第19話 自由が丘 焼き鳥屋の風景
自由が丘の焼き鳥屋「かとりや」でお気に入りの煮込み、そして
思い思いの焼き鳥をつまみにビールで盛り上がります。
彼女はビールをグラスに2杯飲んだところで、ホッピーに変更
飲むほどに陽気で笑いが絶えない楽しい酒宴になります。
彼女は・・・ねー貴方といいながら、お店の女の子にもらったメモ用紙
に下神明のアパートの間取りを描いて、「ここに冷蔵庫、ここに
TV・・・ここにはキャビネット・・・ここは整理ダンス・・」そんな感じで
間取りの配置を楽しそうに描いています。運命的な出逢いから、9ヶ月
この4月からは「同棲」なんてことが目の前に迫っています。
恋愛・・・好きだと思う相手がいるから、恋愛が成立します。
相手に尽くす喜びは、相手に尽くされる喜びといつも背中合わせです。
でも由紀子と俺は、同じ性格じゃないし、考え方も、もちろん違います。
同じ考えの時には、気持を合わせて進めばいいし・・・違うときは、お互い
に良く話しをして、歩み寄って、自分達の形を作るしかないのです。
時には、ケンカもあるし、衝突もあると思います。ケンカが転じて、別離
なんていうことも、十分考えられます。やっぱり「なるように・・・なりますように」しかないんだ・・・あれこれ、考えるの止めよう・・・
「ねー貴方・・・なんか浮かない感じだけど・・・どうしたの?楽しくないの?」
彼女は敏感なのです。「うーん・・・ちょっと考え事していたから・・・」「なんか・・・ボンヤリしているから楽しくないのかな?と思うの・・・さあ・・・ドンドン飲んで、食べて!私の奢りだから・・・遠慮しないで・・・」
だいぶ長い時間を共に過ごしてきたから、俺の雰囲気で心の中を透視されてしまいます。勘が強く、先回りが得意な由紀子です。よーし飲むか・・・
「店長・・・僕にもホッピー下さい」
「はいよ・・・カウンター1番さんホッピー新規で1丁・・・」すると、合いの手でホールの女の子が元気な声で復唱します。店に活気があり、もっと
飲まなきゃという感じに誘われてしまいます。彼女は2杯目のホッピー
が終わりそうです。
「由紀子・・・そんなに飛ばして飲んで、大丈夫?俺、明日もAM11;00からバイトだから悪酔いの介抱だけは、勘弁してよ・・・」
「ねー貴方・・・何よその言い方!・・・いい加減にしてよ・・・いつ貴方に悪酔いの介抱させたのよ・・・介抱してもらったのは、風邪でダウンした1回だけよ!」
このやりとりを焼き鳥を焼きながら聞いていた店長が仲裁にはいります。「2人とも仲が良すぎて、小さなケンカになるんだよ・・・彼女も里中君に突っかからないで、お互い仲良く、楽しく飲んで・・・それより焼き鳥の追加はどう?」
店長の絶妙な仲裁が2人の空気を和やかにしてくれます。「ねー
貴方・・・ねぎ間とカシラ食べようよ・・・」「店長・・・ねぎ間とカシラ、それに
お新香もね、あと追加でホッピーもね」
すると店長がそうこなくっちゃ・・・
「カウウター1番さん 追加でホッピー1丁、お新香1丁」1杯目の
ホッピーが身体に回り、気持いい、ほろ酔い加減です。
「店長・・・私もホッピーお代わりね・・・」
こんな調子であっという間に、時間が過ぎて行きます。
腕時計の針がPM10;00過ぎを指しています。
「ねー貴方・・・私、ホッピー4杯も飲んじゃった・・・こんなに飲んでも
全然、平気なの・・・もしかしたら、私、酒豪かも知れない・・・」
そうは言ってもかなり酔っています。「俺もさ・・・ホッピー5杯だよ・・・ビール
を1本以上飲んでるから、俺のほうが凄い・・・」
訳の解らない話しになっています。「由紀子・・・今夜岩手に電話するって言ってたじゃん・・・もうPM10;00を過ぎたから・・・」
「そうそう・・忘れてた・・早く電話しなきゃ・・」
「店長・・・すみません・・・おあいそー」
「はいよ・・・カウウター1番さんお帰り・・・里中君、いつも贔屓にして
くれてありがとう・・・」
「いいえ・・・こちらこそ・・・ご馳走様でした」と2人で
挨拶して店をあとにしました。
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