142話【ブーメラン】
◇ブーメラン◇
歩いている間、サクラとサクヤの二人が、大事な所を隠す
「――お願いだから服着てぇ!」
「
「――なぁんで上からぁっ!?」
ローザの正面という事は、実は僕の
それは、ローザから無言の
――ああ、嫌な予感が。
「お~お~。
「……その名前は止めてくれないかしら。
「ん?
ローザは、フィルヴィーネさんが自分を【
僕達はまだ知らぬことだが、【
赤い髪を
その
まさか《魔界》にまで知れ渡っていたとは、ローザも思っていなかったと後に聞いた。
「いいから止めて。嫌いなの」
「ほほう、それなら……――
「――ちっ!!」
「……ほっ」
一瞬で持っていたパンを投げ、見えない速さで飛ぶパン。
ヒュー―――ン!がぼっっ!!
「――!!――もがっ!?」
しかしフィルヴィーネさんは軽く
「【忍者】ぁぁぁ!?」
スットーーンと、綺麗に後ろに倒れたサクヤをサクラが
だから、これは二人共がふざけていると
僕は二人を
「むが……むむ……がくっ」
「死ぬなぁぁ!に、【忍者】ぁぁ!!」
パンを
サクラは悲痛に
悪ノリを続けるサクラに、メルティナが脳天にチョップをする――バシッと。
「……ふざけている場合ではありません。サクラ」
「ってて……わ、分かってるわよ」
片目を
分かっているならやめてほしかった。
「……どうするつもりでしょうか。あの二人は」
メルティナの言葉に、サクラは真剣な顔で返す。
「あたしは取り
僕もだよ。どこ見ていいか分からないからね。
――いや、見てないよ?ローザが
「――エドガー。聞きなさい」
「え、あ。う、うんっ……何?」
フィルヴィーネを
意表を突かれて変な声を出した僕は、ローザを見る。
「お願いがあるわ……戦える場所を用意して」
「――え、ええっ!?」
戦える場所。まさかフィルヴィーネと戦うつもりなのか、ローザは。
「ローザさん!ど、どうしたの、急に」
「ローザ。落ち着いてください」
「そうだよ!なんで戦いなんて……」
サクラ、メルティナがローザを止める。
僕も当然そんなのおかしいと思ってるから、止める。けどローザは。
「この
全裸のフィルヴィーネを
え、ちょっと待って。ローザの今の言葉、かなりブーメランじゃないかな?
「ローザさんだけは言えないでしょ、全裸の人を
僕が言う事を
ツッコミ
そのツッコミに、一瞬だけローザの片眉がつり上がった。
どうやら、自覚はあったのかな。僕は思ってないよ?本当に。
「と、とにかく……戦える場所、それも
「……でも、広く戦える場所なんて……僕には心当たりないよ?」
僕だけじゃなく、この【王都リドチュア】に生まれた今の若い人は、王都から出たことがない人が大多数を
それはこの王都が、下町と貴族街、合わせて10区画の街が合わさった大都市だからだ。
下町の一区画から六区画までだけで大抵の物は
無駄に広いこの王都を、出る理由がなかった。
しかし、武力に関する
騎士学校【ナイトハート】ですら、
つまり、ローザが求める“広くて戦える場所”など、王都内には無いんだ。
「――そう。なら……ローマリア、
「――えっ!?」
ここは出番ではないな。
「わ、私ですか……?」
「そう。
確かに、ローマリア
国の地理を知っているのは当然なのだろうが、この王女さまは、最近まで公務を一切してこなかった事情があるから、王都外の事など知らないのでは?
「え、えーっと……しょ、少々お待ちくださいね……?」
やっぱり。
必死に
申し訳ありません、
「「……」」
ああ、ローザとフィルヴィーネさんが
ローザは完全にフィルヴィーネさんを
「――あっ!そうか、そうだわっ!」
大変嬉しそうにはしゃぐ。ピョンピョン
――子供の様だ。
「ローザのご
なんだか最初から知ってましたみたいに言うけど。
「あら。じゃあ聞きましょうか、ローマリア王女」
笑顔で言うけどローザ、
「……【
それは僕も知っている。最低限、下町民はここで冷水を
冷たく
貴族街には、王城の“魔道具”から
しかしその
「【ルド川】のさらに北東に、何年も何年も
「荒野ね。
燃えるものがない。確かに、ローザには
僕は、問題を口にする
「しかし
僕達下町の住人は、朝早くに【ルド川】に水を
今はこの人数だし、【
しかも馬はレンタルだ。
「そ、そうね……そう言われればそうかも。う~ん……そうなると……」
ローマリア王女が、また考えてくれているが。
「――マスター、ワタシが運びましょうか?」
メルティナが言い出してくれたけど、それもあまり良くない。
ローザとフィルヴィーネだけを運ぶ訳にはいかないからね。
【異世界人達】は、《契約者》の僕がいないと力が弱まるらしいし、
長い
「いや、メルティナには……
そう。ローマリア王女
「……む~」
いやいや
「まさか、ついていく気だったんですか……?」
「――!……だ、ダメなの!?」
「――
「そうね。
ダメですよ。僕が
【聖騎士】の誰かがいてくれれば、少しは可能性もあったかもしれないけどさ。
「……メル。確か……なんか作り出せるよね」
今まで
もしかして、何か思い当たるのかな。
「【
メルティナの武器とかを作り出してた、あの金属の輪っかの事かな。
「そう!それ!……それで、作れないかな?……車。……
自動車?馬車とは違うんだろうな、サクラが言うんだ。
きっと、異世界の乗り物だ。
「――そういう事ですか。確かに、作れはするでしょう……ですが、ワタシの世界に……自動車は存在しませんでした。ワタシ達が運用していたものは宇宙船ですから」
「ん~。なら、あたしから情報抜けない?この《石》からさ」
「……成程。やってみる
「……なんだか、サクラとメルティナで話が進んでいるけれど、これは行けるってことでいいのかしら?」
ローザは僕を見る。
「……た、多分ね」
こうして、ローザとフィルヴィーネさんが戦うという話が、ドンドンドンドン広がっていったんだ。
でも、異世界の乗り物、自動車は正直楽しみだし、【ルド川】北東の荒野。
そこに行けるかもしれないって言う
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