第52話 岩手の両親への告白part2 揺れる心
彼女の頑強な思いをさえぎる勇気もないと思うのです。何とか上手く切り抜けたいというのが偽らざる本音でもあります。
3月、オークラのカメリアで彼女の親父さんと会い、「学生の本分である勉学」をお願いされたにも関わらず、大事な娘さんを予測もできない大きな病気に追い込んでしまいました。お互いというより、自分の責任感のなさに怒りを
覚えた神様に鉄槌を落とされた感じです。言い訳など通用することなどありえない深刻な状況です。
「ふざけるなこの野郎!」「1発2発殴られても仕方のない事態、俺が親父さんの立場であれば「殺してやりたい!」と思われても何ら不思議ではありません。
でも何とか切り抜けられる方法があれば、正直嬉しいのです。揺れる心・・・
この場に来て、まだ、逃げ道を探している自分の心に「卑怯者で尚且つ、臆病・・・最低な男」まさに自己嫌悪の極地です。
「ねー貴方・・・いったい何を考えているの・・・そうやって黙っていても何の解決にならないじゃない・・・いいの貴方は絶対に口を開いては駄目なの・・・私の問題だから貴方は中立でいてほしいの・・・親子だから何とかなるよ・・・貴方が
出れば必ず破局になると断言しておくわね・・・別れを選択できる勇気があれば電話してもいいよ・・・貴方には私を捨てる!離れる、そんな事、絶対できっこない・・・去年の5月からもう1年よ・・・どれだけ同じ時間を過ごして来たと思ってるの・・・私はそんなうっすぺら女じゃないわよ・・・貴方のそばで、貴方のために、この1年間、真剣に思いを重ねて来たの、今回は確かに深刻な問題を抱えてしまったけれど、交通事故だと思えば乗り越えることができるじゃない・・・
私は自分の病気と真剣に向き合い、必ず、よくなって見せる・・・ねー貴方・・・お願い・・・わかって頂戴!」
いやーなんとも、いつもの由紀子のペースに完全に引き込まれてしまいました。確かに俺から岩手に電話をすれば間違いなく破局なると思います。どんなに物分りの良い親だって、この事態であれば他の選択肢はないはずです。
「別離、破局」これしかないと思うのです。時計の針は4時半を指していました。長い時の流れでした。
「ねー由紀子・・・わかったよ・・・俺・・・俺・・・俺は由紀子の判断に任せるよ・・・それと、こんな時にだけど・・・
今夜はGW明けの初日、バイト休む事できない・・・シフトに穴を開けることできない・・・だから・・・」
「ねー貴方・・・そんな事わかってる・・・私よりバイトのほうが大切なんでしょ・・・ははーん・・・やっぱり困った顔してるのね・・・すぐ顔にでるから見やすい・・・いいよバイトに行って!・・・山口課長さんに怒られるもんね
・・・いいのよ!バイトはがんばってください。入院費用を貴方に稼いでもらわないと私も困る・・・月5万の仕送りで入院費用なんて賄えないもの・・・必ず、返すから今回は応援してね・・・」
「ねーー由紀子、お金の工面は俺が何とかするから、心配しないで・・1年バイトしてたくさんではないけれど、応分の蓄えもあるから、10万くらい
だったらいつでも何とかなる・・・」
「ふーん・・・そうなんだ・・そんなにお金あったの?・・・バイト代で何とか
なるからって去年の暮れに山梨のお母さんに話して、送金止めさせたって言ってたから、貧乏だと思っていたのよ?・・・」
「・・・だったら今回は甘えるからね・・・いいわね!・・・」
「うん!大丈夫だよ・・・何とかなる、ほんとに・・・
お金のことは心配無用です。・・・そんじゃーバイトに行くから・・・面会時間は午後八時までだから・・・明日の朝、また九時に来るね・・・それと下神明のアパートじゃなくて、新丸子の自分のアパートに今夜から帰るね!・・・OO子がいないのに出入りするのはまずいじゃん・・・大家さんに声かけらても面倒だし」
「そーね・・・そーよ 下神明は止めといたほうがいいと思うわ!・・・貴方のいうとうり・・・大家さん面倒くさいから・・・じゃー明日、九時に待っています。行ってらっしゃい・・・ねー貴方!」
5月の風が気持ちよいです。下神明から泉岳寺まで40分 遅刻はなさそうだ。
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