11話【行方】
◇
自室に
スゥー、ハァーっと、何度も
「……
同じベッドには、フィルヴィーネの部下である“悪魔”リザ・アスモデウスが、
「……」
フィルヴィーネは目を開ける。
フゥゥゥーっと大きく息を
「そうですか……」
それだけで、失敗だという事は当然リザにも分かる。
リザもベッドからジャンプして、自分
とてとてっと、可愛らしい人形の様に歩くリザを見送り、フィルヴィーネは汗を
「リザはエドガーの所に行ったか……」
何も言わずに出て行ったのは少々腹立たしいが、これもリザの
グググっと身体を伸ばすと、ブルンと大きな胸が
「サクラの
ここ数日、毎日のようにサクラの
《石》にも所持品にも、
「これが、ただ死んでいるだけであれば、“神”の力でどうにでも……――」
自分が、“神”として
「いや……それはいかんな、まったく。どうすれば……自分の記憶だけを無くせるのだ……」
フィルヴィーネは、サクラを見込んでいた。
ただ、少し精神的に不安定だった、という事だ。
「それが、ここまでの
一人の少女が居なくなっただけで、周辺の
異世界人達の
ローザとメルティナは、王城に行き。
特にローザは、住み込みで王女の
その合間に、王城にしかない
メルティナは連絡係だ。
サクラがいなくなったことで、【心通話】と言う能力が使えなくなった。
そしてサクヤは、記憶を失くしたサクラの世話をしている。
サクラの残った記憶が自身の妹、コノハの記憶である事もあるだろうが、
「――いいのかエドガー。バラバラだぞ……このままでは」
しかし、異世界人と《契約者》は一つだ。
特にローザとフィルヴィーネは、まともに戦えない所まで来ている。
「この世界の
フィルヴィーネは
この
「……ガブリエルがいる時点で……
ガブリエル。【四大天使】の一人で、本名をスノードロップ・ガブリエルと言う。
サクラの
彼女が、千年以上も生きていてここに居るのならば、それは関係ない。
だが、フィルヴィーネ達と同じ、過去の世界から“召喚”された存在だったならば、話しは別だ。
「不老不死である“神”の存在を感じないのも……《魔界》に
その
――世界は、一度
「――しかしだな……“神”が生まれ変わっている
ヒント。それは、【東京タワー】で感じた、
実際目にしたわけではないが、間違うはずはない。
フィルヴィーネは「うーむ」と、今度は腕組をして考え込む。最近はこの
ベッドに座り直して、目を
元“神”の“魔王”でも、考え事は
◇
エドガーは、地下の部屋(エドガーの父エドワードの部屋)で、古書を読み
「……
分厚い本の一文字すらも見逃さない様に、目を
だが、古代文字で書かれた文字は、聖王国で一般的に使われる文字、【カルン文字】ではなく、【召喚師】が使う【ルーンス文字】でもないものが多かった。
「父さんは、どこでこんな物を手に入れてたんだろう……」
「これも
エドガーの目の
最近の睡眠時間は、大体一日
それも、誰かに休めと言われなければ、寝ようとはしなかった。
「いや……そんなことを言ってたら
そう一人言って、エドガーは古書に目を通す。
本日は、この部屋から出てくることは無かった。
◇
そろりそろりと、メイリン・サザーシャークは階段を上がって行く。
実は、今し方までエドガーの様子を見ていたのだ。
「――どうであった?メイリン殿」
「全っ然休んだ
メイリンが持ってきたのは、ドア入り口に置いておいたエドガーの夕食だ、ただし前日の。
「
「多分ね。まったく、昔からそうなのよ……
弟を心配する姉のように小言を言い、メイリンは前日の食事を片付ける。
サクヤと並んで歩き、
「……」
夏前で、食材が傷みやすくなっている為だ。
そして、食材保管用の
「それは……?」
それは、小さい袋だった。
「ああ、これね。サクラが
「こ、米ではないか……そうか、そう言えばいつかそんなことを言っていたな……」
サクラが自分の世界の食べ物を食べたいと言って、
サクヤは食べていないが。
「そうそう、それ……」
フィルヴィーネが“召喚”される直前だったはずだ。
その時の残りが、まだ残っていたのだ。
「
キャンプ用の
これはサクラの物だったのだろうか、桜の花が
「そう言えば……」
「ん……?」
メイリンが、米の入った袋を見て
「この袋の文字……エドガー君が読んでた本の文字に似ているなぁって……」
「――え?」
「……へ?」
何か変な事を言ったかと、メイリンはキョトンとする。
しかしサクヤは、その言葉に意味を瞬時に理解して、米の入った袋を見る。
「この文字は……《ヒノモト》の……?」
日本で一般的に使われる、
「
「――え、ええ。似ているなぁって……」
それは、古代文字とされたこの世界の
どこから来たものか、どこで見つかったものか、いずれも不明だ。
ただ一つ分かるのは、それが【召喚師】の家系に代々残されているという事。
なにも、父エドワードが集めて来たものばかりではなく、
「よくぞ言ってくれた!メイリン殿、感謝するぞぉぉぉぉ~~……」
ローザやフィルヴィーネも読めていなかった文字。
二人に読めなければ自分が読める訳ないと、確認すらしなかった。
それは、大きな失敗だった。
メイリンとサクラのお陰で、エドガーはまた上に行けるかもしれない。
そう確信して、サクヤは米の袋を持って
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