87話【女帝の爪切り遊び】
◇
聖王国と帝国の
その【
それは目には見えないが、見張りで立っている黒コートの騎士はそう感じていた。
「――それで?」
「……」
「答えなさいよ。マシアス・ドントーレス」
土下座をする男に、冷たく
彼女の名は、ノーマ・グレストと言う。
この少女は、【魔導帝国レダニエス】の
そして
この男は副団長ノーマ、そして団長である少年、バルク・チューニの部下であり、団長
「……」
「私たちが【
ノーマは
この男が
「……す、すみません……でした。副団長」
地面に
「
ノーマの言葉に、数人の騎士がクスっ――と声を
「「「……!」」」
そして土下座のマシアスは最年長、30を
今の帝国に
しかも新皇帝ラインハルトによって
そのいい例が、この副団長ノーマと団長バルクだろう。
帝国のもう一つの騎士団、【
「それでマシアスさん、ケジメのつけ方はご
「ケ、ケジメ……?」
「ええ。エリウス
ギクリと、マシアスの心音が鳴った。
実はマシアスには、【コルドー村】に
その仲間に情報を貰い、いち早く
「そ、それは……な、
ちらりとノーマを見上げる。
「――ひっ!!」
「どうしました?マシアスさん、怖いものでも見ましたか?」
それはノーマの武器でもあり、
「さあ、
「あ、ああ……ぁあああっ……」
カチン。カチン。カチン。カチン。カチン。
その器具は、爪を
ただ、爪を
ノーマの言葉に、騎士たちはそそくさと出ていく。
「お、お前らぁぁぁ!ひぃ!」
マシアスの
ノーマの持つ器具は、“魔道具”である。
それはつまり、ただでは済まないという事。
「た、たのむ!!チャンスを!チャンスをくれっ!グレスト、この通りだ!!」
「んふふふ……」
「な、
「あは、あはは……あはははははっ。何がチャンスだってーの、私や団長が、どうしてあんたを見逃したと思ってんの?気づけよバーカ!」
「――な、な!?」
あほらしいマシアスの言動に、ノーマは副団長の仮面を脱ぎ捨てた。
「私らに見逃された時点で、チャンスだったって気づけよオッサン!もう終わったのよ、あんたの騎士生活はさぁ!!」
一瞬だった。
シュッ――!!と素早く動かされたノーマの右腕は、音もなくマシアスの手元を通った。
音の方が遅れて来るように感じられるほど、その痛みは急激だった。
「――な、あ!がぁっ!!ああああああっ!ゆ、ゆびぃぃぃぃっ!!」
マシアスの指は、爪の根元から切断されていた。
「んふふ……爪の次は第一関節って、分かってんよねぇぇぇぇ!」
バチン!
「ま、待っ……――んぎゃっっ、ああああああっ!!」
「あはははははははははははっ!!あはははははははははははっ!次は第二関節ぅぅ!でも、その前に!!」
暴れるマシアスに
そして。
ドスン――!!
「――んがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「もっと!もっと!もっと、もっともっと!もっともっと!もっとぉぉぉ!泣け!泣け泣け!泣け泣け泣け泣け!泣け泣け泣け泣け泣けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
マシアスの両腕を
その
その悲鳴は、
◇
【
マシアスの部下として、言う事を聞いていた騎士たちだ。
「あーあ。始まっちまったか……」
団長バルク・チューニだ。
「始まったって……よく言うぜ団長、知ってたくせに」
「ホントだぜ、知ってて降りて来たんだろ?」
「ノーマちゃんは、怒るとこえーからな……」
部下たちも、それを想像してブルブル
バチン!「あははは!」バチン「きゃはは」バチン、バチン、バチーン。
「うーわ。今良い音したなー」
「こっわ!」
「絶対に逆らわんとこ」
「俺は逆に……ごくり」
「「「おいっ!」」」
そして
「終わったか……」
「ああ、終わったな」
「騎士人生が?」
「男としてもな」
「つーか、生きてんのマジで凄くね?」
騎士たちの会話に、バルクは解説する。
「あいつの“魔道具”、【
「い、いや……」
「それがなんだよ?」
「30回だ……爪の部分、第一関節、第二関節を一本ずつだ。しかも第三関節を残して、
バチン!!
「「「よ、良ければ?」」」
追加された音に、騎士たちは顔を合わせてバルクをみる。
バルクは、
「――足の指を、やられるのさ」
「「「うわぁ……」」」
ドン引きでは済まされないくらい引いた。
自分も想像してしまい、バルクも冷や汗を
「ま、時間も限られてるから誰か止めろよ。マシアスのオッサンも、死なれちゃ困るだろ。あいつも一応、
「「「お前が行けよ!!」」」
「なんでだよ!嫌だよ!」
バルクだって怖いのだ。
「お前が団長!」
「そうだそうだ!」
「速くいってやらんとオッサン死ぬぞ!」
しかし、団長だからと言われれば仕方がなく。
「ちっ……お前らぁ……」
頭を
入口付近に、血だまりが出来ていた。
「……あ、
こうして、一人の騎士はその人生を終えた。
しかし尚も、バチン!バチン!と、音は鳴り
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