44話【眠り姫2】
◇眠り姫2◇
ローザの
完全に
エミリアは魔力が無いので魔力を感じる訳はないのだが、エドガー達の
そんなエミリアは、そっとサイドテーブルの《石》を手に持ち、目を細めてじっくりと見つめる。
「むむむ……」と力を
「……ま、当たり前かぁ」
《石》を元の位置に戻し、再びローザの寝顔を
「スヤスヤ眠っちゃってさ……
ローザの《石》【消えない種火】は、【
その力は強力の一言であり、
しかし、その魔力量の
この世界に来て、少しずつ
フィルヴィーネによる魔力の
その結果が、この
今のローザは、“天使”ウリエルに《石》を
ローザが成長した十数年分の魔力は、全て【消えない種火】に
一気にそれを失い、ローザは十数年分の成長時間の
「ローザ……早く良くなるといいね……――っっ!?」
手を
しかし、背後に何かが
「――
エミリアの後頭部を
「時間に遅れ、
「――い、いだだだだだだっ!!痛い!痛いってフィルヴィーネぇぇ!指、いや爪が食い込んで……血!血ぃ出ちゃう!!」
転移にて一瞬でエミリアの背後に現れたフィルヴィーネは、そのままエミリアの頭部を
フィルヴィーネの異世界能力である力は、“この世界のものと戦えない”というものだ。
つまり、エミリアの頭に乗った手に、フィルヴィーネ自身も
更には痛みを与えると言う意味で、それは出来ないと。
フィルヴィーネは、それを分かっていながらエミリアの頭を
無理だと
だが、右手は能力によって
しかしエミリアがゾッとした瞬間には力が
「……それで、こんな時間まで何をしていたのだ?一度エドガーのもとに来る予定だったであろうが」
フィルヴィーネは、自分の中の
「えええ!だってまだ、時間……いだだ!いっっだい!!」
涙目でフィルヴィーネを
両手でフィルヴィーネの手を
「時間はとっくに過ぎておる。サクラの時計で正確な時間は
「そ、それは!……ごめんなさいいぃ!」
サクラの時計はエミリアも見たことがある。
なので、完全に自分が遅れたと理解したエミリアは、正直に
その
「うぅぅぅ……痛かったぁ」
両手で頭部を押さえながら、痛みが
その姿は、まるで何かをやらかしてしまった
だが、やらかしてしまったと思っていたのはフィルヴィーネも同じ。自分の右手をまじまじと見つめ、おかしな感覚に
「――フィルヴィーネ?」
「……ん。なんだ?」
「いや、どうしたのかなって……大丈夫?」
頭を
フィルヴィーネも、しまったと気を取り直してその手を引く。
「なんでもない。お前が気にする事ではない……それと、気安く名を呼ぶなバカ者」
「ええぇ……
フィルヴィーネはフッと笑いながら
エミリアも笑いながら、自分の座っていた
「すまぬな」
「いえいえ」
「……こ奴。死んでおるのではないか?」
「し、死んでないって……ほら、大きな胸が上下に動いてるでしょ!?」
指差して、ローザの胸をつつく。
つんつん、つんつん。と、数度つついた。
「……やっらかぁ」
自分にないモノを再認識してしまう
「
「――あ、はい」
フィルヴィーネはローザの《石》をサイドテーブルから指で
「エミリア」
「えっ?……あ、なに?」
呼ばれると思っていなかったエミリアは、変な声を出しつつもフィルヴィーネに向く。
ローザに向きながらも、フィルヴィーネは疲れた顔をして言う。
「この
「あ、そーいうことね、あはは」
エミリアは笑いながらローザを
「おーい、ローザー……おっきろー」
ムニムニと
これはしめしめと、エミリアは胸を触ったり、腰を
悪ノリと言うやつだ。
「お前……意外とそっちの気があるのか……?」
ドン引きするフィルヴィーネに、エミリアは
「――ち、違う!違う違う!」
「どこが違う……そうでないものが、乳や尻を
「わあぁ!本当に違うのっ!無い物ねだりなの!
変な
とにかく、なんとも悲しい事だった。
◇
結局、ローザはエミリアではなくフィルヴィーネに起こされた。
起きたローザは、
(……この子、何があればこんなにへこんでいられるのかしら……)
「ロザリーム」
「え!……な、なに?」
魔力の
フィルヴィーネは
「今の
「……ええ。あるわ」
ローザ自身感じている、自分が《石》に頼り切っていたという
今の自分が、それ程落ちぶれてしまったという
フィルヴィーネは、《石》を
「……」
【消えない種火】は
一気に加速していく、魔力の
《石》がある時だけ、ローザはローザでいられる。
エドガーやエミリアが知るロザリーム・シャル・ブラストリアは、《石》ありきの人間だと、《石》に言われている気分だった。
「……これじゃあ、まるでこの《石》が本体のようなものじゃない……私の
情けなくも悲しい現実に、つい、ローザの口から本音がこぼれたのだった。
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