106話【おはよう2】
◇おはよう2◇
目覚めは、やけにスッキリしていた。
昨日までの
「……」
最近ずっと感じていた
パチリと目を開けて、すぐさま昨日の事を思い出そうとした。
しかし。
(エミリアと別れた後の事が思い出せない……なんだか
エミリアが作り笑顔で帰って行ったあと、エドガーはゆっくりと歩いて
その後の事が
「……う~ん……ん?」
ふと横に
そこには、自分の顔を
「――うわぁっ、ローザ!?」
ガバッと起きて、壁に背を打つ。
「……おはよう。エドガー」
そんな
「お、おはよう……」
確認を終えたのか、ローザは立ち上がる。しかし、
「……」
上半身をはだけさせて壁に寄りかかるエドガーは、寝起きと言うのもあってなかなかに
「――ローザ?」
「な、なんでもないわっ」
(なんなの……少し会わなかっただけで、どうしてこんなに
背を向けるローザは、まさかの顔を赤くしていた。
自分でも分からないが、エドガーを真っ直ぐに見ていられない。
《石》が【消えない種火】のままだったなら、顔が赤くなることも体温が上気する事も無いのだが、【
昨日はエミリアを優先されていたため、エドガーを見ても“久しぶり”程度にしか思わなかったが。
それなのに、エドガーの寝顔を見ている内に
「ちょっとローザ……なんでそんな、え?なんで?……ほっ!はっ!……ええ!?」
エドガーはローザと目を合わせようと回り込む。
何度も何度も回り込むが、反発する
「エ、エドガー!い、いいから服を着なさいっ。はしたないでしょう!」
「は!?……えぇ!なんで上、着てないの!?」
「こっちが聞きたいわよ!エミリアと
「――し、してない。してないよ!エミリアはあの後ロヴァルトの
ローザは背を向けながらも、エドガーのこの
そんなエドガーは
(な、なんで上を着てないんだろう……僕、昨日……)
そこまで考えて、うっすらと思い出す。
(――そうだ。倒れたんだ……)
着替え終わり、エドガーは
だが、どこか
「エドガー?」
「あ、いや……なんでもないよ」
ローザも様子を
「
「ううん、ホントに……何でもないからさ。あ、それよりローザ、久しぶりだね!」
「え……そ、そうね。久しぶりだわ……本当に」
どこか
エドガーはベッドに、ローザは
二人は朝食までの間、話をすることになった。
◇
エドガーは、夜の事(エミリアとの事)を出来る限りローザに話した。
ローザが連れて来たエミリアの事だ、当然気にしているだろうと思っての事だが。
「そう。てっきり
帰った
と言うのも、ローザは一つ覚悟をしていた。
エドガーとエミリアが――恋人になる可能性だ。
花を持たせたとは言え、ローザが眠らなかった理由の一つでもある。
実は、部屋を開けた
その結果、安心してエドガーの寝顔を
「な、なんで!?そんなことしないよっ!」
エドガーは
「それはそれで……」
あの子がかわいそうだ。
「何その目!怖いよっ…――って、ローザ……その目」
エドガーは気付く。
ローザの深い青色だった目が、真っ赤に変色しているのを。
ベッドから下り、
「……凄い……
「……」
(やばい……嬉しい)
魔力が戻ってなお、《魔法》を使う事を
そして今、ローザは
必死に感情を押し殺そうとしたが、にやけそうになってしまう。
ならばどうする。そうだ、
「――そ、それより、エミリアにも会いに行かないとね。今の話の通りなら、もう
エミリアは、【
「ロヴァルトのお
エミリアの事をエドガーに任せて正解だった。
彼女の
「それじゃあ、ゆっくりでもいいわね。昼前くらいに、もう一度城に行くわね」
「うん。そうしてあげて。僕も行きたい所だけど……」
エドガーは城には入れない。
正式に禁止されている訳ではないが、やはり
【召喚師】を“不遇”職業と決めた王族のいる場所だ、その気持ちも当然と言えば当然だ。
「分かっているわ。私も
「それならいいけど……ローザは平気なのかい?」
「?……なにが?」
エドガーが言っているのは魔力の事だ。
先程までローザの目の事を言っていたように、魔力が足りないことだって分かっていた。
以前エミリアに
それでも、エドガーは動かなかった。
エドガーは、それを気にしているのだろう。
自分がローザの為に動かなかったことを、ローザは責めないのかと言っているのだ。
「さっき話を聞いて、ローザがもっと強くなったのは分かったし、自由さが増したのも理解したけど……やっぱり心配と言うか……一番大変な時に手を差し伸べなかった僕が、何を言うんだって思うかもしれないけど」
エドガーは自分の
パカリと開けられたその小箱の中には、赤
「……あ、それ」
ローザとエミリアが見かけた、貴族街でのエドガーの行動。
《石》を集めるエドガーを見かけたローザは、それが自分の為だと分かっていた。
「うん。足しになるか分からないけど……少しでも【消えない種火】の代わりになればって思って、赤
ローザは小箱の中身の《石》を
一度でも何かに使えば、
それでも、その数は
小箱の中身は全て赤
「……」
(これを集めるのに、この子はどれだけの人物に頭を下げたのかしら……)
あの時、貴族の女性に頭を下げていたエドガーを思い出す。
エドガーの立場上、
それだけは理解できる。
だが、それを口にしてはいけない気がして、ローザは。
「ありがとう、エドガー……嬉しいわ。使わせてもらうから、必ず」
今ローザにするべき事は、笑顔で
「……うん!」
それだけで、少年は笑顔になれる。
少年の影の努力を口に出すことは、
それは少年として、一人の男としてすくすくと成長する。
エドガー・レオマリスと言う男の、大事な
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます