133話【共通点】
◇共通点◇
「イメージ。イメージ。イメージか……」
サクラは目を
イメージするのは、ゲームのキャラクターだった。
元の世界で、もうすぐ発売される筈だったゲーム。その登場キャラクターが、【聖女】と呼ばれるヒロインの女性。
以前から雑誌で面白そうと思っていたのだが、結局どうなったのだろうか。
「……って違う違う、
「――集中してください」
メルティナに
「……わ、分かってるよ」
【聖女】は【勇者】と一緒に旅をする。
その道中で恋に落ちて、二人は逃げるように戦いからドロップアウト。
しかし
そんなところから話がスタートする。だったはず。
「――サクラ。話がズレています」
「ごめん~……だってやりたかったんだもん!!【ドラゴニック・ファイナル】!」
口惜しそうに、元の世界での後悔を言葉にする。
その言葉に一番
耳に聞こえないほど
「――今、なんと?……い、いえ……しかしそれどころでは……」
サクラの口から出たまさかの言葉。
それは、メルティナの前マスターが遊んでいたゲームのタイトルだった。
不意のワードに
だが、絶対に聞き出さなければならない。
メルティナの世界と、サクラの世界は完全に別物だと想定していたが、意外なところで
全く同じタイトルなだけの可能性もあるが、メルティナの知る【ドラゴニック・ファイナル】にも、【聖女】は存在していたはずだ。
もう
「サクラ。この話はいずれ落ち着いたらゆっくりすることにしましょう……今は、集中を」
「……」
「――?」
サクラは、メルティナが少し思考をずらしている一瞬で集中していた。
スーッと息を吸い、ハーッと
「……エドガー様、わたくしの準備はよろしいですよ。フィルヴィーネ様、よろしくお願いいたしますね」
『……エドガーヨ、我ニハ別人ニシカ見エヌノダガ……?』
「……ははは……そうですね、始めましょうか」
エドガーとフィルヴィーネが声を
サクラの変わりっぷりに
そんな中、メルティナが【
「……どうやら成功のようです……魔力が
魔力(MP)1500。これは、メルティナの約三倍、ローザをも
『……ソノヨウダナ、物凄イ
にこやかに笑みを向けるサクラを見て、フィルヴィーネの声は
どうやら、異世界の魔王でも
◇
準備は簡単だった。サクヤが、
つまり通訳時と何ら変わらない。ただそこから、フィルヴィーネが《石》を
『デハ始メルゾ……良イナ?小娘、頼ム』
「ええ、いつでもどうぞ。フィルヴィーネ様……サクヤ様も、始めますよ?」
「あ、ああ……承知してい……ます」
小娘と呼ばれた二人、サクヤとサクラは向き合って息を
「――ゆ、ゆくぞ、サクラ」
「ええ、いつでもどうぞ……サクヤ様」
「……」
エドガーは、(分かるよ。気持ち悪いんでしょ?)と、
苦笑いを抑えて、エドガーはサクヤの背に手を
「さ、今はとにかく進めよう。苦情は、サクラが元に戻ったらね」
「――は、はい」
サクラの
ゆっくりと、
チリチリと、通訳の為に
(こ、この感覚……先程とは全然違う、これではまるで――本当に別人だ……本当に、お前なのか?)
【朝日の
同じ
エドガーやメルティナは安心して見守っているが。
どうも信用できないサクラの力。もし、このままサクラが戻らなかったら――と、どうしても考えてしまう。
「――サクヤ様?……早くしてください。時間が惜しいですわ。それとも、怖いのですか?」
「――
(誰のせいだと思っておるのだ……この
【聖女】になりきっても、どことなくサクヤにアタリがきついサクラに、少しだけ安心してしまう。
「――ゆくぞっ!」
【朝日の
『――オオッ!!何トモ
光を放つ二つの《石》の
そんなエドガーを横目で見るメルティナは、少し
「サクラの魔力(MP)が大幅に減少しています。このままでは、“
『安心セイ……モウ
「――は、はいっ、絶対に……!」
『良イ返事ダ!デハ、マタ逢オウ――』
ィィィィン――と光は収まっていき、ゆっくりとサクラが身体を
「おっと!――サクラ!!」
倒れかけたサクラを、サクヤが
メルティナとエドガーも
「……お疲れ様、サクラ」
眠る様に、と言うか本当に寝ているが。
“
「大噓ではないですか」
「は、はは……」
フィルヴィーネは大丈夫だと言っていたが、どうやらギリギリまで魔力を吸収したようだ。
でもそのお陰で、フィルヴィーネは元の世界に帰れた――のか?
「サクヤ。もう一度【朝日の
眠っているサクラには悪いが、確認をしなければ。
「はい、
サクヤは、もう何度目かのサクラの
「フィルヴィーネさん」
返事は無い。
エドガーとメルティナは
「サクヤもういいよ。ありがとう……サクラを少し離れた場所に運ぶから、手伝ってくれるかな」
こうして、異世界の魔王は元の世界に帰った。
この
まさか、この王都を出てまでの事に発展するとは、誰も思いもよらずに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます