ショートストーリー【異世界人お風呂談義】
ストーリーとは関係無い会話が発生いたしますので、ご注意ください。
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◇異世界人お風呂談義◇
これはいつの事だったか。メルティナが“召喚”されて、エミリアとセイドリック・シュダイハの決闘を終えた後の話だった筈だ。
その日、宿屋【福音のマリス】では異世界から“召喚”された女性陣で、お風呂会議が行われていた。
「【忍者】、シャンプー取って?」
「しゃ、しゃんぷう……これだな?」
「そ、あんがと」
異世界【地球】の【女子高生】サクラが
彼女は、サクラとは生きていた時代が違うらしく、
それでもサクラに文句もなく接するのは、何か特別な思いを
「――これ、本当に凄いわね……数日髪が
サクラの横でシャンプーを受け取り、自分も
シャンプーなど使わなくても十分に
「……ローザさんには必要ないんじゃないですか?」
「確かに。
ロザリーム・シャル・ブラストリア。
しかし、それをひけらかす事無く、この二人の少女にも、他の誰にでも同じく
「そんなこと無いわよ。サクラのこのソープがあるから、更に
「さ、更にって……」
モデルのような身長に、大きな胸、くびれは
まさに、美人中の美人と言えた。
「ローザ殿はお顔も
うむうむと、一人
「そう?ありがとう」
わしゃわしゃと髪を洗うローザは、思い切り目を
まるで泡が怖いかのように。そんな事を、サクラもサクヤも気付くことなく
「お、いいお湯だな!」
「そうね」
「だね!」
今日のお湯は高温だ。55℃を超えており、中々入れる人はいないだろう。
いつもはもっと低いのだが、今日はこの高温好きの三人が最後の入浴だ。
「……――その温度は危険ではありませんか?」
まさしく水を注すように、後方から声を掛ける、もう一人の異世界人。
皆と同じく裸なのだが、
名をメルティナ・アヴルスベイブと言い、最近仲間入りしたばかりの女性だった。
「メルも入ったらいいのに。機械なんでしょ?」
「イエス。内臓……いえワタシの場合内蔵でしょうか。ああ、とにかく、身体には良くありません。
メルティナは、“召喚”される前は人工知能と言うものだったらしい。
“召喚”される
内蔵と内臓がややこしい……
「ワタシの身体に
「あーはいはい」
「つまりは嫌なのでしょう?」
「なるほど。メル殿は熱に弱いのか」
三人は相手にしない。高温の湯が好きなのに、どうしてわざわざぬるま湯に入らねばならんのだと、まるで話を聞こうとしない。
ましてや、一応は宿の
「ストップ!話を聞いていますか?聞いていませんね!?」
「はいはい、分かったって。水出せばいいんでしょ?」
サクラはお湯の量を
チョロっとだけ、水が出た。
「――意味がありませんよっ!」
「私達はルールに
その通りだった。この温泉は湯船が
その
「ノー!そういう事ではありません!熱さが問題なのです!」
メルティナが言いたいのは、健康面を考えてだ。
今後も戦いが起こると考え、体調は
「ぬるま湯に長湯するなどすれば、
「メルは分かってないなぁ」
「そうだぞメル殿。熱いお湯は
「い、いえ……ですから、体温を上げ過ぎては……」
何を言っても分かってくれそうにはない。
ならば無理矢理にでもと考えるが、ローザの
「メルもさ、一度入って見ればいいじゃん」
「そうだな。それがいいぞ!」
サクラとサクヤの二人が、ざばっと立ち上がってメルティナの方に向かう。
「――身体が真っ赤ではありませんか!!
「慣れよ慣れ」
「もう慣れた」
「私はそもそも熱くない」
黒髪の少女二人は身体が真っ赤だ。
それこそ
「――はっ!」
ローザの異常なまでの
しかし残念ながら、もう遅かった。
「いや、ちょ……待ちましょう!サクラ!サクヤ!ストップ!ステイ!」
「聞こえんなぁ~」
「わたしは言葉の意味が分からぬ」
二人共ニヤニヤしている。
こういうところ、本当にそっくりだ。
「ふざけ……あっ!まっ!――やっ」
「――あ!!っっっつーーーーーい!!」
本当に人工知能なのだろうかと思わせる程、人らしい悲鳴だった。
◇
その
「……」
「ごめんって、メル……でもほら、気持ちいいでしょ?」
「……」
「す、すまぬ……メル殿、ちとはしゃぎ過ぎた……
「……」
「いや……私は何もしてないでしょう?」
確かに。ローザは一人で入浴を楽しんでいただけだ。
「
人工知能だったメルティナには、理解し
人間の身体を
“召喚”された
外装の
ケーブルらしきものが接続されていた関節部なども、完全に人間のような間接に変化し、見た目だけでは判断しにくい所まで変化していた。
一部、
内部も、超技術と言えるもので作られており、人間の体内構造とほぼ同じとなっている。
ただし、関節の一部に球体モジュールが。
眼球には
更には、
メルティナにそういう
「必要とか
ローザが、ぬるま湯のメルティナに向けて言う。
「どういう意味ですか?」
「エドガーに
「!!」
言われた瞬間、想像してしまった。
『あれ、メルティナ……なんだか
「ノ、ノー……」
「うわぁ……あたしも想像しちゃったよ……」
「わ、わたしもだ……立ち直れない」
入浴が
それはつまり、理由があるからに他ならない。
「男の子にしたら、気にしないのかもしれないけどさ……汗の
「……イエス。サクラの言う事は、理解できます」
「でしょ?なら、身体を
「い、いえ……一緒にも無理です」
「なんでっ!?」
メルティナにも、
ただ、
今は
ただ、
機動兵装【ランデルング】のインターフェースだった時も、前マスターのティーナ・アヴルスベイブがボディを
鼻歌交じりで、機嫌よく洗っていたのだが。
今思い出すと、その洗っていた
「マスターに嫌われたくはないので、
「
「メル殿には湯船の良さが分からなかったか……残念だが致し方あるまいな」
「好きにさせなさいよ」
そんな事を言いながら、異世界人の四人は
そう言えば、エミリアも湯船が苦手そうだったなとローザは思っていたが、口にはしなかった。
「――さ、上がって食事にしましょう。エドガーの事だから、私達を待っているわよ?」
「それもそーだね」
「イ、イエス……」
(メモリがボーっとしているのですが……)
四人は大浴場を出て、着替え、食堂に向かうのだった。
《契約者》であるエドガーが待つであろう、楽しい食卓へ。
~異世界人お風呂談義~ 終。
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