124話【紫紺の陽炎】
◇
昼食は、ようやくサクラに
メイリンが持ってきたのは、人数分の
エドガーもローザも、
メルティナだけはこれが何だか分かっているようだが、サクラほど
この料理に一番
「あ~これこれ!
メイリンにこれをオーダーした
どれも茶色く
サクラは目を
――【地球】の食材を。
牛肉はこの世界にもある。
だが、糸こんにゃくと
サクラはどうしても、どうしても食べたかった。
しかし、サクラとて理解し始めている。
食材を、魔力を
サクラ以外の人は、食べれば
なにせ自分の出した魔力を、体内に戻しているだけなのだから。
しかし、それほどの事をしてでも、恋しかった。自分の世界の味が。
「あとは~、この
身体ごとフリフリしてノリノリだったサクラが、
エドガー達は、一気にテンションをガラッと変えたサクラが見ている先。
食堂の西側、ロビーの階段に近い扉を、全員つられて見た。
「……サクラ?」
「どうかしましたか?」
「どうしたのよ急に……?」
サクラは、何かいけないものを見てしまったかのような顔をしていた。
だが、エドガー達が見ても何もないし、何者かの
ローザですら、何もないわよと《石》を確認していた。
「い、いや~……気のせいかな。誰かに見られてた気がしたんだけど……あはは」
そう言った
「あぁぁぁぁっ!!」
「あ~あ。
この【トルジョ鳥】の
もう一つは、作ってくれたメイリンに食べてもらいたいとサクラが言い出している。
サクラが持っていた
「――あたし……
「……え?――あ、あれ……僕の皿……肉がない!」
サクラの言葉も気になったが、エドガーの
それに合わせて、ローザとメルティナも
するとローザが、
「……私のは、お米?が無いわね……」
「ワタシは、
これまでバラバラに足りないものがあるだろうか。そうなると、作った
そもそもメイリンが、
「私のも……【
メイリンの
サクラが持つ、割られた可能性がある
「――え、ちょっとやめてよ怖いっ!!」
ドーム状になった
――ロビーの階段の
あの後、結局ローザやメルティナが《石》の力まで使って調べたが、【福音のマリス】自体に何らかの
ただ
それこそ「
わざわざ【心通話】で確認したのだから、間違いはない。
「――おかしいと思いませんっ!?」
「……何がよ」
二階の休憩スペースのソファーで休むローザに、サクラが詰め
食材が無くなったことに一番
「だって材料だけですよ?それも一種類ずつ、合わせたら牛丼食べられるんですから」
「……サクラは何ともなく食べられたはずだけれど?」
「いや
サクラは、
ただ、牛丼自体に
米が無くなったローザからしてみれば、何が不満なのかと言いたくなるレベルで不満を
「あたしだって、『ふふんふ牛丼♪』とか言って
これから、食材消失
ローザは、面倒くさそうなものに絡まれたように言う。
「……それは別にいいけれど、私の【
サクラの
しかし「はぁ……」とため息を
「……そ、そんなに食べたかったですか?……牛丼」
「……――別に」
どうやら食べたかったらしい。
「……で、どうするの?……サクラ」
サクラは答えない。
耳を
「……今、何か聞こえませんでした?」
「いいえ。私には――」
「ほらまたっ!!」
ローザの《石》には何の反応も、
「サクラ、今日の
「だ、だって!今聞こえて……ほ、ほら~!また!」
「――きゃあああああああああああ!!」
「「……」」
「ね?」
「ね?じゃない……私にも聞こえたわよ。今のメイリンでしょう」
「絶対そうだと思います」
今の
いや、しかし今朝、物凄い人間らしい声を出していた気もするが。
◇
二人は二階の階段から降りると、
それはそうだ、聞こえない方がおかしいくらいの
「一階の客室……もしくは大浴場の方だよっ」
そして地下に
三人は
直ぐに廊下に出て、大浴場に向かう。
――そして。
「――いたっ!メイリンさん!!」
「エ、エドガーくぅぅぅん!」
メイリンは大浴場の手前、地下の
赤子の様に、はいはいでにじり寄って、エドガーに抱きつく。
「――わっ!っと……メイリンさん、何があったんですか?」
「か、影が……黒っていうか、紫っていうか……と、とにかく何かいたの!!地下に、メルが追いかけていって……」
「メルティナが?」
「あの子、勝手に……」
「なんか、センサーがどうとか、反応がどうとか言ってたけど、全然わからなかったぁ!」
異世界人のメルティナの言葉に、メイリンは
「ローザ、《石》は……?」
「
「――え?」
エドガーとローザの会話に、サクラは
「サクラ……もしかして、何か感じるのかい?」
「――え、なんで?」
「なんでって……
「へ?」
サクラの
“魔道具”【朝日の
「もう少し《石》の使い方を教えておくべきだったかもしれないわね……」
ローザは、サクラの
熱を
「……何もない
「色……?」
言われるままに、サクラは目を
エドガーは、やきもきしている。メルティナを心配しているのだろう。
「……何もない空間を、そうね。三層作りなさい。ここは二階と地下でしょう?」
「……はい。出来ました……あ、色……」
サクラは心の中で、マス目の紙を三枚用意した。
すると
一枚目の紙には何もない。これはきっと二階を表しているのだ。
二枚目には、真っ赤に燃える、太陽の様な赤。
それと並ぶように白く輝く、
三枚目の地下を表す紙には、春の風の
「分かる?私が送ってる
「……はい、赤と白が隣り合って、黒も遠くに……それで、緑が、下の層に……あります」
「これが簡単な《石》の反応よ。自分でも感じてみなさい……この宿には、
エドガーは「別に余ってるわけじゃないけど」と、
「……」
「どう?
「
大切なコレクションを
「うぅ……頭痛い。でも……これが、《石》の力……?」
「そうよ。
【朝日の
その効能は、“多機能”だという事だけが分かっている。
【心通話】は、その一部だけだ。
「あたしの……力。あ、光が……これって……
サクラは
見えたのだ。この宿に、もう一つ大きな《石》の反応があることに。
ローザとメルティナが見抜けなかった《石》を、サクラは
「――場所は!?」
「地下です!多分、【召喚の間】!」
「行くわよっ」
「はいっ!!」
「え――……あれ、僕は……?」
エドガーを置いて、ローザとサクラは
ポツンと置いていかれた、そんなエドガーの肩を、メイリンは優しく叩いてくれた。
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