満点の着地を決めると、キラリと白い歯を見せて親指を立てました。
どうやら無傷の様ですが、いったいどうなってるんでしょうか。
「私はeスポーツの審判を務めるジャッジ杉田。今から始まるeスポーツで不正が行われないよう私がジャッジする!!!!」
突然eスポーツの審判をやってくれる人が現れてしまいました。
――――それにしてもこの人、どこかで見たような気が。
そう、それもかなり最近…………。
「……………って、ああっ!? カレー屋のお兄さん!?」
「やあ、また会ったね」
なんと大変。
審判の人の正体は隣町に来た時にあったお兄さんだったのです。
「な、なんで審判なんてやってるんですか!?」
「実はこっちが本業でね。あっちは趣味みたいなもんさ。――――それで2人とも、私がジャッジする事に異議は無いかね?」
お兄さんがジャッジしてくれるなら大丈夫な気がします。
なぜなら、あんなに美味しいカレーを作れる人が間違った判定をするはずが無いのですから。
「はい。問題ありません」
「こっちは誰でもいいわよ」
「では、双方の合意が取れた所で―――――eスポーツフィールドオープン!!!!!」
お兄さんが上に掲げた指をパチンと鳴らすと、どこからかアナウンスが聞こえてきました。
「eスポーツが始まります。近隣の方は衝撃に備えてください」
直後、地面がゴゴゴと音を上げながら揺れ始めました。
「わわっ!?」
振動に耐えられなくなった私は何とか近くにある針葉樹につかまり倒れそうになる体を支えると、そのまま今いる場所が上空へとせり上がって行きました。
「桜、大丈夫!?」
「な、なんとか大丈夫です。――――それよりこれは、なんなんでしょう」
「確かeスポーツフィールドって言ってなかった?」
「eスポーツフィールド? これが!?」
私の知っているeスポーツフィールドはゲームセンターとかにあって、大きくてもUFOキャッチャー3個分くらいの大きさなのに、こんな街全体が変形していくタイプは始めて見ます。
「桜、あれ見てっ!?」
「えっ!? あれは…………モニター?」
地面の下から超巨大モニターが少しずつ出てきました。
ビルに備え付けてあるモニターもいつの間にか私の姿を映し出しているようです。
「きゃっ!?」
ある程度上昇してから急に私のいる場所がガコンと止まり、目の前には学校のプールくらいの大きさのフィールドが広がっていて、反対側には店長さんが陣取っていました。
そして、フィールドの丁度真ん中には審判である杉田さんの姿もあります。
「…………流石に間に合わなかったか」
杉田さんは何やらそわそわした感じで周りを気にしているようですが、何かあるのでしょうか?
「では、今から試合をはじめ―――――」
「ちょっと待ってくださいよぉう」
今まさに試合が始まろうとした瞬間、突然現れた誰かの「ちょっと待って」により開始が一時中断になりました。
「この試合、僕に実況を任せてもらおうか」
試合を中断した人物。
その人は胸にe-Sportsと書かれた緑色の派手な服を着ていて、肩には頑丈そうな肩パッドが付いていました。
口元にはテレビ実況でよく見るマイクを装着していて、そこから拡張された声が周辺に置かれたモニターから流れ出しています。
「…………やれやれ、やっと来たか」
「ふぅ。まだギリギリセーフって感じかな?」
その人は下にある円盤の様な物に乗ると円盤がゆっくりと浮かびあがり、私達のいるフィールドより少しだけ上の位置で止まりました。
――――ちょうどフィールド全体が見渡せる感じの位置でしょうか。
その人の顔を見てみると、雑誌でよく見た事がある人でした。
「――――あ、あなたは確か!?」
「なに? 僕の事知ってるの? そう、僕はeスポーツファイター。eスポーツが行われる時に現れて実況するだけの、ただのファイターさ!」
eスポーツファイター。
それは大きな大会などで、ゲームの実況をして場を盛り上げてくれる人です。
ゲームに関する知識量も凄くて、わかり辛い状況になったら解説もしてくれるスーパー実況ファイター。
それが皆の憧れであるeスポーツファイターなのです。
いつか大会で実況してもらうのが夢でしたが。
も、もしかしてこれから始まる対戦の実況をしてくれるのでしょうか!!!!
「それじゃあ。早速バトルを始めてくれないかい? 実況の準備はもう出来てるから!」
ファイターの準備も終わり、遂に対戦が始まろうとしています。
…………って、よく考えたら私はクラウンデュエルのルールとか全く知らないじゃないですかー。
「あの……ちょっといいですか?」
「ん? なんだい?」
「私はこれをやるのは初めてなので、出来ればルールを教えて欲しいのですが…………」
「しょうなのぉ? それじゃあ特別に僕が解説してあげよう」
おおっ!?
憧れのファイターに実況だけではなく解説までしてもらえるなんて、これは正座して聞かないといけません!!!!
私はぴょこんと正座をするとファイターがゲームの解説を始めてくれました。
「大人気対戦バトルロイヤルゲームのブレマジってやった事ある?」
「はい。大好きです!!」
「これはそのブレマジの対戦部分だけを切り取った対戦特化型ゲームなんだ。あっちは装備を集めながら戦うんだけど、こっちは始めから装備が集まってる。――――つまり、いきなり全力の戦いが始まるって訳さ」
なるほど。
あっちでは格上相手でも装備の差で勝ったり出来ますが、これは基本的に条件が同じになるって言う事ですね。
最初に選ぶ装備で相性が出るかもしれませんが、そこまで差は出ないと思います。
「まず最初は対戦相手と相談して使用するクラスのリミットを決めるんだ。けど、あんまり低いと地味だし、高すぎたらすぐに決着がついちゃうから3くらいが丁度いいかな」
確かにクラス1のスキルが使えない普通の剣士だと派手さは無いですし、最強クラスのレジェンドマジシャンだと魔法を1回撃っただけで勝負が決まるので、バランスを考えると2から5くらいが丁度いい感じでしょうか。
「次にライフ。これは相手に何回やられたら負けになるかを決めるんだ。チーム毎に設定出来て、最低が1で最大がミリオンだけどあんまり多く設定しすぎると、何時間も対戦する事になるから注意だ」
…………ミ、ミリオンって1万って事ですよね?
流石にそれは世界の命運を賭けた戦いでしか選ぶ気にはなれなそうです。
チーム毎に設定出来るって事は複数VS複数の対戦も出来るという事でしょうか。
「そして、最後にフィールドだ。途中で対戦中に使えるアイテムが出てきたりフィールド効果を受けるかどうかを決めるんだ」
超火力のハンマーや取ると無敵になったり巨大化したりメタル化するアイテムが出てくるって事ですね。
格上の人とやるときや皆でわいわい遊びたい時はアイテムがあった方がいいかもしれません。
フィールド効果も相手を上空に吹き飛ばす床に乗せてコンボに使ったり、触ると大ダメージを受けるトラップに吹き飛ばるなどありますが、私は何も無いシンプルなフィールドが好きです。
「それじゃあ説明も終わったし。ジャッジ、開始の合図よろしく!」
ファイターが杉田さんに話を振ると、杉田さんはすたすたと前に歩き――――。
「それでは2人ともスーツの着用をするように」
――――スーツの着用を促してきました。
「シャンティ、行きます!!!!」
「オッケー、桜!」
浮遊していたシャンティがパーツ毎に分離し、私の体に装着されていきます。
そして、最後にヘッドギアを装着してバイザーを出してから、決めポーズ!
「桜花爛漫(おうからんまん) 風宮 桜 参上ですっ!!!!」
こうして私の初デュエルが始まりました。
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