80話【数千年越しの姉妹喧嘩3】
◇数千年越しの
エミリアは、
あのままではローザが、人体に
怒られる事など考える
「エ、エミリア……無茶をするわね」
「す、すみません
結果的に、スィーティア王女は
しかしそのおかげで、ローザも
それだけでも、
もしエミリアが後で怒られるかどうかは、別の話だが。
「結果が全てよ。ティア姉上だって、戦いが続けられてうれしそうだわ……」
ローマリア王女は、
落ち着いて、それを直しながら言う。
「だけど、
「そうですね……ローザも無茶をしすぎですから」
この事は、第一王女セルエリスに報告しなければならなさそうだと、ローマリアは思っている。
それでも止めろとは言わない。そんな
エミリアは「ふぅー」っと息を
「――信じます。ローザを」
「ええ。そうね」
二人は
今まさに、時を
◇
ブンブンと槍を振り回し、
確かに、長年の経験とは全く違う感覚に、正直言って
槍の使い方など考えた事も無かったし、剣と
よく考えなくても、ローザは剣を
この槍はエドガーが《魔法》の応用で造り出したものだが、《魔法》ではなく物質で出来ている。
ローザが《魔法》で剣や防具を作り出す力の応用であり、言わば“召喚”に近しい技だ。
二人の力量は
魔力が込められたことで、炎を作り出す事が出来るその槍は、魔力を持たないこの国の人間でも使う事が出来る。
しかしその力はエミリア固定であり、他の者が持てば、ただの切れ味の良い槍だ。
だが、ローザは違う。
込められた魔力はローザ本人の物であり、エドガーに作り方を教えている以上、槍の
魔力の流れを感じ、炎も出せる。
《石》に頼らないでも炎を
「――よし。これでいいでしょ」
「お覚悟が出来ましたか?」
槍を持つローザに、スィーティアが笑みを浮かべながら歩み寄る。
「先程のように手が
「首を狙っておいて……
「ふふふ。それで、どうですか?」
「……
後ろでローマリアがそわそわしている気もするが。
ようは
そもそもこの
ローザが何を言っても、きっとこの
ならば、早いうちに
「ふふっ……決まりですね、では……始めましょうか!三試合目を!!」
「ええ。来なさいっ!」
◇
先手はスィーティアだった。
ローザは槍の太刀打ち部分で
「はっ!」
「……」
ガキ!キン!と、剣は槍の
「ふっ!」と声を
先程のように、ローザは回避優先ではない。
槍の取り回しがよく分からなく、動きがぎこちなくなってしまう事を考えて、防御・反撃を優先して戦っていた。しかし。
(
自分で使用して分かる、その武器の
剣と槍では、攻撃
そんな初歩的な事に気付かず、剣を持つスィーティアの攻撃を待ってしまった。
「――はあっ!」
「ちぃっ!」
(
ローザは槍に
ゴオオオオオオオォォォォォ!!
「「あっつ!!」」
残念ながら、ローザは《石》の
今までと同じように炎を使おうとして、自分も熱に
二人は炎の熱さに
◇
少し顔が赤い。
こんな声、いつ振りに聞かれただろうか。もしかしたら初めての可能性もある。
目の前の妹は、自分と同様に熱がった姉をキョトンと見ていた。
「お姉さま……《石》の
「まるで私が人じゃない見たいな言い草ね……」
元の世界では人外じみた力と
全ては国と、
それでも、当時のスィーティア、いやライカーナはそんな姉を
「私がどれほどの時間と
スィーティアは走り出しながら、剣を振るってローザに斬りかかる。
ローザは
「そんなことないわっ!あなたはいつだって……私の」
ガギン――!!と、剣と槍がぶつかり合い、ギリギリと
ローザはそれ以上の言葉が出ず、口を
「私の……なんなのよっ!!言えないんじゃない!!」
「――くっ」
(なぜ言えないの……あなたは大切な存在だったって……それだけでいいのにっ)
「私のなによ!!私がいつ……お姉さまの
その
「……」
「なんとか……――言いなさいよぉぉぉ!!」
「――ッ!!……――グゥッ!!」
剣は肩口を
ざっくりと切られた傷口からは
「はぁ……はぁ……はぁ……」
スィーティアは
ローザは斬られた側の腕を下ろし、反対側の手で槍を持ちながらガクリと
「……そこまで、だったのね……」
今の言葉で、妹が姉に
そして痛いくらいに、今までそれを理解していなかったと気付いた。
ローザは“天使”の
逆らえぬ
だがそれは、妹であるライカーナには関係がない事だった。
頭がよく、
それでも、
正直言って、他の兄や姉は大したことはないと感じていた。
しかし、ローザは別格だった。
ライカーナの
その
王を
だが、ローザに対する
ライカーナを最大級に
思い通りに事が運び、ローザは王を
無能な父は死に、残る王家の
そうすれば、残るはこの
そうしてローザは
「……ライカーナの考えは全部、分かっていたわ……」
「なんですって?」
その
「それでも構わないと、それでいいんだと思っていた……」
ローザは力を込めて立ち上がる。
肩からは血が
「私にとって……王国で
ローザの告白に、スィーティアはムキになる。
「そ、そうよっ!お姉さまは何も言わなかった……!
「知ってるわ……それでも……私は嬉しかったのよ。『《石》は
ローザはそのおかげで、一人ではないと感じられた。この上ない喜びを与えてくれた。
「い、今更……私は大嫌いだった!!お姉さまがあの時そう言ってくれたとしても、私は嫌い!大嫌いよっ!!」
スィーティアは
「!!」
「「ローザ!!」」
アルベールも、「ダメです
そしてそれらの声は、ローザにも聞こえなかったかもしれない。
「――なっ……なに……!?」
剣は、直前で
スィーティアが
見えない何かが、ローザの身体を守っていたのだ。
「――私の思いも……
ローザを
ローザの存在を知らしめる、赤い魔力。
その
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