第77話 悲恋の最終章⑭由紀子の思い

 新丸子のアパートに帰宅したのが6時半過ぎ・・・


 それにしてもあの暁子さんの潔い行動に驚いていました。

自分の言いたいことだけ言って、立場が不利なるのを感じると

さらりと「私、帰ります。」やっぱり社会人なんだ!ノーテンキな

学生とは違う・・・あれが大人の振舞いなのか?でも違うと思う!


  由紀子は果たしてくるのだろうか?


一抹の不安はあります。あれだけの騒動になって


ゼミの飲み会・・・1時間だけで切り上げられる?


俺だったら飲んでしまいます。あれこれ考えながら


部屋の片づけしたりして時間を潰します。


7時半・・・ドアーを2回叩く音・・・由紀子でした。


「ね・・・貴方・・・早いでしょ・・・凄いでしょ・・・」


「うーん・・・飲み会大丈夫だったんだね」

「そーよ・・・公園通りで一緒にいた先輩二人に少し話をしたの・・・そしたら

ここはいいから早く彼氏のところにだって・・・・」


どこまで話をしたか言及はしません。そんな立場にはない・・・


「ね・・・貴方・・・それで、病気はどうなの?」


「うーん・・・今日2度目の検査だったんだ・・自然気胸という診断

で肺に穴が開く病気・・・最悪は入院、開胸手術・・・でもそこまで

じゃなくて自然治癒が可能・・・・原因は疲れと過度のストレス・・・

とにかく身体を休めて回復させることが一番みたい・・・ホテルのバイトも

煉瓦亭も休ませてもらってるんだ・・・でも来週からはホテルにはゆくつもり・・・

さっき、山口課長に電話したんだ・・・婚礼シーズンでかなりやばそう・・・

1日も早く復帰をお願いされたんだ・・・武蔵野配膳にヘルプ頼んでいるよう

だけど、どこもシーズン真っ盛りで人の手配で苦労してるみたい・・・」


「そうなの・・・ちゃんと自分の身体と向き合ってね・・・貴方の身体の

状態まで私には解らないもの・・・それに具合が悪くても連絡も寄越さない

・・・それって・・・それって・・・私にはもうそんな権利もない存在

になってしまったの・・・なんで?・・・私のどこが気に要らないの?

はっきり言って・・・加藤さんのほうが、綺麗だし・・・気が利くから?

でも・・・貴方にはあの人は似あわない・・・同性から見て、私は

あの人好きになれない・・・それで・・・どこまで・・最後まで

いっちゃたの?」

やはり聞いてきました。たぶん追求されることは予想してました。


「うーん・・・ここのところよく煉瓦亭に来てくれるんだ・・・


その流れで代々木公園に遊びにゆき・・・かとりや・・・そして煉瓦亭で具合が


悪くなり病院へ・・・入れ替わりで暁子さんが煉瓦亭で様子を聞いて、1回目の


病院に付き添い・・・そして今日が2回目の付き添い・・・」


「へ・・・そんな事になってるんだ・・・私はほんと蚊帳の外なのね・・・


それで、この部屋にも来てるわね・・・調味料の配置が違うし、そんなの


見ればすぐわかるのよ・・・それでここで何したの?」かわせない・・・


逃げれない・・・正直に話をしよう・・・「1度目の受診のあと、肺に穴・・・


頭が混乱して・・・でも暁子さんが居てくれたから、何とか・・・夕飯を


作りに来てくれたんだ・・・すき焼きごちそうになったんだ・・・結構・・


料理美味いんだ・・」「ねーーー貴方・・・料理の話なんか聞いてない・・・


それじゃ・・・この部屋では何もしてないのね・・・」駄目だあ・・・追及


がかわせない・・・「うーん・・・代々木公園の帰りにかとりやで飲んで


盛り上がり・・・帰りに突然抱きつかれてキス・・・」


由紀子の目に涙が・・・


浮気は嫌!・・・それが彼女の口癖・・・あーーあ ため息ばかりです。


「ほんと・・・それだけ・・・なの?・・・キスだけなの・・・嘘は嫌よ!・・・」


静かな口調でした。冷徹なまでに研ぎ澄まされています。


「うーん・・・ごめん・・・キスだけ・・・でも俺からモーションだしてない・・・」


泣きながら彼女が抱き着いてきました。涙があふれています。


・・・「ねーー貴方・・・信じていいのね・・・ほんとにキスだけ・・・

でも・・・嫌なの・・・私・・・どれだけ一緒にいたのよ・・・

よそ見しないで・・・私だけを見ていて・・・それが、毎日の約束だったのよ・・・

忘れてないでしょ・・・だからお願い・・・私だけを見ていて・・・」


嗚咽を交えながら泣く彼女の肩を抱いています。すれ違い・・・そして埋める事が

できない事情・・・運命をのろいます・・・なんで・・・こんなに惹かれあっても

ても1番好きな人とは一緒になれない宿命を感じていました。

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