91話【魔女再び】
◇魔女再び◇
夢を見ていた気がする。でも、短い夢だった。
生まれた頃の、優しい夢。
僕は誰なのか。分からない。
そんな
でも、確かに愛を受けていた。それだけは分かった。
優しさに
「かあ、さん……?」
目を開けると、そこにはふくよかなものがあった。
「――悪い気はしないわねぇ」
この
確か、ローザと初めて会った時だ。
“召喚”の
思い出して、一気に意識が
そしてその相手がローザでは無いとも気付いて、僕は。
「――ごっ!」
ごめんなさいと
「うぐっ……」
急激な
何だって言うんだろう、この痛み。
「――落ち着きなさい、
優しい声には聞き覚えがある――気がする。
「すぅー……はぁー」
僕は言われるがままに
「ゆっくり、
「すうぅーーー……はあぁーーー」
胸を上下させて思い切り
そうなれば、後は考える事は一つ。この
女性は身体を前のめりに
でも、その大きなものが僕の顔面に。
「わぷ……」
「あら?」
長い髪を耳に掛ける
「ごめんなさいねぇ、私ったら……恥ずかしい」
「い、いえ……その、僕こそすみません。なんだかご
僕はやっと起き上がる。どうやら公園のベンチだったようだ。
入り口で倒れたと思ってたけど、もしかしてこの
「いいのよぉ。苦しそうにしていたし……
「え?」
「ううん。なんでもないわぁ」
女性は笑う。やっぱり、どこかで会った気がする。
白いワンピース、
「そんなにじっくりと見られたら、
「――あ!すみません……じろじろ見て!」
あれ……?このやり取り、前にもあった気が……
なんだろう、思い出そうとすると、
ぼやけてよく思い出せない、でも。
僕は、この
「いいわ。今度は忘れなくてもいいし……」
「え?」
ぼそりと言われた言葉は、僕の耳には入らなくて。
「え?」と聞き返しても、笑顔を向けてくるだけで、女性は何も言わなかった。
「あの……」
だから、僕は他の事を聞こうとした。
「なぁに?」
「僕はエドガーっていいます……その、お姉さんは」
見た目は僕よりも少し上だと思ったし、その
貴族の
だから旅人なのではないかと、“お姉さん”と呼んでみたが。
「――ポラリス」
名前、だよね。言われた名を、僕は
「ポラリス……さん」
「――んぁ、くぅ……」
「――え!?」
ポラリスさんが急に
僕何かした!?
「うふふ……なんでもないわぁ、少し、
え、何なの?
「その、ポラリスさん」
「――はんっ……!」
ええええええええっ!?
ど、どういう
名前を呼んだだけ、だよね……?
それなのに、なんでこんな
顔も
でも正直言って、そうは見えないんだけど!!
ハッキリ言えば……その……い、いやらしい!!
「え、えっろ……じゃなくてえっと!!」
しまった。とんでもない間違いじゃないか!
「うふふ……
「えぇぇっ!?」
僕、そんな高度なことしたの!?何の経験もないのに!?
心の底から笑っていた。ように……僕には見えていた。
「うふふ。ふふふふっ……はぁ、面白かった。でも、そろそろ限界かしらね?」
「……へ?げ、限界……?」
あれ、もしかしてからかわれてた?
「時間も少ないのよぉ、残念ながらね……」
「時間?いったい何が、どう……」
全く意味が分からず、僕は
「エドガー」
「え、はい」
あれ、初めて名前呼ばれたんだよな……なんだろう、この
「これをあげる」
「……」
ポラリスさんに渡されたのは、一枚の白い羽だった。
受け取り、僕はまじまじとその羽を見つめて言う。
「
思ったことを素直に言った。それだけだったが。
ギリッ――!と、何かが
「……?」
「……」
気のせい?ポラリスさんは笑顔のままだった。
「私はこれで帰るけど、そうね……なら、その羽のような……」
ポラリスさんはベンチから立ち上がり、僕の正面に立つ。
前かがみになり、僕の耳元で
「――
「……天、使?」
この
その一声で全てを
だけど、その
“悪魔”のような、骨と皮で出来た、
◇
ボーっと、
もう、あの女性はいない。
僕は一人になり、
ポラリスさんが言った言葉が、頭から離れない。
それは想像に
そしてその姿が、ある女性と重なってしまって、凄く、凄く恐怖を感じてしまっていたんだ。
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