191話【雑念】
◇
と言っても、その
理由は単純であり、
ローザにせよメルティナにせよフィルヴィーネにせよ、待っている事を得意としない。
特にフィルヴィーネだ。自分でも「待たされるのが嫌い」と言っていた手前、エドガーが気を利かせた。というかそうせざるを
「……《石》の反応はなしね。よし、進みましょう」
ローザは右手を胸の前に出して、《石》の
しかし、《石》の反応はなかった。
「分かった」
エドガー達は
一応の為、二日分ほどの食料と水を
ハッキリ言って、
「……」
「……」
敵が近くにいるかもしれないとローザが言っても、サクヤとサクラはぎくしゃくしたままだった。
本人達はそうは言わないかもしれないが、エドガーからすればそう見える。
この状態のパーティで戦闘を行う事は難しい。
どちらかがミスをすることも、十分考えられる。
その二人に注意しすぎて、エドガーがミスをする可能性だってなくはない。
それを
そうして結局、全員で
「メルティナ、マッピングは?」
「イエス。しています。本当は空からしたいところですが……」
メルティナが、荒野の地図を書き
空を飛び写真を
「地図もないなんて……どうやって行き来しているのかしらね。本当に……」
「イエス。同意です」
ローザとメルティナの会話に、エドガーは
フィルヴィーネは「
「……ここって」
少し歩き、開けた場所に出る。
やけに
その木材をよく見るに。
「……
「であろうな。この
「村の
「
「何もなさすぎだものね……家の
「……検索完了。この木片の
バラバラになった木材を片手に、メルティナが言う。
持った瞬間にパラパラと
「――これじゃあ
そう言いながらローザはサクヤを見る、が。
「……サクヤ。
「――へ?」
「……サクヤ、もしかしてだけど……忘れちゃった?」
エドガーが
「……あっ……――も、申し訳ありませんっっ!」
全員に向かってサクヤは土下座をする。
その姿は必死であり、自分のミスを自覚して顔を青ざめる。
「
小声で、ローザはエドガーに言う。
頭を下げ続けるサクヤも気になるが、普段こういう時にサクヤにツッコむはずのサクラの様子も気になっていた。
サクラは上の空で、どこか遠くを見ている。
「えっと……どうするも
「――そっちじゃないわよっ」
「……ぅっ!!――ご、ごめん」
バシンっ!と背中を叩かれた。
エドガーもふざけた訳ではない。本当に
「……まったく、どうするの?
「僕も思ってるよ……」
今も頭を下げ、地に
それとは正反対に、背を向け
その肩にはリザがちょこんと座っており、様子をちょくちょく教えてはくれるのだが。
首を横に振り、「
「……
「え、いや……そこまで」
しなくても、と言えればいいのだが。
荒野の夜は冷える。ローザに消えない炎を出してもらったとしても、魔力には限界がある。
「今すぐに――」
「よい。
サクヤが顔を上げて、涙目でエドガーに申し出た直後。
辺りを見渡していたフィルヴィーネが、戻って来て
「わざわざ戻らなくても
「「……」」
「む……なんだその顔は。心底意外と言いたそうな顔だな……」
その通りだった。エドガーもローザも、無言で
フィルヴィーネが
「あ、いや……ありがとうございます!助かります!」
「そ、そうね……感謝するわ」
「……では行ってくる。サクヤを借りるぞ」
「え、わたしは……一人で――」
フィルヴィーネは、サクヤがいつも巻いている赤いマフラーを
本当に一瞬で、問答無用だった。
「――なるほどね……」
ローザは、フィルヴィーネの意図が分かった。
フィルヴィーネが
話しをしろという事だ。その為に、わざわざサクヤを連れて行ったのだ。
「……本当に、変な“魔王”様ね……」
元の世界では、愛が深い
◇
装甲車【ランデルング】の入り口付近に置かれた、
キッチリと
「あやつ……【
クックックと笑みを浮かべながら、フィルヴィーネはエドガーが用意していた
以前、フィルヴィーネを“召喚”する
「――フィルヴィーネ殿!!どうしてわたしを連れ出したのですっ!わたしは一人で……」
「なんだ……?一人で――逃げ出すつもりか?」
「――っっ!!」
その言葉を聞いた瞬間。
怒りか、
だがおそらく、
それでも認めたくなくて。サクヤは
一閃の
首を切断するつもりで
「――なっ……!」
ガギン――と
反射的に差し出した右手で防がれた、サクヤからの攻撃。
「――見事だ。
半分は冗談、しかし半分は本気だ。
フィルヴィーネは素直に
自分を殺しにかかって来た
空中で一回転し、反動で着地した地面は
「――言って良い事と悪い事がある……フィルヴィーネ殿!!」
「クックック!悪い事をするのが“魔王”であろうが……それに、
「――くっ!!」
「お前が逃げるも勝手、
「――だ、黙れぇぇぇぇ!!」
全て真実。しかしその事実は、サクヤの心に突き刺さる。
怒りのままに、衝動的に。
「何にそんなに怒る所があるっ……本当のことを
と、そこにサクヤの姿はない。
「――消えた……いや、
フィルヴィーネは、足をドスンと地に突き刺す。
声が
「……くっっ」
シュッ――と、フィルヴィーネの影の中から出てくるサクヤ。
見破られる筈のない
【影移動】。
魔力を
「クックック……
「ならばこれでっ……!」
それをフィルヴィーネの足元に投げつけると、ものの見事に煙が
風が
「
フィルヴィーネは
「――なっ!?――ぐぅっ……な、
見えもしないのに、フィルヴィーネはサクヤの首を
殺意を持って近づいてきたサクヤの首を、指がめり込むほどに
衝撃で、
そこには、
ニヤリと
「何度も言わせるなよ小娘……
サクヤは、地面に叩きつけられて
【
「お
「な……なに、が……」
背中から叩き付けられたサクヤは、肺に空気が入らず上手く話せない。
「お前自身が昨日言うてたであろう……?あれだけ覚悟を持って、サクラに言葉を
それは認めざるを
昨日までは本当に何ともなかった。サクラに
サクラがどう考えるかも分かっていた。それでも覚悟を持って話した、妹の話。
【魔眼】の話をしたのが切っ掛けとは言え、自分の思っていた事を
そしてサクラがそれを気にしている事は明白で、サクヤは気に止めながらも進んでいこうと心掛けたつもりだった。
だが
「わ……わたしは……」
起き上がろうとして、フィルヴィーネに手を
引っ張られ、座る形ではあるがフィルヴィーネに顔を見せる。
「なんと
グシグシと、フィルヴィーネは自分の服でサクヤの
「……よ、よしてくれ……自分で出来る」
何なんだこの人。と、サクヤの心は少しづつ、
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