143話【初陣1】
◇
時刻は
【聖騎士】五名、聖王国騎士が
その中で、一番後方にいるのがエミリアだ。
エミリアを
他の【聖騎士】四名は最前線に
第一部隊であるヘイズの
第五部隊のエミリアの
「……そろそろだな。来るぞぉ!
ヘイズの大きな声に応え、戦闘の始まりを告げる音が高らかと、国境の空に
◇
まだ日は高く、
「……」
緊張感を
右に左にと
その
「……」
戦力差は
まず、
【リフベイン聖王国】の装備は
それに比べて、【ルウタール王国】の兵士たちの装備は、
武器ですら木槍や石斧と、
「
ぼそりと
「そうでしょう。あれで何度も進攻してくるんですから、兵士たちもかわいそうですよ……」
エミリアの護衛騎士の一人が、やる気も無さそうに言う。
こちらは緊張しっぱなしだと言うのに、いい気なものだと感じたが、何も言わないでおいた。
そんなエミリアの内心に気付く訳もなく、騎士はペラペラと。
「あの国では、
「……」
「正直、戦い
騎士の一言一言に、エミリアは
エミリアは別に、強敵と戦いたいわけではない。
この騎士の言葉は、何一つエミリアには
「これなら、野盗や
「――少し
振り向かないまま、エミリアは
年下とは言えこっちは上司だ。そのくらいの権利を主張したっていいだろう。
しかし背後にいる騎士は、「さーせん」と悪びれないどころか、エミリアに聞こえるように舌打ちをして一歩後退した。
「……」
(居るんだ。
まるで戦いを
大勢いる騎士の中の、たった一人の考えだと言うのは分かる。
それでも、自分まで同じ考えだと思われるのは嫌だった。
「……集中……集中……!」
戦いは続いている。
今は
「……!」
(ノエル
ノエルディアはその兵士を見ていなかった。
他の兵に気を取られているのか、その様子を敵兵士も気付き、
すると、ノエルディアはそのタイミングで。
「……エミリアっ!一人行ったわよっ!!」
と、さも気付いていたかのように
ノエルディアも他の
エミリアに――
エミリアは、前に出ようとする護衛の騎士たちを制す。
他の騎士もあの騎士も、それに素直に
こちらに来る。つまりは、
それは許されない。絶対に
そして、言葉よりも先に、エミリアは
敵兵士は
「――どけぇぇぇ!!」
死に物狂いで、エミリアを殺しにかかってきている。
「……集中……!!」
エミリアは腰を低く落とし、槍を
「うおおぉぉぉっ!」
ブンッ!!と振り下ろされた
「……ふっ!」
(遅いっ)
身を
ザシュッ――!と
「――ぐがぁぁぁぁっ!!ぐっ……くそぉぉっ!!」
それでも
エミリアも負けじと。
「投降しなさいっ!武器を捨てて、大人しくすれば――」
命は助かると、投降を呼びかけるエミリア。
足を負傷した兵士の傷口からは、炎が
そんな怪我にもめげずに、兵士は立ち上がろうとする。
「あなた、そんな
「
兵士は無理矢理起き上がり、炎が吹き出る
「お前たちのような、持っている者たちには分からないだろう……俺たちの国の
エミリアに向かって投げられたそれを、エミリアは軽く
「――いないっ!?」
ほんの少し目線を
しかし、護衛の騎士たちの誰かの声で。
「――下です!【聖騎士】エミリア!!」
下を向く。そこには、今にもエミリアに飛びかかろうとする兵士の姿があった。
「――ひっ……」
必死の
しかし、
スタァンッ――!!と、矢が突き刺さった。
どさりと、一瞬で事切れた兵士。どくどくと流れる流血に
「――エミリア。気にするんじゃないわよ」
矢を
どうやら、エミリアの様子をずっと見ていてくれていたらしい。
「ノエル……
ノエルディアはそれだけ言うと、また前線に戻っていく。
残されたエミリアは、無力さと情けなさ、自分の覚悟の甘さを痛感し。
そして、背後にいたあの騎士の「だから言っただろ?ただのガキだって」という小言を、痛いくらいに受けた。
戦場は、静かになりつつあった。
エミリアはその様子を、負けないほど静かに見守っていた。
そして隣で。
「……ほい、飲みな?」
「……ありがとう、ございます」
先に休憩に入ったノエルディアが、革水筒を渡してくれる。
受け取り、しかし飲まずにだらりと腕を降ろす。
「……
「……聞いてたんですね……」
エミリアが誰かに小言や悪口を言われるのは、ノエルディアも通って来た道だ。
王都全域までは知られていない【聖騎士】の活動だが、城では別だ。
全騎士の
それを思えば、あの騎士も【聖騎士】を目指していたのだろう。
それが、学生の身でいきなり【聖騎士】に成り、
「あ、あはは……とにかく、ああいうのは気にしなくていいって事よ。あ、ほら……終わったみたいよ、皆戻ってくる」
「……です……ね」
オルドリンにロット、ヘイズも無傷で戻って来た。
見たところ、大きな
そうして、エミリアの
しかしその日の夜。【ルウタール王国】はまたも進攻を行ってくる。
そしてそれが、【聖騎士】エミリア・ロヴァルトの、真の
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