第1部【出逢い】篇 4章のあらすじ



◇第1部【出逢い】篇 4章のあらすじ◇


《第4章【残虐ざんぎゃくの女王が求めたもの】》


 新たに加わった異世界人、メルティナ・アヴルスベイブの日常は、《契約者》であるエドガーと、前マスターの生まれ変わりであるエミリアが中心だった。

 夜中に寝室に忍び込もうとしたり、ひまがあればエミリアのもとに遊びに行ったりと、かなり自由気ままに異世界を堪能たんのうしていた。


 サクラにしかられていたメルティナは、正座が苦手で身体がしびれやすい事に気付く。

 しびれた足をさわられ、ひどく人間染みた悲鳴を上げるメルティナは、なんだか親しみやすくなったと思う面々めんめんだった。


 そして、【聖騎士】と成ったエミリアとアルベールは、新たな生活を始めていた。

 アルベールはロヴァルト家の分家の男爵として自立し、エミリアは第三王女ローマリア付きの護衛騎士として、王城に引っしていた。

 新たに【従騎士じゅうきし】と言う制度せいどもうけたため、エミリアにも部下が出来た。

 それはアルベールも同様で、共にマスケティーエット公爵家の姉妹だった。


 初仕事から数日し、エミリアは【従騎士じゅうきし】のレミーユをともなってローマリアのもとをおとずれたのだが、何か様子が変な事に気が付き、先輩騎士ノエルディアを問いただす。

 ローマリアはすでに城を抜け出しており、その影武者かげむしゃ代わりとして、知り合いである少女がいたのだ。

 なんとノエルディアの【従騎士じゅうきし】は、エドガーの妹、リエレーネだった。


 一方下町では、セイドリック・シュダイハの姉、ルーリアが、再出発をしていた。

 唯一ゆいいつとがめなしに終わったシュダイハ家の娘であったが、シュダイハ家は取りつぶしになり、ルーリアは【鑑定かんてい師】マークスの店で働くことになった。

 サクヤがその様子を見に来ており、微笑ほほえましい光景だと感じているのも束の間、メルティナが伝言を届けに来て、その内容に絶望するサクヤだった。


 昼が近付き、エドガーはふと掃除そうじ最中さいちゅうに見てはいけないものを見てしまう。

 サクラの下着をバッチリ見てしまったエドガーは、帰ってきたメルティナに暴露ばくろされて、サクラにばつを受ける。

 のぞき魔の烙印らくいんの看板を首にかけたエドガーは、メイリンにさげすまれる。

 それがばつだったのだが、思いのほかメイリンがきつかった。


 そして昼食時、サクラの世界の食べ物、牛丼を再現しようとこころみた面々めんめんだったが、各どんぶりから一種類、材料がなくなっていた。

 しかも、食堂で不審ふしんな影を見たサクラ。

 この場では何もなかったが、その後悲鳴を聞きつけた。


 地下に逃げた紫紺しこんの影を追って、先行したメルティナを追うローザとサクラ。

 エドガーはメイリンを送り届けていた。

 影は【召喚の間】で《石》のりつき、逃げまどう。

 逃げる《石》を追うローザとサクラ、メルティナは、部屋のすみに追いやると《石》は飛び出して逃げ出そうとする。

 窓を抜けて飛んだ《石》を捕まえたのは、エドガーと合流したサクヤだった。


 突然しゃべり出した《石》は、サクヤにのろいをかけたと言う。

 《石》の正体は、異世界の“魔王”フィルヴィーネだと言うのだが、のろいを解きたければ自分を“召喚”しろと無理難題むりなんだいを押し付ける、のだが。

 その【召喚師】がいることが、事の始まりだった。


 メルティナと一悶着ひともんちゃくあったローザは、逃げるように自室に戻った。

 そこで、城から抜け出してきたローマリアが訪問ほうもんし、二人で話すことに。

 エドガー達は、フィルヴィーネを“召喚”するための“魔道具”をそろえ、【召喚の間】にいたのだが、一度元の世界に帰るというフィルヴィーネを、サクラが【聖女】になりきって魔力を与えた。


 元の世界に戻ったフィルヴィーネは、久しぶりの肉体を慣らすと部下がやってくる。

 しかし、その部下であるリザ・アスモデウスは、フィルヴィーネについてくると言い出した。

 やがて“召喚”の魔法陣が足元に展開てんかいされ、フィルヴィーネは【異世界召喚】された。

 リザ・アスモデウスが、しぶとくついてくる予感をさせながら。


 “召喚”されたフィルヴィーネは、気を失っていた。

 しかし、現地の人々の視線しせんはその“魔王”様ではなく。

 小さな人形のような、リザ・アスモデウスであった。


 今にも消えてしまいそうな命に、エドガーは思うものを感じ、“悪魔”であるリザを助けようとする。

 フィルヴィーネを背負せおい、空き部屋に運ぶ。

 ローザにも説明し、協力を願う。

 以前ローザがおこなった、魔力の譲渡じょうとおこなう。

 ローザの助言のお陰で、トラブルが起こることなく譲渡じょうとを終える。


 そして、目を覚ましたフィルヴィーネとの話しの中で、ローザの世界とフィルヴィーネの世界が同じだと知る事になる。

 フィルヴィーネいわく、ローザは英雄になりそこねた【勇者】だと言う。

 更には、フィルヴィーネはその【勇者】と戦うことが目的だったのだとも言った。

 そんな中で、ローマリア王女がローザに依頼いらいを申しこむのだった。


 昼食を取る面々めんめんだったが、先程のローマリア王女からの依頼いらいで空気が悪くなっていた。

 それを自覚するローマリアが居たたまれなくなっていた所に、地下で作業をしていたメルティナが戻ってくる。

 説明を受けたメルティナは賛成する、そこにフィルヴィーネがやってきて、話しはややこしくなってしまう。

 ローザはフィルヴィーネに敵意をき出しにし、サクラとサクヤは全裸のフィルヴィーネを隠して忙しくする。


 結果、ローザがフィルヴィーネと戦うことが決まった。

 その為に、広い場所の移動が必要だったが、ローマリア王女がアイデアを出し、そこに行くこととなった。

 外に出ると、サクラとメルティナが力を合わせて大型装甲車【ランデルング】を完成させる。

 魔力と《石》により動くその車で、【ルノアース荒野】へと向かう一行いっこう

 一緒に行きたがったローマリア王女だけは、メルティナに送ってもらった。


 意外にも、ローザが操縦そうじゅうを名乗り出たことですんなりと荒野へ向かい。

 車内ではエドガーが意識を取り戻したリザと会話したり、サクヤが自分自身と葛藤かっとうり返していたが、程なくして停車。

 車中でいにったサクヤは、ローザとフィルヴィーネの模擬戦もぎせんに参加しなかった。

 ローザはすで臨戦態勢りんせんたいせいで、戦う気満々だった。


 戦いが始まり、ローザは先行して《魔法》を使って戦った。

 ローザは怒りを丸出しでフィルヴィーネに食って掛かる。

 今まで抑えていた《広範囲魔法》でフィルヴィーネを攻撃するが、フィルヴィーネは《転移てんい魔法》で回避した。

 ローザとフィルヴィーネが戦っているそんな中で、メルティナが王女を送り届けて飛来する。

 今度はメルティナとフィルヴィーネの空中戦が始まり、意外にも善戦ぜんせんするメルティナ。

 しかし、会心の一撃を与えたと思った矢先、フィルヴィーネは致命傷と思えた傷を回復する。


 一方、エドガー達はキャンプの準備をしていた。

 トラブルでびしょびしょになったサクラが、ドラム缶風呂ならぬ装甲板風呂にかり。

 その後くつろいでいると、ローザ達が戻って来た。

 食事をりながら、異世界人達とエドガーは、“召喚”の事を話し始める。

 【転体魂再てんたいごんさい】、魂をそのままに、身体を再構成さいこうせいする事象じしょうだ。


 食事を終え、完全な夜になった時間帯にもかかわらず、夜戦が始まった。

 不意と計算によってフィルヴィーネに一杯いっぱい食わせたローザは、満足そうに笑みを浮かべる。

 そして、フィルヴィーネは【紫の月】によって回復し、戦いはまだまだ続いた。


 異世界人達は、自分達の情報を共有きょうゆうし、次のステップへと歩む。

 しかし、まるで指導者しどうしゃのように振る舞うフィルヴィーネは、少女達をみちびいていく教導官きょうどうかんのようだった。

 【簡易かんいフォトンスフィア】で戦闘を観戦かんせんするサクラとサクヤ、そしてエドガーのもとに、ローザとメルティナを打ち負かしたフィルヴィーネが戻って来た。


 一日が終わり、装甲車の硬い床で眠った面々めんめんだったが。

 めずらしく早く起きていたローザと、慣れない世界で目が覚めたフィルヴィーネ。

 二人は同じ世界から来たと言う共通点を持ち、この世界のありようについて話す。

 少ししてエドガー達が起きてやってくる。

 程なくして、一日を過ごした荒野から、一行は帰路きろに就く。


 帰宅し、数日間は何もなく過ごした。

 新しい世界での生活を楽しむフィルヴィーネだったが、ある日。

 さわがしい外の様子に少々苛立いらだちを覚える。

 あわただしくエドガーが部屋をたずねてきたが、フィルヴィーネは動じなかった。


 ローマリア王女が、王女として訪問ほうもんしてきた。

 話しをする為、フィルヴィーネとリザ以外のメンバーが対応する。

 王女は、エドガーに依頼いらいを持ってきた。

 国として、王女として。


 西の国からの刺客しかく

 それを調べることが、国からの依頼いらいだった。

 エドガーはそれを了承りょうしょうし、翌日再び、【ルノアース荒野】に向かう事となった。


 サクラとローザは明日の予定を話し合う。

 エドガーはサクヤと共に、フィルヴィーネに食事を届けていた。

 フィルヴィーネは、グダグダするエドガーに、“神”の神意しんいを見せる。

 神々こうごうしいフィルヴィーネに、エドガーは魅入みいられそうになるも何とか自制する。

 許す条件じょうけんとして、フィルヴィーネは手の甲にキスをしろと言うのだ。

 しかしそんなフィルヴィーネの行動も、全てはサクヤの力を知る為だった。


 サクヤは、嫉妬しっとをしていた。

 自然と【魔眼】を使おうとし、その怒りの視線しせんをフィルヴィーネに向けていた。

 自覚のないサクヤに、フィルヴィーネは講義こうぎを始める。

 サクラも呼んで、一緒に話しを始めたが、かたられたのは、サクヤの壮絶そうぜつな過去だった。

 サクヤの過去を聞いたサクラの心は、不安、そして恐怖に押しつぶされそうになっていた。

 それが事実なら、サクラは……


 気持ちが整理できないまま、荒野に出る事となった【福音のマリス】一行いっこう

 メルティナが運転する装甲車【ランデルング】で再び荒野に着いたが、車から降りた瞬間、ローザはトラップに気付く。


 トラップに注意しつつ、エドガー達は進んでいく。

 しかし、サクラもサクヤも、どこか心ここにあらずと言う感じで、エドガー達は気を張って神経をとがらせていた。


 フィルヴィーネが、気持ちの落ち着かないサクヤを連れて転移てんいする。

 そして、二人きりになったフィルヴィーネの言葉は、サクヤを逆上させるには十分だった。

 思わぬ形とはなったが、サクヤはフィルヴィーネに斬りかかっていった。


 そして一方サクラは、ローザが話を聞いていた。

 二つの場所で、ローザとフィルヴィーネがサクラとサクヤにく言葉は、しくも同じ意味を持つものだった。

 心に入り込むような、きびしくも優しい言葉を、サクヤもサクラもが、受け入れられそうだと、そう思った時。

 地響じひびきが鳴りひびいてしまった。


 地響じひびきが鳴りやむと、現れたのは異世界の建造物、【東京タワー】だった。

 サクラの世界の建造物だと言うそれは、本来の形と多少のずれがあるらしく、エドガー達はそれを調べる事に。

 サクラとサクヤの関係は修復しゅうふくできないまま、エドガー達は急いだ。


 時を同じくして、帝国の人物達もその建造物を調べていた。

 偶然ぐうぜんにも目の前に出現したその建造物を先に目にしたのは、帝国の皇女こうじょ、エリウスだった。


 編成メンバーを決めて、エドガー達は建造物に侵入しんにゅうする。

 長い長い階段を上っていき、目的地の展望台てんぼうだいへ。

 誰かが先にいる事は承知しょうちだったエドガー達は、先制して攻撃を仕掛けた。

 エドガー、ローザ、フィルヴィーネの三人が展望台てんぼうだいに乗り込むと、待っていたのはエリウス、そして部下のレディルとカルストだった。

 エドガーとローザがエリウスと、フィルヴィーネがレディル、カルストを相手取る。


 エリウスは【薄幸はっこう法衣ほうい】によって姿を隠していたが、ローザの炎によってその姿を現す。

 青い髪を風に揺らし、エドガーとローザにかたる言葉は、【召喚師】の勧誘かんゆうだった。

 まさかの事態に混乱するも、エドガーは不穏ふおんな気持ちをぬぐえない。

 エリウスのさそいを拒否きょひすると、エドガーとローザの足元が衝撃によって大穴を開ける。

 そこから現れたのは、全身を傷だらけにしたメルティナだった。


 メルティナは、外で敵と戦っていた。

 背に翼を持つ、白銀の“天使”スノードロップ。

 圧倒的あっとうてきな実力差に、メルティナは勝てる見込みを持てなかった。

 そこで、いっそき飛ばされてエドガー達と合流しようと考えた。

 目論見もくろみは成功し、ものすごいいきおいでき飛ばされたメルティナは、《石》の力を使って鉄板てっぱんに風穴を開けた。


 エドガー達は外にも敵がいる事を知りおどろく。

 しかし、メルティナが現れたどさくさにまぎれて、エリウスも居なくなった。

 フィルヴィーネとも合流して、エドガー達は撤退てったいを開始する。


 地上では、エリウスの作戦で展望台てんぼうだいを抜け出していたリューネと、サクヤが戦っていたが、サクヤにはどうも余裕よゆうがない。

 戦闘能力は断然だんぜんサクヤが上のはずだが、動きは読まれ、攻撃は全て防がれていた。

 見守るサクラとリザは、普段と違うサクヤの様子に戸惑とまどうも、手出し無用と取り付く島もない。

 何度もリューネに斬りかかるが、感度の良いリューネは、見えずともその耳で居場所を感じ取り、サクヤの攻撃を返した。


 カウンターを受け、サクヤは柱に激突する。

 そして、上空でメルティナがスノードロップに敗れたタイミングも、ほぼ同時だった。

 くずれ落ちる鉄骨てっこつがサクヤの頭上に迫った時、サクラの中で何かがはじけ。

 さけんだ言葉は、サクヤの心の深層しんそうを揺さぶるものだった。


 寝転ぶサクヤが気が付いた時、そこには白骨はっこつの山があった。

 押しつぶされたのは自分ではないと気付いた瞬間、血の気が引いたサクヤは、必死になってさがす。

 地上に降りたエドガー達も、その事実に呆然ぼうぜんとする。

 発見したサクラは、完全に致命傷ちめいしょうだった。

 慟哭どうこくするサクヤの悲鳴は、空にむなしくひびいた。


 フィルヴィーネがいつの間にか持っていた【月のしずく】で、一命は取り留めたサクラ。

 しかし、意識が戻ることなく、エドガー達は急ぎ【福音のマリス】へと戻った。

 休む間もなく治療ちりょうをし、サクヤはサクラの眠るベッドのそばで声を掛ける。

 やがて目を覚ましたのは、サクラではない――別の人物だった。

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