148話【荒野へ向かう】
◇荒野へ向かう◇
“魔王”フィルヴィーネは、装甲車【ランデルング】を
その結果、北門と城壁が思いのほか小さく、この【ランデルング】が通れない事、そして荒野がありえないほどの広さだとも知った。
フィルヴィーネからすれば、ある《
それを踏まえても、エドガーの問いに『無理』だと
だが結果、エドガーの新たな能力【
そうして仕方なく、“魔王”フィルヴィーネはエドガー達に、正確には自分がローザと戦う為に力を貸すことにしたのだった。
「このままこの
フィルヴィーネは【ランデルング】を
「は、はい……」
エドガーはメルティナを
「――でも、
もう一つの座席、助手席とでも言える場所に座るサクラが、フィルヴィーネの言葉に
それはエドガーも思っていた。サクラが聞かなければ、エドガーが聞いていただろう。
「文字通りだ。コレを――
「
一番
《
それをそんな簡単にも言い放つこのフィルヴィーネに、
「《
“天使”はその“神”の
「……ほう。確かにな、《天界》や《魔界》、《人間界》を行き来するには、
ローザは脳内に【バカ天使】の顔を思い浮かべて、ほんの少しだけ感謝をした。
しかし、フィルヴィーネは続ける。
「――だが、だ。
「どれだけ
ローザは思う。この“魔王”はどれだけ自分の強さに自信を持っているのかと。
少なくとも、今の自分を
それでも、ローザは
この“魔王”フィルヴィーネに。そうしなければ、自分の
◇
エドガーとメルティナ、そしてローマリアは、【ランデルング】から降りていた。
ローマリアを送っていく為だ。
「それじゃあメルティナ。ローマリア
「イエス。城に届けた後、全速力で向かいます。フィルヴィーネに【ランデルング】の有能性を見せなければいけません。ですので飛行許可を、マスター」
まるで王女を
「……う、うん。なるべく見られないようにね……?」
「イエス、マスター。
「名残惜しいけど……私も帰らねばならないのね。非常に残念だわ……」
ローマリア王女は、しゃがみ込みながら地面に指で文字を書いていた。
非常に分かりやすくいじけていて、少し申し訳なくなる。
「
「――本当!?」
「え、ええ。
ぎこちなくも笑いかけるエドガーに、ローマリアは喜ぶ。
が。その時が来てしまった。
「ではプリンセス。
「――え、あ!ちょ……まだ話は……あっ!!」
メルティナはローマリアを
「ではマスター。行ってまいります」
「ちょっ、もう少しゆっくり――あ!!――あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
背中の《石》を
あっと言う間に上空に舞い上がって、メルティナはそのまま王城方面に向かっていった。
王女の悲鳴を完全に無視して。
◇
メルティナを見送ったエドガーのもとに、ローザやフィルヴィーネ達全員が【ランデルング】から下車してくる。
「あれ、どうしたの?」
「……
答えたのはサクラだったが、何だかとても疲れているように見える。
もしかして、何かあったのだろうか。
「……やるなら早くしなさいよ。“魔王”なんでしょ?」
「
「――はぁ?」
「――んん?なんだ?今ここでやるか?」
「もぉぉぉぉ!またそうやって
ローザとフィルヴィーネの関係性は、どうやら
サクラも、きっとエドガーのいない時は
「フィルヴィーネさん、よろしくお願いしますね……――ローザもさ、戦う本番前に無駄に
「……」
ローザは無言だったが、それ以上フィルヴィーネに突っかかることはなかった。
背を向けてサクラと話をし始めている。エドガーの言葉が、やはり一番効果があるようだ。
「……はぁ、仕方が無いな。
「ありがとうございます、フィルヴィーネさん」
そのフィルヴィーネの言葉に、ローザは小さく
「――北の門、その前でよいな?」
「はい。でも……どうして?」
フィルヴィーネの言う
「
「確かに、そうですよね……」
フィルヴィーネにどういう
「それじゃあ北門の外まで、お願いします……その後は、ローザが操作するってことでいいんだよ、ね?」
「そだね」
「ええ、そうよ」
「わたしも参加したかったです……
「うん……つ、次ね?」
エドガーの隣にこそっと来て、ひっそりと告げた。
エドガーも次の機会を与えること約束したが、サクヤに何をさせる気なのか。
「では《転移魔法》を展開する――【
フィルヴィーネは、自身の武具である
すると、フィルヴィーネの手には、竜をあしらった
「……それは!まさか……!」
ローザが
この
元は【紫月の神ニイフ】の所持品だと、ローザは【
この《神器》のおかげで、“天使”達は《転移魔法》が使えるのだと。
まさかそれが、目の前に出てくるとは。
「――【
「知っているも何も、それは秘宝中の秘宝のはず……どうして“
ローザは、あれ程呼ばれたくないと言っていたあだ名で呼ばれたことをスルーする程、
「どうしてと言われてもな……これは
「は……――はぁ!?」
意味が分からなかった。
だがしかし、分かることもある。
それは、《
つまりフィルヴィーネが【
隠す事無く、フィルヴィーネは自分の事を話した。そもそも【
「
「か、“神”様っ……?この
「おい小娘、せめて言葉を選ぶがよい……」
サクラも理解して
それを言ったらローザも当てはまってしまうが。
「あ、すみません」
「あとそっちの小娘もだ。何をしている」
サクヤは、フィルヴィーネに土下座、と言うより
「ははー」と、
「しかし、へるびいね殿、いやへるびいね様は……」
「ちぃと待て、なんだそのヘルビイネというのは……誰の事だ!」
サクヤは相変わらず横文字に弱い。
「やや!申し訳ございませぬ!へる……びぃね、様?ははー!」
「……いや、まぁいい……好きにせよ。それよりも、行くのだろう?」
「……え?」
「あれ!?」
「いつの間に……」
フィルヴィーネはサクヤとの会話を投げた。
しかしそんなことを言っている間に、【ランデルング】は
「準備完了だ……ま、北門までは向かわねばならぬがな」
フィルヴィーネは《
「凄い……本当に、“神”様みたいだ」
「
ローザが
それを嫌がったのか、フィルヴィーネはエドガーに言う。【
「……うん。本当みたいだ……紋章は何にも反応しないよ」
(なんだろう……さっきよりも右手が熱い……紋章、かな?)
「そ、そんな……」
エドガーの言葉だけは信じられるローザ。あからさまにショックを受けていた。
「さて、向かうぞ。そのなんとか荒野に」
こうしてようやくエドガー達
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