12話【サクヤの誤算】
◇サクヤの
リザは時間をかけて、エドガーがいる地下室に下りてきた。
フィルヴィーネの
それはリザがフィルヴィーネに言われた事でもあるが、一言もなしに出て来たことを腹立たしく思われているなどとは、一切思っていないだろう。
「――と、言う訳よ……フィルヴィーネ様は
「うん。わざわざありがとうリザ……フィルヴィーネさんにも、お礼言わないとね」
「そうしなさい」と、エドガーの隣に腰掛けて一息
リザにとっては、この地下室まで来るのも結構
なにせ小さな身体だ、誰かの肩に
そんなリザの中では、最後に救われた
あの時、サクラと共にいたのはリザだ。
目を覚ました時に、フィルヴィーネからそれを聞かされて「後で
「……元に、戻るといいわね」
ボソッと言った小さな一言を、エドガーは聞き逃さず。
「うん」
と、優し気に答えた。
エドガーはリザと共に、古書を読んでいた。
しかし、リザにも当然この文字は読めなかった。
「さっっっっぱり分からないわ……!」
「だよね……」
「第一、フィルヴィーネ様が理解出来ない文字を、私が分かる訳がないでしょうに……」
実は、見せて見なさいと言ったのはリザなのだが。
「ちょっと!なに
「――し、してないよっ!」
しまったと、エドガーは真面目な顔を作るがもう遅い。
ポカポカとエドガーの
「い、いたっ、地味に痛いって!」
この
それを分かってか、叩くリザも、エドガーに見えない様に
そして、ポカポカと可愛らしい音を
「「……?」」
二人は、
リザの為に半開きになっていた扉は、
しかし、
――バタンッ。
「「……」」
(今の、サクヤだね)
(そうね……)
もう一度、今度はゆっくりと扉を開けたサクヤは、
「し、失礼いたします。
赤面しながらも、何事もなかったかのように進め始めた。
エドガーとリザも、
◇
「
差し出されたのは、袋だ。
女の子が
「これは……?」
「お米です。ではなく、この袋の文字をご
「……!!」
エドガーは気付く。
リザも、
「
「……う、うん……同じだ。古書の文字と」
その文字は『無』『洗』『米』。
残念ながらエドガーは、お米の本を読んでいたようだ。
そんな事に気付くこともなく、エドガーは
「そうか、じゃあ!サクヤは読めるんだねっ、この本もっ」
「――はいっ!きっとお役に立ちます!
◇
「ふあぁぁぁぁぁ~~~」と、
エドガーは
そして。
「……」
パタムと閉じられた表紙をなぞって、サクヤが言った。
「……分からない文字が多すぎました……」
「やっぱりね……
「私は最初の本を
「――ち、違うのですっ。文字の
無理とは言わない辺り、サクヤも真剣な事が分かるが。
エドガーもリザも、それは痛いほど
サクヤは
サクヤの時代からサクラの時代まで、長年の時を
サクヤの知るくずし字ではなく、現代のフォントで書かれたものなど、読み取れるには時間がかかる。
「大丈夫だよ、サクヤ。その情報だけでも、かなりありがたいんだ……」
へこむサクヤの肩を優しく叩いて、エドガーは笑う。
「……ですが、
「――姉上?」
「――!……コノハ?」
ドアの
「コノハちゃん……おはよう。サクヤを探してたのかな?」
「うん、エドお兄ちゃん。メイリンお姉さんが、ここだって」
笑顔でコノハは言う。
起きて
リザが座るソファーにトスンと座り、リザを
「うわっ……!」
しかし、その
「――あっ!
「――?」
「……?」
「……!?」
コノハが言った一言に、全員が
テーブルに置かれた一冊の本。
コノハは、それを見てシンデレラと言った。
手に取り、
誰にも読めなかった、古書を。
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