49話【軍事顧問】
◇
自室にて、シュルツ・アトラクシアは腹を
床をバシバシ叩き、転げまわる
なにも、頭がおかしくなった訳ではない。本当に腹を
「……はぁー、はぁー、はぁー……」
しかしその部下は、今はいない。
いや、今はと言うより、もう、と言った方が正しいだろう。
初めから、スノードロップとノイン、それにポラリスは自分の部下と言う訳ではない。
それぞれが同じ最終地点を目指している事を
仲間ではあったとしても、真に信頼を持っていたのは、シュルツに対してではなかったのだから。
しかしそれは
シュルツの最大の目的は、ある人物を探すことだ。
この世界にはいない、
その為には、この世界の外からの“召喚”が必要とされる。
それが出来る人物は世界にただ一人、【召喚師】エドガー・レオマリスだけだ。
シュルツは一人、
そのタイトルは【愛のために】。
異世界【地球】の文字で書かれた、愛する人を探し求める男の物語。自分にピッタリの本だ。
「もうすぐだ……もうすぐ、俺は……」
協力者が居ずとも、成し
その為に全てを利用する。帝国であろうが、聖王国であろうが、【召喚師】であろうが、だ。
本を開かず、強く
力はひどく弱々しいもので、込めた力で
◇
それから数日後、シュルツは
ラインハルトに会いに行く道すがら、あの日の事を思い出す。
シュルツは燃える城下町を後にし、城へ入った。
ヴォルス
まるで今まで
「……さてと、
開かれた扉の向こうへ、シュルツは歩き出した。
◇
今この場にいるのは、
「それで、俺を呼んだのはどういう
ガラガラの
シュルツを
(
ラインハルトの
「――それにしても、随分と少ないんだな……」
虫食い状態の
しかし、ラインハルトが呼んだ人物はこの
それだけ、今は信頼に足る人物がいないのだろう。
そしてシュルツの言葉に返答したのは、ボーツ大臣だ。
「――
「なるほど。その
「……はぁ。そういうことです」
戦力は申し分ない。しかし、若返った総戦力の中に、
今の帝国戦力は、かなりパワフルになりつつあった。物理的な意味で。
「――ふん。下らない
書類を読み終えたラインハルトが、うんざりしながら言う。
ボーツ大臣は
「
「ふっ……
優しさの中に
「ははは、それはいい。
まだ慣れず、
「……フッ。これも勉強という事だ……
ラインハルトの最初の勉強を笑うシュルツを、ラインハルトは怒ることなく続ける。
しかし、その言葉は、シュルツの心臓を
「――!!……いえ、アトラクシアで構いませんよ」
(そうか……ポラリスから聞いたんだな……あの【魔女】、どこまでも仲間を売っていくつもりか……)
内心の
ラインハルトはシュルツに、引き続き
「しかしいいんですか?俺で……俺はこの国の人間ではない事……
シュルツのその言葉は、ラインハルトだけではなく、ボーツ大臣や複数の騎士にも言われた気がした。
言葉を向けられた騎士は無言を通したが、大臣だけは一瞬だけ
そしてラインハルトは。
「ああ。当然だ。
「なるほど……それでも構わないと?」
(……ポラリスはどこまで話した?……まさか、あいつの事まで話していないだろうなっ)
「そうだ。
「「……」」
ラインハルトの
口出しするなと言いたいのだろう。
「……」
ラインハルトは聖王国に攻め入ろうとしている。
その敵国出身者を、
その
しかしラインハルトは、全てを調べ上げ、全てを知ったうえでシュルツを部下にしようとしている。
「
ラインハルトは立ち上がり、
「「「――!!」」」
「……」
(ほう……俺の
大臣や騎士達は、ラインハルトの行動に
一方でシュルツだけは、目を細めて新しい
ラインハルトは頭を下げたまま続ける。
「俺の行く道は、覇の道だ……その道中、失うものもあるだろう。だが、ただで失うつもりはない。失った分、いやそれ以上に、帝国の
「……夢……か」
その言葉は
だが、目の前の少年の言葉は、決意と
現帝国の
たった一年
軍の
「――シュルツ・アトラクシア殿……
再び頭を下げようとしたラインハルトに、シュルツは。
「――待った!もういいですよ。ラインハルト
ラインハルトを制し、シュルツは立ち上がって、逆に
(なるほど……以外と面白いかもしれないな……こういう少年の下について、計画を進めるのも)
あくまでも自分の為、そう言い聞かせて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます