51話【魔女、聖王国へ】
◇魔女、聖王国へ◇
大きな三角帽子を風に
スリットの入ったドレス、そのスカートから
ここはその
「――
一年間帝国で
帝国が凄いのではなく、聖王国が異常なのだと。
手の甲に
自分で言い出した事とは言え、魔力がない所に身を置くことは気が重い。
それだけ、帝国と聖王国は違う。
いや、他の全ての国と聖王国が違う。そう言った方が正しいだろう。
【魔女】であり、《魔法》を使う者であるなら、
「とにかく、
両腕、両足の
「とは言ってもぉ、馬車もない道も悪いでは、お話にならないわねぇ……」
ポラリスは馬に乗れなかった。乗る必要も無かったのが理由だが、こういう時は
【
「仕方がないわねぇ」
ポラリスは胸元に手を突っ込んで、ごそごそと何かを取り出す。
それは、小さな
小石は、まるで自分から進んで地面にめり込んでいくように
少しの時間を
「――いい子ねぇ。じゃあ、ご
ポラリスは更にもう一つ
やがて、落ち着いた小山の土を突き破り、ごつごつとした腕部が現れる。
土で出来た、
「……ふぅ~~~~~」
ポラリスは
その息は《魔法》となって、腕の生えた小山の土を
そこに残ったのは、
【
「こんなものかしらねぇ……?」
ポラリスがポンポンと
乗れと言っているかのように、背中をポラリスに向けた。
「うふふ……いい子ねぇ」
ポラリスは《石》の力で少しだけ
土の
しかし、移動手段としては使えなくはない。
通常の【
人間の大きさなど優に
だが、ポラリスはそんな心配などしていないようにも見える。
「……さてと、【王都リドチュア】へ向かうわよ……この森を超えれば、
道中どころか、この国に王都以外の街は
その事実を、聖王国民以外は知っている。知らないのは、王都に住む残された人間達だけだと言う事を、本人達は知る
◇
【カラッソ大森林】。
ここは、聖王国と帝国の
ポラリスは今、
月が真上で
周りには何もない開けた場所で、
「はぁ~~……転移が使えれば、こんな事をしなくても
魔力を
しかし、ラインハルトと約束している手前、投げ出すことはしない。
【魔女】にとって、約束や契約とは何よりも
その約束を守る為に、ポラリスは聖王国へ入り、現在王都を目指しているのだ。
「今頃、
それも、魔力が込められた、
帝国では、魔力が込められた《石》が
それは【
更には、シュルツ・アトラクシアが持ち込んでいた《石》が数個あったのだが。
それを
何を考えているのか、スノードロップはその《石》をいつの間にか
事実は、エドガー・レオマリスの【召喚の間】に
「……
だからこそ、自分はシュルツと行動を共にすることを極力
「スノーもノインも……きっと私を出し抜いたつもりでしょうね……でも――あの《魔法》の
再燃してしまった怒りにギリリと歯を食いしばってしまい、一人
「……はぁ」
スンっと
◇
更に一日が過ぎ、小雨が降って来た。
ポラリスは【
雨宿りするには充分なサイズ感だった。
すっぽりと入り込んで、三角帽子を
「――この調子だと……帝国でも雨が降っているわねぇ……王都までは、行ってないかしら」
「もう三日……そろそろ半分かしらねぇ」
見つめる先には、馬車の
それは、以前エリウス達が帝国に帰ってくる
「……十日近くかかると思ったけれど」
意外にも、【
魔力で行動する
雨で土が
なんだかかわいく見える。
「【
腰元の小さな
中身は小さな
ポラリスは、少しだけ少女のようにムッとしながらも。
「六つ……【
小型の【
もし、何かがあって誰かと戦うことになったとしたら、この戦力で逃げ切れるだろうか。
戦うことは
しかし、この場所は違う。
聖王国は、魔力を頼りに戦う人物によっては、なんとも相性の悪い場所だ。
だからこそ、帝国人には必要なのだ。戦力になる《石》が。
「ここまでの道中では、まともな《石》は拾えていない……」
それどころか、【
運が悪いのだろうかと思いたくなるレベルだ。
それだけ、
「――帝国に近いこの森では、取り過ぎたのかしらねぇ?」
聖王国民が
「……雨は、止みそうにないわねぇ……」
残念なことに、雨は強くなるばかり。
ポラリスは外を見上げながら、少し休憩が出来ると割り切り、座りながら眠りについたのだった。
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