42話【物語を始めよう】
◇物語を始めよう◇
表紙には【あたしの異世界】と書かれている。
黒髪の少女、サクラは考え込むようにシャ―ペンを
横から、同じ顔をした少女が顔を出して「何をしているのだ?」と、様子を
「ああコレ?日記だよ。つけようと思って
「それはいいな。自分の事を
サクラの肩に
もう一人の少女、サクヤの顔は晴れやかだった。
そんなサクヤの頭に、サクラも顔を
くすぐったそうに、「ふふふ……」と、二人で笑い合った。
こんな感じで、なんだか二人はかなり仲良くなっていた。
サクラが戻って来て数日。問題はまだ多く、
だが、
そして、残る問題は。
「……ローザさん、
「――なんだまた、
サクラの
そう、ローザの魔力自体は回復した。
しかし、ローザの《石》である【消えない種火】の無くなってしまった魔力だけは、数日
「フィルヴィーネさん、今日もお城に行ったんだよね?」
「ああ、エミリア殿とな」
サクラもまだ
この様に夜、同室のサクヤから話を聞く事で、その動向を少しでも
「そっか……エミリアちゃんが」
「わざわざここまで来てから、フィルヴィーネ殿が転移で向かっているのだと」
「……それ、意味あるの?」
「わたしもそう思ったのだが……なんでも【
そう。エミリアは自分の【
物凄く二度手間である。
「フィルヴィーネさんが直接行くのじゃ
「う~む。これはローザ殿の出した
「エミリアちゃんと一緒が?」
サクヤが拾い、そのシャーペンを机において返事をする。
「うむ」
「な、なんでまたそんな
「う、うむ……?」
それは
そうしてまた一日、過ぎていくのだった。
◇
翌朝、結構早くにサクラは目を覚ました。
スマホを確認すると、5時59分と表示されている。
「ん~~~。アラーム前に起きちゃった。スマホの
背伸びをしながら、スマホの
以前スマホを
その時から魔力の
「あたしがいない
メモリは赤い。もう
「――ふぁああ~。さってと……顔洗おっかな……」
◇
部屋には
《戦国時代》から来た彼女は、目覚めがとても速い。
今日もきっと、早朝から
サクラは顔を洗い、歯を
そこには、一人の少年がいた。
「――エド君。おはよう」
「ん?……あぁサクラ。おはよう」
サクラの《契約者》である【召喚師】の少年、エドガー・レオマリスが、ロビーで
向かいには、【福音のマリス】唯一の従業員メイリンもいる。
「メイリンさんも、おはようございます」
「ええ、おはようサクラ……よかったわ、元気そうで」
「あはは、おかげさまで何とか元気ですよ……ご心配おかけしました」
サクラは後頭部に手を当てながら笑う。
メイリンとは、《石》の世界から戻って来た翌日に一度会っただけで、まともに会話はしていなかった。
【福音のマリス】自体が休んでいた事もあって、実はメイリンは来ていなかったのだ。
休む必要があるのか?客がいないなら毎日休みだろう?
そんな
「――よしっ!
エドガーは背伸びをして、次に
サクラは、ふとエドガーに聞く。
「サクヤ、
てっきり、庭か【召喚の間】で
「……ん?サクヤならマークスさんの所だよ」
「マークスさん?……ああ、ルーリアさんに会いに行ったんだね……」
(こんな朝早くから?)
「あはは。早いよね、時間」
エドガーも苦笑いをしていた。
しかしそう言うエドガーは、これからどうするのか。
身体を動かそうとしているのか、準備運動にも見えるが。
「エド君は?これからどうするの?」
「僕もマークスさんの所に行くよ。本を戻さないといけないからさ」
エドガーの
ロビーの外、
サクラは思い出すように考える。
「……本って言うのは……え~っと、【
エドガーの部屋や倉庫には大量の本があったらしいが、サクラは気にした事が無かった。
その本が異世界の物も
「――あ!そっか……あの時の」
完全に思い出した。サクラが《石》の世界に
「あたしの世界の……【地球】の本じゃん!」
「そう!それで、サクラの体調が戻ったらさ、僕に色々教えて欲しいんだよ。サクラの世界の事とか、言葉とか……」
エドガーは嬉しそうに言う。
「う、うん……それは別にいいけどさ、どうして【地球】の本が……この世界に?」
気になる所はそれだ。【地球】の本が、エドガーの家である【福音のマリス】にあることが異常なのだ。
「ああ、本ね。確かに……サクラの世界の本があんなにあるなんて
「ああ、なるほどね……エド君の前の……」
【召喚師】は
「……あ」
そこでサクラはハッとする。
エドガーの父、すなわちエドガーの母の
《石》の世界の出来事を思い出して、サクラはたらりと汗を流した。
(エド君のお母さん……マリスさんと会ったって、言ってもいいものなのかな……?)
そもそも信じるだろうか。
いや、エドガーならば信じそうだ。
しかし、今は。
(――いや……やめとこ……今はローザさんだよね。あたしが迷惑かけた分、今度はあたしがエド君をフォローしないと……うん。そうしよう)
エドガーの
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