179話【望んでいたもの】
◇
外の人だかりは
人が
すると、
コンコン――。ノックされる扉に向かって、フィルヴィーネは返事をする。
「……入れ」
テーブルの上では、リザが
リザも分かっているのだ、扉の向こうにいるのがエドガーだと。
「――失礼します……あ、良かった。起きてた」
急ぎの用があるのを隠しもせず、エドガー・レオマリスは
ベットに座ったままのフィルヴィーネも、その様子に
(この様子……外の
馬車の車輪と地を
遠くの
「どうしたエドガー……
半分
その黄色い
「え、えっと……この間、この国の王女
(た……
「うむ。記憶にある……ローマリア、だったか。それが来ているのだな?」
「はい」
「で――だ、
フィルヴィーネは、関係性の浅い自分は呼ばなくてもいいのでは?と言いたいのだろう。
あったとしても、オマケ程度だろうとも思っている。その上で、エドガーに問う。
「それでも
しかしフィルヴィーネの予想に反して、エドガーは
まるでもう、答えは出ていると言わんばかりに。
「――
「ほぅ。その
「
「そうだ。
冷たく言い放つフィルヴィーネ。
それは
「そんなことなら簡単ですよ――
「……」
エドガーの言葉に、フィルヴィーネは目を見開く。
リザですら口を開けて
(仲間……?今、仲間と言ったのか?
まさかエドガーが、笑顔でそんなことを言うとは
フィルヴィーネは少しだけ混乱気味に右手で制し、左手でこめかみを押さえながら言う。
「――エドガーよ……お
フィルヴィーネの言葉を一瞬分からなそうにするも、
「こま?――こ、
その答えはとても
――だが。
(……
満たされる心の
覚えの無き感情。
――仲間。
それは、
必要なかったものだ。
数えきれない程の
それを、こんな少年に言われるとは。
それ以降の言葉など、フィルヴィーネの頭には入っていないのに。
フィルヴィーネは、その様子を笑みを浮かべながら
しかし、エドガーの後ろから来る
エドガーは気付いていない。
(む?……ロザリームか?)
部屋にやって来たのは、向かいの部屋に住む
ロザリーム・シャル・ブラストリア。同じ世界から来た
その
(……やれやれ、ようやく部屋から出て来たかと思えば……意地の悪い奴だ)
そう思いながらも、フィルヴィーネはエドガーの後ろに立つローザの言う事に
そしてエドガーは、ローザに気付かぬまま言葉を続ける。
「後は……えっと……優しい?し……
そこは
「――胸も大きいし?」
手助けするようでそうではない、
そしてそんな罠に、エドガーはあっさりと引っ掛かり。
「そう!胸も大きい……――って!ええっ!?」
突然背後からかけられた声に、エドガーは
部屋の入口に身体を
「ふふふ……やっぱり胸が好きなのね、キミは」
そんなローザにフィルヴィーネは。
「うむ。ロザリームか、
「ええ」
「――ロ、ロローザ!?ち……が、ぅ……」
何だか久しぶりに顔を見た気がするローザに、エドガーは
「だれがロロローザよ……全く。やっと体調も
ラフな格好のままだが、ローザは聞いていたらしい。
そう言えばドアを閉めていなかった。
「……ええっ!?――い、いや、でもローザはどうして?」
出会い
こんなことをしている場合ではないのだが。
「……どうして、ね……それは――こ・れ・よ!」
エドガーの言葉に、ローザは部屋の外にいる
「――ぬぁあっ!な、な、何を……」
普段から着ている和服の
気まずそうにエドガーから
「……サ、サクヤ?」
「そ。この子がね、私の部屋に入り込んで来たのよ、
「……す、
よく見れば、サクヤのポニーテールの毛先が
それだけで「ああ、焼かれそうになったんだな」と理解できた。
「それで話を聞いてみれば、ローマリアが来たらしいじゃない。引き
「……わたしもそう思って部屋に入ったのですが――まさか声をかける前に火かけに会うとは……」
「
首根っこを
どうやら初めから抜ける事だけは出来たらしい。
そしてシュン――と、ローザの手は空を切り、そのままサクヤは消えた。
「――ぇっ……!」
空を切る
そしてサクヤは【心通話】で。
<わたしは先に行くので、
エドガー、ローザ、フィルヴィーネの三人に言葉を残して。
「……ん、んんっ!……私たちもいくわよ、エドガー」
空を切った右手を
「え……う、うん」
答えるも、エドガーの
まだ、答えをフィルヴィーネから返してもらっていない。
「……仕方が無い。いいかエドガー、足音の数から考えても、
現状を考えて、初めから話し合いの場に行く気はなかった。
だが【心通話】で聞いてやるくらいはいい。そう言いたいのだ、この“魔王”様は。
「ふふふっ!――フィルヴィーネ様は、心の会話で聞いてやるといって――ぴゃっ!?」
「――言うな……この
「――ぴぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
完全に巨人に
「フィルヴィーネさん……ありがとうございます。【心通話】送りますから!」
笑顔でそう言い残して、エドガーはローザを追った。
「まったく……人間と言うものは本当に読めぬな……――仲間か……そう言ったな、あの男は」
「は……はい、フィルヴィーネ様……その、そろそろ離していただけますか……ぐ、ぐるじいのでずが」
「……仲間……仲間、か……」
何度も
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