第58話 苦悩の病院通い part5

 頭の中を胞状奇胎、絨毛ガン、抗がん剤、入退院、再発


この言葉が激しく行ったり、来たり、全身の力が抜けてまさに、


放心状態です。中学2年の時、体育の授業で50メートル走の


タイム計測、小さい頃から運動が好きでした。通信簿は体育と図工は


小学6年間ずっと五段階評価の「5」でした。「ずっと里中なら、


軽く6,3秒」そんな評価にやる気満々、丁度夏休み前の


7月中旬、梅雨明けで暑い日でした。全力で走り抜け、見事


に記録達成でしたが、急な貧血症状です。上半身の血流が


悪くなり顔は真っ青、起き上がることもできない始末です。


 吐き気はないものの、顔が寒くて仕方ない・・・当時、


好きだった女子が一生懸命付添、お世話してくれました。


 あの時とおんなじ症状です。血の気がうせ、顔が寒い


のです。軽い眩暈もあります。激しいストレスを受けて


身体が悲鳴をあげている感じでした。仕方なく、商店街


の「ほか弁」横のベンチに座り込みました。するとレジ対応


していた30代の叔母さんに声をかけられました。


「お客さん、大丈夫ですか?顔が真っ青ですよ・・・


手鏡と冷たいおしぼりを持ってきました。まだ、学生さんでしょ・・・


大丈夫なの・・・良くなるまで、ここで休みなさいよ・・・」


手鏡を覗き込むとまさに、真っ青です。ゼミのコンパで先輩に


無理やり飲まされて、意識不明になる前の顔です。


 やばいなあ・・・こんなになっちゃうものなの・・・・


体力、運動神経には自信があったのに・・・このていたらく・・・・


「ねー貴方・・・何やってのよ・・・・私のほうが貴方より数倍


大変なのに・・・・」そんな由紀子の声が聞こえます。


時間して20分位、ベンチで休んでいました。お店の時計を確認


すると1時半をすぎています。時間を忘れて、医学書に没頭


専門用語があるから、必死でした。さあー病院に戻らなければ


「総合病院に友達が入院していて、お見舞いに来ました。症状が


あまり芳しくないので、そこの本屋さんで医学書を読んで


あれこれ調べていたら、急に具合がわるくなったのです。心配して


頂きありがとうございます。次はお弁当買いにきます。」


「そうなの・・・貴方、東工大の学生さんでしょ・・・」


「いいえ・・・そんな優秀な大学じゃないです。今日はありがとう


ございました。」手鏡とおしぼりを返却しました。


 そうか大井町線の沿線、大岡山の駅前、東工大・・・そうか


東工大・・・・あこがれはあったけど、文科系だから縁なし


重い足取りで病院に戻りました。

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