83話【ドロシーの日常】
◇ドロシーの日常◇
ローザが新たな一歩を
【水の月20日】。そんな本日、【
宿の名は【福音のマリス】、この【王都リドチュア】で、一番人気だった宿だ。
――だったということは、今は違うという事である。
「この
「はい」
緑色のエプロンドレスの女性、メイリン・サザーシャークは、この宿の
今、彼女が
最近【福音のマリス】で働き始めた、ドロシーと言う女性だ。
ドロシーは先輩であるメイリンの言う事をメモしながら、真剣に聞き入っていた。
二人は真剣に向き合い、
そして、そんな二人の様子を
その少年、エドガー・レオマリスは二人の
数日前には
勝手に連れて来て、勝手にドロシーを
なにせ【福音のマリス】は客のいない宿だ、従業員など事足りているに決まっている。
それをエドガーは、メイリンに
「エドガー君も、カウンターの
「……あ」
「もう、
「すいません……」
「面白いですね、エドガー様は」
ドロシーは、エドガーを様付けで呼ぶ。
「いや……ははは」
「ほら!エドガー君!」
「あ、はい!」
ドロシーの言葉にエドガーは頭を
メイリンに急かされ、真新しい
◇
そんな三人の様子を、二階の
女性と言うか、その
「……
“悪魔”の女性、リザ・アスモデウスは、ドロシーを見ながら
そして、そのリザの後ろから来た女性はリザを
「それだけ《魔法》に力があるのだ。それに、あれだけの事を言うのだ。
「
リザを
異世界で“魔王”をしていたという、元“神”様だ。
この世界では【土の月】、【火の月】、【水の月】、【風の月】と4つの月があり、その日にちは約91~92日。
合計日数は365日と、サクラの世界【地球】と同じ
「あの女が言っていたであろう。
「……それはそうですが……“天使”は信じられません」
「元“天使”がよく言う」
フィルヴィーネとリザは、ドロシーの正体を知っている。
一階で
◇
時は
場所は【福音のマリス】の地下、【召喚の間】だ。
『……ガブリエル』
フィルヴィーネが肩を
栗色の髪は色が抜け落ち
『
フィルヴィーネが“神”であった頃の知り合いでもある“大天使”スノードロップ・ガブリエルは、フィルヴィーネの手を
逃げるつもりはないという、彼女なりの意思だ。
『お前がここに
ここ【召喚の間】は、【召喚師】と“召喚”された人物しか出入りできない
スノードロップがこの場にいる時点で、スノードロップもまた、フィルヴィーネと同じ様に異世界を渡って来たという事だ。
『――エドガー様ですよ』
『
『クスッ……』
そのフィルヴィーネの言葉に、スノードロップはクスリと笑う。
まるで『
『――貴様』
ゴウッ――!とフィルヴィーネの
『――……っ』
ビリビリと身体を
『いいのですかニイフ様、わたくしは
『……!!――す、すまぬリザ!!』
フィルヴィーネは一瞬で
『へ、平気です……フィルヴィーネ様。この者がガブリエルだと知って
平気とは言うが、リザの顔色は真っ青だった。
元の姿なら平気にしろ、今のリザでは
『すまぬ、すまぬリザよ……』
『
『……ガブリエル!』
リザを
しかし、力は本気には出来ない。
能力が封じられているという点もあるが、“神”の力を使うには、“悪魔”であるリザが近くにいるのには危険すぎる。
今のように
『わたくしも、別に悪気がある訳ではないのです……ニイフ様、どうかお見逃しを。そうして頂けるのなら、わたくしは近い未来……エドガー様の役に立つことをお約束いたしますわ。ここに居る間も、
『
スノードロップは
『――以前、【月の
『貴様、
『わたくしは本気ですよ。ニイフ様に見つかる可能性を覚悟した上で、ここに来たのですから』
スノードロップはしゃがむフィルヴィーネに小さな
【
『アスモデウスにお使いください。“悪魔”なのですから、この【
スノードロップは《魔法》をかけ直しドロシーの姿に戻ると、【召喚の間】から出ていく。
しっかりと、
『……あの
《天界》でいた時は、
まるで正反対の食わせ者のように、“魔王”であるフィルヴィーネを前にしても動じない
自分が追い詰められたと言う
『どういう理由にせよ……何かがあれば
その後ろ姿に
紫色の魔力は少量ながらも、リザを
『
『いや……今回は
『いえ、それは……』
フィルヴィーネにもいろいろある。
ローザの魔力回復や、エドガーの異世界の
そのせいで部屋から出てこないこともしばしばなのだが、今回はそのせいで
『リザよ、エドガーには言うなよ。他の
『しかし、よいのですか?』
『仕方あるまい……
『
こうして、フィルヴィーネはスノードロップ――ドロシーを見逃すことにしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます