95話【友の証】
◇友の
ローマリアの寝室に入ると、待っていましたと言わんばかりに。
「ローザ!よく来たわ……!ほら見なさいノエルディア、やっぱりローザは行動してた!」
それに対してノエルディアは。
「あーはいはい、
「――こ、殺しはしないわよ……多分」
一応
実際は
「でも良かったわ……ローザだったら、きっとこの部屋かエミリアの所に行っていると思っていたのよ――聞いたのでしょ?」
「全てではないけれど。あの子が
その言葉に、ノエルディアが「やっぱり……」と
ローマリアにも、エミリアの
「それで、ローザならきっと……エミリアの為に動くだろうなって思っていたのよ!でも、セルエリス姉さまが……」
【聖騎士】の
「それなら、私がここに居るのはマズいのではない?」
「無理矢理来ようとした女が何を言うのよ……まったく」
ノエルディアに言われた。
「それはいいわ。私も私なりに行動しなければと思っていたのよ。エミリアもノエルディアも、私の【聖騎士】だもの……簡単に
しかし現実問題として、
セルエリスは国の
王女に
「でも、もうエリス姉さまは、きっとお父様に
「ええ。
ローザだって王女の
しかもローザに
「ローザがここに来たのは……」
「そうよ。ローマリア、私は……」
「――待って。その前に、コレを……」
ローマリアは
それをパカリと開け、中身をローザに見せる。
「……これは、
「そう、少し前に用意させていたの。まさか、こんなに早く渡すことになるとは思わなかったけど」
てへへと笑いながら、ローマリアはその
「――聖王国王女、ローマリアの名において……ローザ・シャルにこの
「ローマリア……」
ローザの目的を、ローマリアも分かっていた。
そしてこの
しかしこれで、何の
「――感謝するわ。ローマリア」
ポンと乗せられたローザの手に、ローマリアはくすぐったそうに笑みを見せ。
「エミリアを頼みます、せ、先生……」
自分ではもう、何も出来ないと分かってしまった。
部下として
姉はもう、誰の意見も聞かないだろう。
ノエルディアに聞いたエミリアの
絶対に、エミリアの命の
だから、自由に動ける人物が必要だ。
その役目は、きっとローザがやってくれると確信して
そして
ローマリアにとって、こんなに嬉しい事はない。
「――任せなさい」
ローザはそんな短い言葉一つだけを言うと、背を向けて部屋を出て行く。
ローマリアとノエルディアは、最後までローザの背を見続けていた。
◇
「――エミリア!!」
ローザがエミリアの部屋に戻ってくると、エミリアは部屋の
誰もいなくなった自室にも
その姿はまるで、迷子の
「……ローザ?」
「立ちなさいエミリア。行くわよ!」
顔を見るなり、ローザはエミリアを無理矢理立たせて顔を正面に
当然のことだが、エミリアは何が何だか分からず
今から戦地に向かうと言われてそうなほどの、
「ど、どこに……!?」
腕を取られて、向かう先は
「ロ、ローザ!?」
「いいから」
「良くないよ!」
少女は手を振り
月の光だけが
向けた先には、赤い髪が美しく
そして。
「今からエドガーに会いに行くわよ」
「……え?」
女性が口にしたのは、絶対に不可能な言葉だった。
確かに今、少女が一番目にしたい、会いたいのは彼だ。
だが現在
「なにを……言って」
「エドガーに会おう、エミリア」
「――無理だよ!今、深夜だよ!?……明日には準備もしなくちゃいけないのにっ、今エドに会いに何ていけないよっ!!」
これは時間が
しかし期日はたったの三日、正確には出発が三日後なので、事実上二日だ。
そして今の
「無理なんかじゃない。エドガーは起きてる」
「そ、そうじゃないってっ!!私、
少女は両手で顔を
「エミリア」
「……!や、やだ……!やめてよローザっ!」
女性は少女の腕を取り、隠していた顔を
涙で
そんな少女を、女性は優しく
「そんな事思わなくていい。自分本位になりなさい、エミリア」
今の少女の
国の決定は
「私……は、自分勝手だよ……ローザ。言われるまでもなく、ずっとずーっと!私は自分の事だけ考えてるんだからっ!!」
「それは違うわ。
「……そんな事」
「――ある。彼の事を最優先にする
「……」
国の為に戦う事が、本来騎士のあるべき姿。
しかしこの少女は違う。幼馴染の男の子の為に槍を持ち、男の子の為に国を変えたいと騎士学校に通う、恋をする少女だ。
聖王国の人間の中で、この少女はとその兄だけは
人の為に自分を
「自分を最優先にしてもいいのよ。
お
だからこそ、何の
好きな男の子に会いたいと、そう言ってしまえばいいだけの事だ。
女性の知っている少女は多少の事ではめげない、勇気と根性を持った、
たったそれだけの事、許してやったっていいだろう。
「……私だって、会いたいよ……会いたいよぉ……エドに」
「ええ」
女性の
「エドに会いたい……会いたい!!」
受け止められた少女は、顔を
まるで、想いを“神”に願うように。
「――行きましょう……エミリア」
「――うんっ」
月が
向かうべき場所はたったの一か所、エドガー・レオマリス。彼のもとだ。
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