70話【南の報告】
◇
【リフベイン城】に
「――お久しぶりです、団長」
「……君だったか。スファイリーズ」
「……?」
まるで誰が来るのかを知らなかったかのように、団長クルストルはオルドリンを見ると、一人
オルドリンは逆に、
「なんだ……
「え、ええ……
団長クルストル・サザンベールの言葉に、オルドリンは嫌そうに顔を暗くする。
「ああ。名前が
届いた
しかしクルストルが言うように、中身は
その事実に、ガックリと
「はぁ……やはり、あの
オルドリンはガッカリとし、クルストルはフッと笑った。
同じく室内に入った、エミリアとアルベールは。
「ギルオーダ……?」
「騎士学校の
「なんで猿?」
「それは……俺の口からはなんとも」
言いにくい事なのだろうか。
その二人の様子が聞こえていたらしく、オルドリンが振り返り言う。
「ギルオーダはあなた方、アルベール君の三つ上の卒業生ですよ。小さくてすばしっこい事から、お猿さんと……学生時代から呼ばれていましたね」
「へぇ……って、すみません!」
エミリアは急に頭を下げて、オルドリンに
わざわざ説明させてしまったと気付いて。
「いいんですよそれくらい。面白い子ですね、団長」
「そうか?確かに、オーデインやノエルディアは気に入っているようだが」
クルストルは
【聖騎士団】全体を仕切るクルストルとは違い、副団長のオーデインとその部下ノエルディアは、第三王女ローマリアの
ちなみにアルベールは関係なく、
「……な、なんでしょう?」
「いや……お前たちも、今日のオルドリンの報告に出ろ」
「「えっ!?」」
報告とは、この後オルドリンが第一王女セルエリス
それに
「勉強をしなさいと言う意味ですよ。団長は言葉が足りないので……」
「あ、ああ……そう言う」
「べ、勉強……?」
と言う訳で、エミリアとアルベールの兄妹も、セルエリス
◇
オルドリンが【聖騎士団】の詰め所に来たのは、単にセルエリス
「そろそろでしょうか……」
「そうだな。行って来い」
ソファーに腰かけていたオルドリンが立ち上がり、クルストルも
詰め所に来て
「さぁ、お二人も行きましょうか」
「「は、はいっ!」」
「ふふふ……そんなに緊張しなくても。報告するのは私なのですよ?」
ごもっともだった。
◇
三人は、
その後、
以前エミリアとアルベールが
あの場よりも大きな扉は、三人がかりでようやく動く。
「……や、やば」
「おいっ」
「ふふふ……」
緊張で、つい不用意な言葉が出そうになるエミリアに
三人は進み、赤い
オルドリンを先頭にして、ロヴァルト兄妹の二人は後ろで待機する。
そして、
「――顔を上げなさい、【聖騎士】オルドリン・スファイリーズ」
「はっ」
「
「……よい。どうせ書いたのはギルオーダの猿であろう、分かっておる」
「……そういう意味でも、申し訳ありませんでした」
「それは本人が戻って来てからにするとしよう……それでオルドリン・スファイリーズよ、この
セルエリスは、
それはそれで、【聖騎士】ギルオーダが後で大変そうだが。
「感謝致します……
オルドリンが
南に【聖騎士】を
しかし、実力が大してない【ルウタール王国】は、
だから、【聖騎士】を
「近いうちに、ルウタールが
「……【聖騎士】の
「はい。その通りかと」
国境付近に大きな
そうして人知れず軍備の強化や、進軍の準備をしようとしているのだろう。
「それにしても……国境付近に
確かに。それでは、わざわざ何かをしていますと
「はい。その通りでして……逆に
国境付近に意味深な
しかし、そんな分かりやすい事を、
これでは確かに「逆に
「ただの
セルエリスは
玉座の
「「「……」」」
正面に
エミリアのみ、緊張が上掛けされた。だが。
そんな中、セルエリスは少し考え、オルドリンが
「――兵は
「はい、
「南のいいようにさせるな」と、セルエリスは言いたいのだ。
これで報告は終わり、【聖騎士】三人もセルエリス王女も、
しかし
「こ、困ります!
「今は、
と、
そしてその言葉から、誰が来ているのかも。
「エリス姉上っ」
満面の笑顔で、つかつかとセルエリスの前までやって来たスィーティア。
その
「……スィーティア。今は
「
ドヤ顔で。
「はぁ……終わるまで待てないのかしら」
「――待てないわね」
その
(……俺を……見てる?)
アルベールは気付く。スィーティアの
「何の用なの?手短にしてもらわないと、こちらも困るのよ」
「フフっ……分かっているわエリス姉上……それでは
「……部下を寄こせと言う奴ね……?」
【聖騎士】三人にも、ピクリとするだけの
こんな
「ええ。だから、ここにいる【聖騎士】を
「なっ!」
「ええっ!?」
「……」
「……はぁ」
【聖騎士】三人の後に、ため息を
頭を
(また
「聞いていますか?姉上……私は――そこの【聖騎士】アルベール・ロヴァルトを、
「……お、俺を!?……ですか?」
「ええ、そうよアルベール・ロヴァルト……この前の礼です、ありがたく受け取りなさい」
この前の礼とは、倒れそうになったスィーティアを助けた事だろうか。
アルベールを放っておいて、勝手に進めるスィーティアにセルエリスは。
「……どうなのです。アルベール・ロヴァルト……」
セルエリスはアルベールに直接決めさせるつもりなのか、言葉を向けた。
今まではオルドリンの後ろで勉強として待機していたが、急に
セルエリスも、ロヴァルト兄妹が勉強で来ていると理解していて、
「いや……その、きゅ、急すぎて……」
(何が何だか……でも、でもこれは……チャンスなんじゃ……?)
アルベールの中では、最優先は成り上がりだ。
成り上がって、【召喚師】の
それが、そもそもアルベールが【聖騎士】を目指した理由だ。
アルベールは、これは
「に、兄さん……」
一方でエミリアの
(ダメだよ兄さん……あの人は、あの人はローザの……)
スィーティアがローザの妹、ライカーナの生まれ変わりであることを知っているエミリアは、その
それはきっと、エドガーの為にはならないと。
果たして、アルベール・ロヴァルトの決断は――
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