第82話 悲恋の最終章⑲隠された真実!

  昭和55年秋、山梨の両親が岩手に謝罪にゆくの

ですが・・・「子供を生めない身体にして

しまった事は、就職問題でもめていた最後の時期に

親父とぶつかり、悩んだ末、母親に暴露しています。

 岩手のお母さんからは、子宮摘出の件は誰にも話さないで

と約束をしていましたので、我慢してました。最後の切り札・・・

 俺のせいで、由紀子が子宮を失うことになったと伝えました。

涙を流すお袋の姿が切なくて・・・切なくて・・・たぶん

これで岩手行きの件は理解してもらえると信じていました。

その話を告げてからわずか3日後には何ら連絡

もなく両親が岩手に向かいました。

 お宅の大事な娘さんにうちの息子が取り返しの付かない

病気を背負あわせ、なおかつ、子宮まで失うという

不手際を親父が謝罪したようですが・・・岩手の親父

さんからは子宮摘出の事実はない・・・ここで大きく

紛糾したようです。息子をなぜ騙した・・・いいえそんな

話はしていない・・・かなりエキサイトした場面もあったようです。

そこで、岩手のお母さん登場・・・3度目に見舞いに来たときに

思わず、子宮摘出したと・・・偽りの話を息子さんにしました。

まあ・・・確かに子宮を失う危機もあり医師からその覚悟も

しておく・・・解ります。仕方ない暴走だと思います。

 岩手のお母さんにすれば、病気を背負わす張本人、責任問題

子宮摘出を捏造しても俺に岩手にきて欲しいと考えていたのです。

母親同士、たくさんの涙を流したとお袋から聞きました。

ただ、この事件でうちの親父が激怒したのは事実でした。

卑怯だと・・・まあ・・・子宮云々は別にしても由紀子にも

岩手の家族全員に簡単に言葉にできない苦悩を与えた

のは俺です。「男としてのケジメ・・・」 岩手に行く覚悟はありました。

でもこの事件がきっかけになり破談になったのも事実でした。

まあ・・・仕方がありません。

仕方ないなんて言葉であきらめられる訳ないのですが、まだ、人生経験

もなく・・・アマちゃんな若造です。

 母親から岩手の顛末を電話で聞き、少なからずショックでした。

ただ、俺の無責任な行動であれだけの病気を背負あわせたのは

紛れのない事実です。花巻の旧家で婿取りの女系家族のお母さんです。

 仕方のない暴走だと思い、別れるまで子宮事件の事は俺からは

口にしませんでした。彼女からも岩手事件の事はなかったです。

 たぶん由紀子は子宮の件は伏せられているのだと思います。

母親からは「お父さん・・・相当、頭に来てる!息子を騙した

家に婿になんかやれるか?ここのところ何かひどく考え込む事が

多く、機嫌が悪い・・・・・」俺も親父の思いと立場を考えれば

同じ意見になるだろう・・・駄目だ!・・・勘当!・・・

 これが最後の結末への導火線になりました。

  これ以上でもこれ以下でもありません。

 それにしても親父は凄いと思いました。

東北新幹線がない時代です。上野から花巻まで「特急やまびこ」で5、5時間

夜行寝台であれば行きは塩山から16時間はかかります。

親の決断・・・息子への思い・・・そして相手への謝罪・・・今も忘れません。

 昭和2年生まれ・・・非常に頑固で面倒くさい親父でしたが、

竹をふたつ割ったようなまっすぐな性格でした。ただ、俺自身

今も曲がってるのは親父の遺伝子が少なく、母親の遺伝子が多いと

勝手に解釈してます。

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