117話【禁呪の緑石】
◇
身体をバラバラにさせたセイドリック・シュダイハは、死を
エドガーの新たな
その肉の塊は分解され、ひたひたと大理石を
「……」
無言のまま、
「……エ……エド……」
エドガーに人を――殺させてしまった。
エミリアの
この二つが、同時にのしかかってくるようだった。
「――ノー。彼は
メルティナは言う。
しかしメルティナ自身、人を殺したことはない。
メルティナは【
そんなメルティナが、エドガーの気持ちが分かるのかと言われれば、答えはノー。
【機動兵装ランデルング】の
それでも、殺人の
何度も、何度も
人間だったら、耳に
マスター――ティーナ・アヴルスベイブによって。
「エドガー・レオマリスの
「メルティナさん……」
どこか
「そろそろ降りましょう……戦いも
メルティナの
エドガーがセイドリックと戦い、ローザがアルベールを援護している間、
「――ルオォォォォォォン!!」
「……!!」
ナルザを一撃で
「エドガー!よくや――いえ……まだ終わっていないわよっ……」
一度は
ローザは、頭を
「――分かってる。ありがとう、ローザ……」
今この場にいるメンバーの中で、
ロザリーム・シャル・ブラストリア。
ローザは、エドガーを
初めて人を
「……倒そう、あの“悪魔”を」
エドガーはローザを一度だけ向き、“悪魔”を
「ええ、そうね……」
二人が向き合うのは、主人を
◇
“悪魔”と化したフェルドス・コグモフの
しかし、
セイドリックだったものを見ても、涙すら流すことは出来ず、ただ
目に
殺したのは、【召喚師】エドガー・レオマリス。それだけは確実だった。
だから、フェルドス・コグモフ――バフォメットは
「ルブオォォォォォォ!!」
その
はたまた怒りの
自分の対戦相手であり、恐ろしく強く感じた“不遇”職業――【召喚師】。
バフォメットは、それを殺すと決めた。絶対に生かしてはおかないと。
「――ブルォォォォォ!!ルォォォッ!!」
「……来るわよエドガー!
「分かった!」
ローザとエドガーは、二人離れてバフォメットを
だが、バフォメットにはエドガーしか見えていない。
ローザに目もくれず、バフォメットは
「――ちっ!エドガーの方に……!!」
先程までは自分と戦っていた
感が
ブーツがキィィィ!と音を鳴らして、ブレーキ
「――来るならこいっ!」
エドガーは、新たに
<――コロシテヤルゾッ!――>
「――なっ!何だっ――声!?」
拳を
「!!」
バフォメットの右腕に
「――ぐっ!――ああぁぁぁっ!!」
バフォメットの大きな拳は、当然力の入らなくなったエドガーを
――ガッシャーーーン!!と、エドガーは誰もいなくなった
「……ぅ……ぐ、ってぇぇ……」
仲間達の声が聞こえる。ローザも
アルベールとメイリンですら、危険を
そして――
「――エドぉぉぉ!!」
上空から
「……え?」
聞こえた大事な幼馴染、エミリアの声に、エドガーは辺りを
しかしいない。すると、それが見えていたらしいサクヤが
「――あ、
そして
「あ、あんたねぇ……うぷっ……!」
しかし、二人共もう何も出ないようだった。
「あ――……う、上!?」
――ギリギリだった。
「――う、うわっ!!――エミリアっ!?……っっとぉ!」
ガシッと、エドガーはエミリアを
しかし、上空から降ってきた人物を何もなしに受け止められるほど、
「うっ――ぐっ!!」
「――きゃあっ!」
ザクッ!と何かが背中に刺さった気がしたが、今は気にしている場合ではない。
「エド!エド!!大丈夫!?」
「エ、エミリア……良かった、傷は大丈夫みたいだね……」
「う、うん!エド……は?」
むしろ今が痛いとは言えず。
「へ、平気だよ。さ、“悪魔”が来る……エミリアは――」
エドガーはバフォメットを見る。
どうやらローザがバフォメットを引き付けてくれていたようだが、力を増したバフォメットの
「ううん、私も戦う!……戦わなきゃっ!」
そう言って、エミリアは先程自分がやられた場所に向かう。
落ちている槍を
「――ちょっ!エミリア……い、いや……言っても無駄か……」
言っても
だから今度は、今度こそは、この
◇
「――コイツっ……さっきよりも速い!それに……
両手に持った大剣で、
バフォメットは、
本来、《石》の
「ローザ!!ごめん……カバーありがとう!」
エドガーが合流する。
しかしバフォメットはそれを見て「ルオォォ!」と
「――やっぱり、僕を
「
バフォメットの
「……
「――ありがとう……ローザ」
横目で見るエドガーは、何かいつもと違う風に見えた。
やはり、
「当然でしょう……私は、キミと契約したのだから」
契約の異世界人、ローザはそれを
理解していてもグロッキーな二人もいるが。
「――それは、
「!?」
「メルティナ……」
もう一人の異世界人、メルティナが上空からゆっくりと降りてくる。
背中と脚のブースターを
「メルティナ……さん」
「メルティナで構いません……もしくはメルと」
上空からエミリアが
どうやら手に持つ
「――戦ってくれるようね、メルティナ」
ローザが言う。コクリと
――いきなりだ。
「――ルオッ!ル!ルオォォ!」
三発
残りの七発は黒い翼で
「コンプリート。全ての情報を
「……い、いきなり攻撃する?」
エドガーの
「あのモンスターは、完全なる
「そうね。確かにその通りだわ」
メルティナの意見に、ローザが
そして、コンプリートとは?
「……モンスター……
いきなりペラペラ話し出したメルティナ。
しかし、エドガーも気付く。
「……それって、もしかして“悪魔”の
分からない
「そうみたいね……分からない
ローザにも分からないらしい。
どうやら、異世界人同士であろうとも、全ての言葉が
「――ルオォォ!ルオォォ!!」
「あら、怒っているわよ?さて、エドガーにかしら、それとも
「
エドガーは「だ、だよね」と言うが、攻撃したのはメルティナなのに、と内心思った事だろう。
そんなエドガー達を
「――飛んだ!?……いや、
「このっ」
「
ローザの炎弾、メルティナの
その場所は、槍を取りに向かったエミリアの頭上を
――セイドリックの
「な!なんであそこにぃっ!?」
エミリアは、急いでエドガー達のもとに合流する。しかし、そんなに急がなくても大丈夫だった。
「……くっ」
「……」
「……うぅっ」
「……食べているわね……
サクラとメイリンは見ない方がいい。絶対に。と、それを理解しているのか、アルベールがメイリンを、サクヤがサクラを目隠ししていた。
「なんで……セイドリックを」
「ルオォォ!」と泣き
「泣いてるの……?」
「そう、だね……そう見える」
バフォメットの、フェルドス・コグモフの
“悪魔”は泣いていた。
「ルブオォォォォォォ!!」
ズシン――と、
ズシン――ズシン――と、一歩一歩エドガー達に近づくバフォメットは、
しかし、エドガーには
「――《石》の力が……
「ちっ……やはり、そういうことね……」
メルティナの言う事に、ローザだけが理解できた。
《石》の本体はバフォメットの体内だ、しかし、《石》の本来の
「つまり……
エドガーとエミリアは、嫌な
その結果。
「……そう言っても構わないわね……残念ながら……」
想像はつく。強くなるのだ、“悪魔”が。
本来の“悪魔”の《石》の力を
「――来る!!」
「ルゴゥ!!」
バフォメットの飛び出しは速かった。
エドガー達の攻撃の間をすり抜け、ローザを左腕で殴る。
「――ルゴォォォ!!」
「くっ……」
ガギン!と、防ぎながらも
二本の大剣で防いだが、パワーアップした
「……このっ――なっ!?」
ローザは、地面にくっついていた。
文字通り、剣ごとバフォメットの
「“悪魔”の
銀の翼を広げ
「――ぐ、油断した……!」
知識としては知っていたはずなのに、右腕ばかりに気を取られていた。
「ローザ!待ってて!――うわっ!!あぶっ……」
エミリアが、槍の炎で
「こっちだ――“悪魔”ぁ!」
「うおぉぉっ!!」
剣を合体させて大剣にし、
剣の熱は、
「くそっ……剣が!!」
離れるエドガーに、バフォメットは追撃したが、上空から援護される
「――すみません!メルティナ」
「
ハッとした。今――何を言おうとした?
自分は今、
「そんな……
メルティナは加速し、バフォメットを攻撃する。
上空から【エリミネートライフル】を
「すごっ!」
ミサイルの爆発に、バフォメットは「ゴォォォ!」と
「違う……違います……
無防備だったメルティナはそれに巻きつかれる。
それは、バフォメットの――腕だった。
「――の、伸びたぁ!?」
「くそっ、メルティナ!」
エミリアは
エドガーも、体勢を
「――し、心配はありません……これくらい、
メルティナは、全身近くに巻きつかれてなお、
だがそれは、《石》だけは
「な……
メキメキと音を鳴らすメルティナの
巻きついてきた腕は、右腕だ。
「――メルっ!!」
「メルティナ!」
「――
エミリアの協力でようやく
「【
バフォメットの右腕付近、メルティナの目の前に作られた火種は、キィィィィン――と音をさせて、
物凄い爆発だったが、
だが、バフォメットの右腕から
ヒュルヒュルと
どうやら、ローザの言葉通りに
「……ぐっ……!」
(……魔力が……キツイっ)
「ローザ!?」
「私はいいからっ……行きなさいっ!」
魔力不足で倒れるローザを心配するエドガーだが、ローザが
「……くっ――分かった!!」
「――メル!!」
エドガーとエミリアは
落下地点へ、一直線に。
受け止めたのは、早く着いたエミリア。
しかし、その
「ぐっ……受け止められな――」
後ろは、バフォメットが突っ込んだ騎士学校の外壁。
――
「……だめ、ぶつか――」
ドシャッ――!!と、
「……。……え?――エド!?」
ぶつかったのは、二人を受け止めたエドガーだった。
追い付き、後ろに回って二人を
その背は、
「……どう、して……
メルティナは、
だが、そんなメルティナに、傷を負ったエドガーは言う。
「……決まってるじゃないか……君が、僕達の仲間で……エミリアの……
その一言で、メルティナの意識は
『――友達になろうよ――』
『なりましょう……友達に……』
呼び起される、マスターの記憶。
この世界に来る直前、自分が自爆する直前に聞いた、ティーナ・アヴルスベイブの言葉。
――その最後の言葉を。
『ねぇメル。私は、
「――あ……ああ、ああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「メ、メル……!?」
頭を
メルティナの機械的
マスターと言う
当時、メルティナは理解できていなかった。
優れた《AI》の知能でも、分からなかった。
理解していないまま、友達と言う言葉だけを
人工知能【
【
惑星【リヴァシウス】で
たったの一つだけ、完全なる原石のまま
その《石》は、メルティナの“召喚”の
しかしその《石》の
だけどもう、そんな事は関係無かった。
理解した。友達と言う言葉を。
メルティナは上空を見上げて、止まってしまっていた
それは、人工知能【
異世界人――メルティナ・アヴルスベイブとして。
「――
――
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