67話【気付かぬ再会】
◇気付かぬ再会◇
【
「――さ、早く帰ってこの《石》がどんなものか調べないとな」
そんな事を言いながら、指で
「……ん?」
ポツリと、鼻先に感じる水分。
ポツ、ポツ、ポツポツポツ。
「雨だ……
数日続いた雨がようやく晴れて、エドガーは久しぶりに外に出た。
また雨が降ってきてしまった。
小走りで
「結構強くなって来たな……これは、大降りになるかもしれないぞ……」
しかし、
エドガーの家である【福音のマリス】は【
現在地と
本来、王都の移動手段は馬車だ。
それでなくても広いこの王都を、雨に
今は
「……開いてる場所、無いなぁ……ん?」
少し走って、【
「……女の人?」
一人の女性が
(え……来いって事?)
立ち止まりそうになるも、
女性に
「……凄い雨ねぇ」
「え……そ、そうですね……」
(話しかけてきた?……僕のことを、知らないのかな……?)
【召喚師】であるエドガーに声がけしてくる時点で、“不遇”職業を知らないのか、それとも無知なのか、あるいはこの国の人間ではないか、だが。
そしてザーザーと、雨はドンドン強くなっていく一方で。
「……」
(……し、
少し間を開けて隣に立つ女性は、どこかのお
その服も帽子も
手には
その女性の身に付ける
(
エドガーの内心は、《石》が
(
その女性の足首にも
そして、自然と見てしまっていた事を、女性に気付かれてしまう。
「――そんなに気になるのかしら?」
「――え。あ!……す、すみませんっ!じろじろ見て……ごめんなさいっ!」
ドキリと心臓を一度鳴らして、エドガーは必死に
別に責められたわけでも、
じろじろ見てしまったのは事実なので、
「ウフフ……」
しかし女性は、そんなエドガーを見て笑う。普通は嫌な顔をするか、
そんな態度をされたものだから、エドガーは下げた頭の首だけを動かして、その女性の
「え……っと……」
「ああ、ごめんなさいね。別に笑う気も無いのだけれど……
「……は、はあ」
(怒っては無いの、かな?)
確かにじろじろ見たのは失礼だし、女性が持つ
『女の子は、
エドガーは、過去に幼馴染に言われた言葉を
「そ……それにしても、止みませんね、雨……」
(――な、何を言ってるんだ僕は……!あの雲を見れば、通り雨じゃない事くらい分かるのに!っていうか、話を広げてどうするんだ!極力関わらない様にしようって決めたばかりなのに!)
「そうね。どれくらい降るのかしら」
エドガーの突然の言葉にも、女性は嫌な顔一つせずに
それが
「えっと……あの……もしかして、ですけど……旅のお方、ですか?」
「あら、どうして?」
頭を上げたエドガーを、優しい目で
その時にエドガーは、女性が
ローザと同じくらいの身長に、ウェーブのかかった深緑の髪とつば広の帽子が風に
「……」
「どうしたの?」
「……あ……す、すみませんっ……」
(な……なんだ……この感じ、それこそこの人がさっき言ったような……
「――変な子ね。でも、満足したわ……」
「え?」
「じゃあね。また、会いましょう……
「え、あ、ちょっと……」
女性はエドガーの頭をポンと
初対面のはずのエドガーは、
女性が街の角を曲がり、完全に消えてしまった瞬間に。
「……あれ……僕は……?」
まるで、初めから一人だったかのように。
エドガーの記憶から――女性の事など、すっぽりと抜け落ちていた。
「あ。雨止んだ……」
先程まであった大きな
「……あれ?……な、何だったんだ?――ゆ、夢?」
現実感のない出来事の様に、エドガーは
「……痛い」
当然夢ではなく、
◇
雨が上がり、女性はどこぞの
走る姿は少年
「フフフ……」
指にはめた、
見つめるその
「あぁ……エド……私のエド……
この世界に“召喚”され、二十年。
仲間と共に成長を見守ると
しかし、その願いは
無情にもこの
「他国に渡っても、あの子の事を考えない日は無かった……でも、
「
それは、人を思いやる心であり。
人を愛することの出来る、
その全てが、【
だが、ポラリスが
それが――【召喚師】。
「
欲しいものは、必ず手に入れる。
それが、異世界人、
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