第20話 調子こいてゲロンパチ、part1

 自由が丘駅前の東急プラザ横の公衆電話BOXに

彼女の姿があります。


岩手の実家に電話をかけにいってから・・・既に15分・・・

長距離電話なのにやけに長いのです。たった15分ですが、

待つのがしんどい状況でした。


 まだ、終わらない・・・時折、彼女がこちらを見ます。

ビール1、5本、ホッピー5杯はやはり飲みすぎでした。

飲みすぎで、「やばい」感じがします。

 急に顔からさっーと血が引いてくるような感覚を覚えました。

しばらくすると立つのもしんどい状況なので、電話BOXに近ずき、

改札口を指差して、股間に手を当てて、トイレの合図を送ります。

由紀子が左手でOKのサインをしたので、改札を抜けて、駅のトイレに

駆け込みました。洋式のトイレに両手をついたとたん激しい嘔吐でした。


 「ゲロンパチ」なのです。連続で3回吐きました・・・どうしたのかな?

何で・・・そんな思いもあるのですが、ホッピー・・・最後の1杯が余分でした。

4杯目で止めとけばよかった・・・すべてあとの祭りです。身体から力が抜け

て言い知れぬ脱力感でした。洗面台に立ち鏡に映るその顔を見て・・・

びっくりです・・・「真っ青」でした。口をゆすいで、顔を洗いトイレを出ると

彼女が心配そうに立っていました。「ねー貴方・・・大丈夫・・・顔が青い・・」「うーん、OO子を待ってるうちに、急に具合が悪くなっちゃって・・

少し吐いたから直ぐ良くなるよ・・」すると彼女が腰に腕を回して、ホーム

のベンチまで誘導します。「さあ・・・そのダウンベストを脱がなきゃだめ・・・」

と言いながら、ボタンを外します。コットンの上着のボタンも外して、身体を楽にしてくれました。ここで少し休んでからと思う間もなく、こみ上げる

気持の悪さに我慢できずトイレに走ります。さっき口をゆすいだ時に

飲んだ水しかでませんが・・・寄せては返す波のように吐き気がします。

あまりの具合の悪さに膝が折れ、便器をだっこする形で時間が過ぎて

いました。どのくらい時間がたったのでしょうか・・・

遠くで、「里中君・・大丈夫・・・」という声がします。

 由紀子がトイレの外で騒いでいます。

仕方なく、トイレの外へ・・「ねー貴方・・・ほんとに大丈夫・・・トイレに

入ってから10分も出てこないんだもん・・・私、心配で・・・心配で・・・

トイレの外で貴方の名前を呼んでも出てこなかったら、駅員さんを

呼びにいかなきゃと思っていたのよ・・・」

「ごめん・・・悪酔いしたみたい!かとりやでOO子に悪酔いしたら介抱なんか勘弁してくれなんて言っていた張本人がこの始末だもん・・・・」

「いいのよ・・そんな事は・・・ねー貴方・・電車で帰れる?・・・

駅前からタクシーに乗って帰る?」

「悪酔いでタクシー・・・学生の分際でもったいない・・・大丈夫・・・もう

落ち着いたから・・」


 由紀子が俺の左腕をつかんで抱えるように、東横線

のホームに続く階段を1歩、1歩確認するように登って行きます。

「もう少しだから・・・頑張って・・・」丁度、日比谷線からの日吉行きがホームに到着しました。「さあ・・・貴方乗るわよ・・・・・」


 日曜日のPM11;00過ぎの電車でも満員に近い状態でした。ドアー付近の3角地帯にスペースを見つけて彼女が俺の身体を支えるようにしています。窓に映る姿

をボンヤリ見つめながら、電車の中で具合が悪くなったらどうしよう?

そんな事を考えているうちに、下宿のある新丸子駅に到着しました。

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