バトロワ編 その25
現実世界に戻った私はバイザーを解除すると、眼の前にパーカーさんとキャビンアテンダントさんが出迎えてくれました。
「――――あの。今はどうなってますか?」
「お客様、ありがとうございます。無事、ローラーの開閉口が開きました」
「――――そうでしたか」
「もう着陸直前で危険なのでこの部屋の座席で待機をお願いします」
よく見るとパーカーさんはすでに部屋の端っこになる椅子にシートベルトを付けて座っていたので、私もパーカーさんの横の席に座ってベルトを閉めました。
カチッとベルトの閉まる音を聞いた瞬間、ひと仕事終えたような充実感が私を包みこんでこのまま眠ってしまいそうになりましたが、その前にパーカーさんに一言お礼をいっておかないと。
「あの。最後はすみません――――」
「あの状況ではあれしか方法は無かったからな。それに私が同じ状況でも同じ事をしていたと思う」
「本当はもっと確実な方法があれば良かったのですが」
「それより何で最後に叫んだんだ? 何も言わずにあのまま後ろから撃っても良かっただろ?」
「その、なんとなく避けられてしまう気がしたので。それにフレンドリファイアはあまり良い行為とは言えませんから」
「あの時は前しか見てなかったから、後ろを気にかけてる余裕なんて無かったけどな」
「そうだったんですか? 序盤に私がミスショットしてしまったのを避けたのを見て後ろからの攻撃は当たらないと思ってました」
「…………お前、よく見てたんだな?」
「――――え?」
私が話を続けようとした所で突然ガコンと飛行機の揺れが激しくなりました。どうやら飛行機が着陸体制に入ったみたいです。
「――――お喋りはここまでにしておくか」
「そうですね」
疲れが限界にきてしまった私はちょっとだけ目を閉じると、ガタガタと揺れる飛行機がまるでゆりかごの様な心地よい物に感じてしまいそのまま眠りについてしまいました。
「――――様。――――お客様?」
「…………ふみゅ? ――――あれ?」
「お客様のおかげで飛行機は無事に着陸出来ました。後でお客様のご自宅に感謝の御礼をお送りしますね」
「――――えっと、ありがとうございます。ふぅ、どうやら無事に――――あれ?」
私は隣の椅子を見てみると、そこに座っていたはずの少女の姿はすでに消えてしまっていました。
「――――あの、ここに座ってた人は?」
「用事があると一足先に降りてしまわれました。――――その、起こそうと思ったのですが、眠られていたので無理に起こす必要は無いだろうとそのまま――――」
「……そうでしたか」
もうちょっと話そうと思ったのですが、用事があったのなら仕方ありませんね。
――――私はベルトを外して立ち上がろうとすると、キャビンアテンダントさんが何かを思い出したように懐から封筒を1枚取り出しました。
「そう言えばお手紙をお預かりしていました」
「手紙ですか?」
私は封筒を開けてみると、そこには1枚の手紙が入っていてボールペンで「対戦する事になっても手は抜くな」とだけ書いてありました。
「…………手を抜かなくても勝てる気はしないのですが」
私は手紙をカバンにしまうとキャビンアテンダントさんに、「手紙を預かってくれてありがとうございます」とお礼を言ってから部屋を出る事にしました。
「…………そう言えば、パーカーさんの名前を聞くのを忘れてました」
私は念の為、手紙をくるりと確認してみましたが、当然のように郵便物では無いので手紙のどこを見ても名前なんて書いてありませんでした。
――――まあ、同じゲームをやっているのならそのうちまた会う機会があるかもしれないので、その時に聞くことにしましょう。
一応、再開の約束? のような物はした訳ですし。
――――さっきまでの出来事を思い返しながら、私は忍さん達の待つ座席にゆっくりと戻って行きく事にしました。
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