第88話 悲恋の最終章㉕ 由紀子と暁子

 昭和55年12月22日・・・アルバイト先、ホテル東京・・・

 夕方、煉瓦亭で綴った走り書きのレポート用紙をホテル東京の封筒1枚

GETして、ついでにフロントに行き郵便切手を手配しました。

「なんだ!里中・・・お前が切手なんて初めてだな?明日、総務の木下さん

に投函頼むから、宛先書いたら持って来いよ!」

「中村さん・・・今夜、新丸子の駅まえから投函するから大丈夫です!」

 

 24日に着いてくれれば何らかのアクションがあるはず・・・そんな淡い

期待を寄せながら仕事に向かいます。今夜は三田工業、人事部の忘年会兼

クリスマスパーティーです。総勢25名前後なので、それほど忙しくありません。

山口課長は今日は私用で1日休みみたいです。レストランの統括は都倉係長でした。

 「里中・・・なんか元気ない?んじゃない?・・・そうですか?そう見ますか?

上手く隠そうとしてるのですが、やはり駄目ですね。都倉さん・・・」

「そうだな・・・俺の里中評はいつも元気にお客さんを楽しませることが

できるレストランのエースだったから・・・なんかすぐ解るんだ!なんか

あったのか?・・・」

「はい・・・岩手の彼女と小さなケンカになりまして・・・それ以上は

勘弁してください。」

「そうか・・・あの彼女ね・・・ふーん あんまり女の子を泣かすなよ!」


 つい小さなケンカなんて言いましたが、大きな事件でした。

今夜はどうしても笑顔が出せない気分です。さっきも三田工業の大下部長から

「里中君・・・なんか元気ないじゃん・・・いつもの調子で頼むよ!」

そんな指摘を受けたばかりです。たかがアルバイトでも4年もこの仕事をして

いてネームプレートもつけているので、自然と名前で呼ばれてしまいます。

声をかけていただけるのが嬉しくて、つい先回りして色々とお世話するタイプ

なので、お客さんからのウケは抜群に良かったです。それが取り柄でもあり

やりがいもある仕事でした。


 まあ・・・気分を変えて仕事しなければ・・・こんな事で迷惑なんか

かけられない・・・俺らしく仕事しよう・・・そうしよう・・・

 パーティーは9時半のお開きなりました。帰りがけに大下部長から

「里中君・・・今夜もありがとうな・・・やっぱり君は気が利くから女子社員

からも感じが良いってさ・・・」


 嬉しいお褒めの言葉でした。落ち込む自分を何とか制御して仕事ができて

今夜は満足です。よーし・・・風呂に入ってさっぱり気分転換・・・

予定どうり新丸子から郵送しよう・・・


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