第71話 悲恋の最終章⑧暁子との出会い
北海のある道玄坂・・・途中・・・近道のショートカットを選択
でもこの道は数件のラブホテル・・・当時の思い出はからすれば
連れ込み宿の風情・・・わざとこの道を選択しました。すると
暁子さんが「ねーーーー里中君1・・なんか意味深な怪しい感じ・・・
」「うーん・・・この道、近道なんだ・・・人込みもなく・・・別に
心配しないで・・・俺・・・暁子さんをラブホに連れ込む度胸も勇気
もないから・・・」「そうなの・・・私は少し期待していたのに?・・・」
心に残る言葉でした。少し刺激を加えてしまったかな・・・暁子さんの
右腕が左腕にがっちり絡んでいます。暁子さんが「ほらほら・・・あのカップル、嫌がる女性を無理やり手を引いて玄関口に消えてゆく・・・まるで・・・不倫
ドラマじゃない・・・」まずい雰囲気があります。
この道を早くとうり過ぎなければと歩くペースを上げます。5分ほどでセンター街の中心に出ました。路地の先にのかとりやの赤い提灯が確認できました。
「さあ・・・着いたよ・・・リクエストのかとりや!」
暖簾をくぐるとテーブル席は満席・・・カウンターの中央が3席空いてます。
まずい・・・副店長の酒井さんと視線が合いました。「いらっしゃい・・・さとやん・・・俺の前が空いてるよ・・・」手招きしてます。
まずいなあ・・・また・・・酒井さんの前・・・この間も美由紀さんと来たばかり・・・たぶん・・・余計な事言われるよね・・・少しの間があり・・・暁子さんが「私・・・端っこが好き!」
酒井さんの前に座りました。仕方ありません・・・なるようにしかならない・・・自然体で・・・
「さとやん・・・何飲む?」と酒井さん・・・北海で飲んだ清酒のせいで、喉の渇きがあります。
「ね・・・暁子さん・・・口直しで最初はビールでいい?」「うん・・・私も喉
渇いたの・・・だってあの怪しいホテル街だもん・・・なんかドキドキしちゃたわ!・・・」
運ばれたアサヒビールで再度の乾杯です。お腹は満たされているので、煮込みと枝豆・・・
それと厚揚げ焼きを頼みました。「このお店が由紀子さんとの思い出の場所なんだ・・・そして・・・
この席が指定席でしょ・・・里中君・・・前にいるお店の方と、とても親しい関係なのが説明を受けなくてもわかるわ・・。ここなんだ・・・そうなんだ・・・そしてO由紀子さんの好きな席に私が今夜座ってる・・・なんか記念日みたいな感じがしてるの?」
酒井さんに聞こえるような声で話をしてます。でも今夜の酒井さんは無反応で俺たちの会話をまるで無視するかのように黙々と仕事しています。酒井さんなりに温かい配慮が嬉しいのです。
1本のビールがあっという間に空にになりました。「ねーーー暁子さん・・・次は?・・・」
「私はお酒・・・いいでしょ・・・今夜は付き合ってくるわよね・・・」お銚子が2本、ぐい吞みが2ケ運ばれてお酒タイムです。お酒のペースが上がり、彼女はご機嫌でおしゃべりを続けています。
渡辺淳一の世界やマイケルジャクソンが好きみたいです。そして料理と部屋の模様替えが趣味・・・
隠れていた暁子さんの生きざまが少しづつ見えてきました。両親はともに会社勤め・・・高校3年の
妹が1人・・・そんな家族構成です。すると暁子さんが「私ばっかり話してる・・・今夜は里中君の話を聞きたくてここに来たのに・・・ね・・・由紀子さんとはその後?・・・」
来ました!・・・来ました!・・・鋭角的な質問でした!・・・でも予期していた展開なので詰まる事もなく・・・流暢・・・そしてさりげなく・・・間合いを考えながら・・・
「うーん・・・今月から煉瓦亭のバイトを始めてたのが原因で一挙に崩壊寸前なんだ・・・彼女とは・・・
3週間,顔もみてないし・・・声も聞いてない・・・あま・・・ほんと瀬戸際なんだ・・・会えなくなる時間が増えれば増えるほど・・・愛しいと思うのが今までだったけど・・・なんか・・・時間の流れに・・・そのまま流されてる感じなんだ・・・俺はバイトに追いまくられてるから、気がまぎれる・・・
・・・でも・・・
彼女は大学との往復だけ・・・土日はずっと新丸子で週末婚みたいだったから・・・ありあまる時間の中で色々と考えているはずなんだ・・・その意思表示が新丸子には行かない・・・それが彼女の答えなんじゃないのかな?」
少しの沈黙があります。「ふーん・・・そうなんだ!・・・里中君の話に
嘘はないと思う・・・あなたは正直にまじめに答えてる・・・その真面目な部分に共感できちゃうのよね・・・
だから・・・私の思いがあなたに傾いてしまう・・・朝晩の通勤時間・・・自宅に帰ってから・・・
オフコースの曲を流しながら思いに耽るのがここのところの定番になったしまったの・・・まさしく
里中 熱病に侵されてるの?・・・昼間の代々木公園はチューリップの「虹とスニーカーの頃」・・・今夜は・・・
オフコースの「時に愛は・・・」 なるほど・・・同時代を生きているから、チューリップもオフコースも大好きです。代々木公園とかとりや風景を自分の好きな曲で置き換えています。
左目にかかる髪の毛をかき上げるその仕草・・・・そしてふーっと遠い目をする右目の動き・・・
学生には感じられない大人の女性の雰囲気です。多分意識した仕草じゃないんだ・・・彼女の感性がいい感じに伝わります。あっという間に・・・4本のお銚子が空になりました。
時計の針も11時半になろうとしています。もうそろそろお開きにしなければ・・・
すると暁子さんが「ね・・・里中君!・・・・私・・・かなり飲んじゃった!・・・女の酔っぱらいなんか嫌いでしょ・・・トイレに行ってから先に出て待ってるから・・・あと・・・会計お願いね!・・・
「うーん いいよ!・・・あとは任せて・・・」彼女がトイレに消えて、酒井さんに会計をお願いしました。
「さとやん・・・¥3,500・・・でも・・・先週は地味な田舎の女・・・今日の彼女は洗練されているいい女!・・・おまえはとっかえひっかえよくやるよ!まあ・・・あんまり深みはまるなよ!・・・
俺は・・・さとやんに一番合ってる本命は由紀子さん・・・そして前回連れてきた職場の女の子・・・あれが対抗馬・・・そして今夜の女の子は穴馬・・・なあ・・・さとやん・・・遊ぶのは自由意志、自己責任・・・ただ、自分の気まぐれで女を泣かすのはやめとけ!・・・」鋭いコメントでした。この道20年の酒場のエリート
色々な人生、恋模様をまじかに見ています。誰にでも優しくしちゃう性格を見抜かれています。含蓄のある言葉でした。
「酒井さん・・・また・・・来ます!」と告げて表に出ました。
あれ?・・・いない・・・どうしたのかな?先に帰ったかな・・・でもそんな事する人じゃない・・・
路地を抜けて道元坂に出てみました。すると緑の電話ボックスに彼女を発見・・・・ボックスの前で煙草をタイム・・・「里中君・・・・ごめん・・・ごめん・・・田舎の母に電話する約束を忘れてたの?・・・
だから・・・今・・・電話してたの・・・そしたら・・・暁子ずいぶんご機嫌ね・・・そしてお酒飲んでるでしょ・・・
最後には彼とのデートでしょ!・・・まったく・・・親は鋭いわよね・・・」
日曜日の渋谷は引けが早いです。駅に向かう道も混雑もありません。すると彼女が立ち止まりいきなり・・・
「ね・・・里中君!・・・キスして・・・いいでしょ・・・そして抱き着いてきました。目を閉じて顔が近づいてきます。」なにこの展開・・・一瞬の行動でしたが、木陰に移動・・・静かに唇を・・・
さわやかなミントの香り・・・そして舌を絡めてきました。公衆の面前・・・いくら人の行き交いが少ないとは言え・・・ほんと・・・びっくりする出来事でした。拒否できればできたんだ!・・・でも拒めば彼女が傷つく・・・また、俺、一流の優しさが邪魔していました。いきなりキス・・・こんな事があるんだ・・・
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