180話【乙女のように】
◇
先を歩くローザに追い付き、エドガーは後ろから声をかける。
「――ローザっ!待って!ストップ、ストップ!」
「……何?」
ローザは優し気に答え、
赤く長い髪がふわりと
「ローザ、僕も……この十日間じっくり考えたんだ。きっとローザも考えてたんだと思う。だから言わせてほしい……僕は、ローザを待つよ。もしくは追い掛けるっ!」
「……?」
笑顔を
真剣な
「――フッ、フフ……」
手を口もとに当てて、ローザは笑い出した。
先程まであんなにきょどる
そのギャップに、笑わずにはいられなかった。
「ええぇ……僕、結構真面目に言ったんだけどな……」
肩を落としへこむエドガー。
「――ああ待って、
「……え?」
ローザは笑う事を止めて、エドガーに
ぴったりと交わる
そしてローザは、エドガーに向けて。
「――置いてなんか行かないわ……もしそうなったとしても、待っててあげる。もしもキミが先に進んでも、私は必ずキミに追い付く……キミがどんなに先に進んでも、必ず」
その二人の
今にも
「ローザ……ぼ、僕は――っ!」
エドガーの
ローザの細く、しなやかな指が。
「……今はまだその時じゃないわ。私にも、
「へ?――た、戦う?ちょっと待ってローザ、僕……別に変な事言おうとしたわけじゃないんだけど!ないんだけどぉぉぉっ!!」
まるで
そんなエドガーを、ローザは
その笑顔は、まさしく少女。
◇
私の十日間は、無駄じゃなかった。
十日間、回復しない魔力を戻す事。
言う事の利かない身体を、動かせるようにすること。
それだけで、十日も掛かった。
エドガーは重度の
ローザは足りない魔力のせいで、
それを
そうして、今ようやく身体を動かせるまでに回復したのだが。
ローザは、今のエドガーの言葉を聞けただけで、それが全て
少年の言葉は、何よりも効く
私がどんなに弱くなっても。だから、私は取り戻す。
◇
とびっきりの笑顔で隣に座るローザを横目に入れて、サクラはその先に座る《契約者》の少年を
どう見ても疲れていた。どんよりとした空気を
<何があったのよ!?>
<……知らぬ>
<
<わたしは
<それはそうだけどさ……>
反対側に座るサクヤと【心通話】で確認するが、サクヤは全く頼りにならなかった。
もう一度ちらりと確認するが、エドガーは
<――いやエド君!王女様の前だよっ!!>
シャキーーン!!と、エドガーはサクラの【心通話】で背筋を伸ばす。
「お。おおっ?……エドガー殿。その……話しを始めてもいいのか……な?」
ローマリアが、急に生気を取り戻したエドガーにビクッ!と
「も、申し訳ありません。
こそこそと、お付きで来ていたレグオスが隣に立つオーデインに声を掛ける。
「だ、大丈夫なのですか?この少年……
しかし、オーデインは笑顔で言う。
「
「――い、いえ……!ただ、中々に
レグオスは、言いにくそうにしながらも一人の少女を見ながら続ける。
「……【召喚師】は
「はっはっは。それは面白いね――だが……彼女たちを見てそれが言えるのかな?」
今、目の前にいる“
「――いえ……違うと、思いました」
「そうかい。なら、そうなんだろう」
それだけは、
レグオス・イレイガルは、サクラを見て思った。
(彼女は
自分を
大変身勝手な
◇
ローマリアが
ビクッと、後ろに
(わ、私は違うのにぃ……)
(――ひっ!)
(……おっと)
「話しをするぞお前達……いい加減にせよ」
「失礼しました
「えぇ!?」
(私、こんな人の部下になったの……?)
レグオスは上司の
レイラは将来を
「さてエドガー殿、いや。【福音のマリス】
「僕……
「ああ、そうだ。王命だ……」
王命。国王からの、
「――正確には王ではなく、
「つまり第一王女ね……ローマリア」
ローマリアで無いとすれば、第一王女か第二王女。
第二王女とはまだ
実際、エドガーが渡された
「はい……ロザリーム殿。これは姉上……セルエリス・シュナ・リフベインからの王命です」
と、始まったばかりの話し合いだが、【
コンコン――と。それに反応したのはサクラ。
「あ、メイリンさんだよ……飲み物を頼んでおいたから」
「あ、お手伝いします!」
オーデインに
カチャリと開けられた扉。そこには、両手に飲み物を置いたトレーを
「――お待たせして申し訳ございません。少々準備に手間取ってしまって……」
「ごめんなさいメイリンさん、
片方のトレーを受け取り、サクラが礼を言う。
もう片方はメイリンがそのまま持って行ったため、レイラは行き場のない手をひくひくさせながら持ち場に戻った。
座る人物全員の目の前に紅茶が
コポコポと音を立てて、いい香りのする湯気を上げて
「なんともいい香りだ……国の最高級
ティーカップも茶葉も、サクラが
ローマリアがやって来て
サクラは短い間にメイリンに
サクラは、小さくフフンと鼻を鳴らす。
その様子を、レグオスだけが「
「お待たせ致しました……ローマリア様。えっと……ダージリンティーになります」
ローマリア、エドガー、ローザ、サクラ、サクヤに。
王女の後ろに
「どうぞ、騎士様方」
「ええ。どうも」
「か、感謝します」
「……ありがとうございます」
「では、失礼します」と
帰り
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