112話【決闘~二回戦~】
◇決闘~二回戦~◇
『
ぺしりろわざとらしく
『気を取り直してぇ!シュダイハ家の第二選手ぅ!!カリーーーナ・オベルーーーシアーーー!!』
「「「「わあぁぁぁ!」」」」と会場は
ソイドのわざとらしいマイクパフォーマンスも受け、先程までのブーイングも
エミリア達にとってはありがたい事だ。が。
(――はっ?)
入場前のサクラの
次に名を呼ばれるサクラが、非常に機嫌悪そうな顔でこちらを見ていたのだ。
【心通話】が使えないエミリアでも、サクラが言わんとしている事を理解できてしまう。
(――ねぇ、今の面白い?あたし
(……ごめん)
取り
戦いが終わったら、十分
◇
選手紹介を受けて、カリーナ・オベルシアが
後ろはガラ空きで背中が丸見えになっている、腕と
他には
その
それだけ
カリーナが舞台の中心に来たことを確認し、ソイドは声を上げる。
『続きましてぇぇ!東側ぁぁ!ロヴァルト家の第二選手の入場でぇぇす!
戦いの前に事前に出場者を
(変な事言われなくてよかったぁ……)
事前に情報を
それを
「――サクラっ!!」
(……エド君、ローザさん……間に合ったんだね。あたしの出番の前にいなくなるとは思わなかったけど)
【心通話】にこの
この二人が
「え……っと」
振り返るサクラに、エドガーは言葉を
先ほど声を掛ける事は
ましてや、負ければ終わりの可能性が大いに高まる一戦だ。
それをサクラの
つまる所、気まずかった。
「――ほらっ!」
そんなエドガーを横目で見るローザは、
「――いっだ!?」
突然叩かれて目を丸くするも、ローザのおかげで
向き合うべきは、目の前にいる
一歩
「――その、頑張って!見てるから、ちゃんと見てるから!サクラは大丈夫!きっと……勝てるからっ!!」
サクラに向かって
「う、うんっ!行ってくる!」
だが、サクラにはそれで十分だった。
サクラに取っては、見てくれている、
(……よし、行こう。エド君も、ローザさんも……エミリアちゃんも見てる、見ててくれるから。あたしは
一歩
(あたしが自分で決めたんだ……この世界で生きていくって。必死でも、
「――
カリーナ・オベルシアは、
ガチンガチンと
「――っるっさい
「――んなっ!?」
その一言は、おそらく本人にしか聞こえなかった。
だが、効果は
「……こ、この
カリーナはまだ29歳だ。
オバサン呼ばわりするするのは少し失礼だろうが、サクラにとっては違う。
サクラは、
「え!?……あっ!ちょっとサクラ選手!?“魔道具”を……――」
サクラは、ソイドの
『――あたしを
キーーンと音割れした声は、きっと騎士学校中に響き渡った事だろう。
サクラの後方では、あのクールなローザですらポカーンとした顔をして、エドガーやエミリアと顔を見合わせていた。
「い、今の……」
「サクラ、なんかすっごい事言ったけど……」
「ええ。相手の顔を見ればわかるでしょう?――狙ったわね、あの子」
音の反響が
リアクションをしたのは、カリーナだけだった。
『……――ぶち殺すわよっ!!このクソガキっ!ピーーにしてからピーーして男数十人でピーーさせてやるっ!!……――えっ!?』
カリーナは驚く。自分の声が、先程のサクラの
ピーは
カリーナの声が響いたのも当然だった。
カリーナが自分を怒って、
ざわつく会場と、わなわなと震えるカリーナ。それは怒りか、
「……はい、
試合前の先制攻撃はサクラが制したと言えるだろう。
精神的にカリーナを逆上させ、
(エド君にもローザさんにも、誰にも言わなかった作戦……相手が年上の女だと分かった瞬間に
『そ、それでは……その~――は、始めてもよろしいですか?』
ソイドは
サクラはコクリと
カリーナも、無言のまま
『ご、ごほんっ!それではぁ!二回戦!!開始ぃぃぃ!!』
ダッシュでカリーナとの
これは、サクラが
【スタンガン】と【
それを右手に構えて、サクラはカリーナの
「……」
(……来ない?てっきり
カリーナは、光の差さない目でサクラを
一見
「――このガキ、絶対ひん
サクラはゾクッ!と
カリーナ・オベルシアは、
カリーナの
その店でサクラを売ってやると、カリーナは決めた。今決めた。
「何度も何度も客を取らせて、ぼろ
モーニングスターはフレイルに変わって、
「――!
「そう!――よっ!」
「……あ、危な……って!しゃがんでる場合じゃないって!!」
「――ちぃっ!」
カリーナは怒りで
「――ぎゃっ!!」
しかしサクラは、【スタンビュート】をビャッと
バチィンっ!!と当たった
「やった!次っ!……――あ、あれっ?むっずコレ!!」
続けて
「……ぐっ、ガキがっ!!アタシの身体に!」
カリーナは、サクラの
それをミスだと
再びモーニングスターフレイルをじゃらりと構えて走り出すと、一気にサクラに近づき、フレイルの鉄球を
「――ちょっ!はやっ……きゃっ!!」
エミリアよりも全然遅い筈だが、一般人代表のような日本人サクラには高速に見える。
痛みの
ぶん回されたカリーナのモーニングスターは、バチンとサクラの【スタンビュート】を
「……あ!このっ――ぶっ!」
せめて
ドサリと倒れるサクラの鼻からは――ぼたぼたと赤い
「――いっ、は……ぇ?」
(痛い……痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!――痛いよっ!)
殴られたのは
――カリーナの拳が。
「――
ニヤリと笑い、サクラを見下ろすカリーナは、最初の精神的ダメージを返してやったとほくそ笑む。
カリーナにとっては、肉体をけなされた事よりも、
「しまったねぇ、あんまり顔には傷つけたくないのよ……立ちなさい?クソガキっ!」
カリーナは
その為、一番初めに顔を叩き、心を
「お
鼻血をぼたぼた
「……!!」
その言葉を聞き、サクラは立ち上がる。
一撃で
(そっか……そっかそっか……あたしが負けたら、エミリアちゃんも……)
「なんだい?
「そうね……オバサンよりは売れるかもね。なんたって
ビキリ――と、カリーナの顔に
ショックか怒りかで、カリーナは
そしてカリーナは、ずいっとサクラに
「――ガキがぁぁ!!調子に乗るんじゃないわよっ!!」
「ぐぅっ……」
両手で引っ張られて首にめり込むシャツ。
「……まっ――」
「待ってなんて聞かないわよ!」
「……し、ないでよ」
「は?なに?」
サクラの言葉を聞いてやろうと、カリーナはシャツを
「
「なん――だっ!?ぁぁぁ!ぁぁぁ!ぁぁぁ!ぁぁぁぁぁぁあっ!?ぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ!!」
サクラがカリーナを
身体を
しかし、カリーナの胸に当てられた【
「そのデッカイ
「――んがああああぁぁぁあっあああああ!!」
カリーナの
それでも、
「ああ――がぁっ!!」
「――!ぐぅっ……痛ったいなぁっ……!!」
転がり、起き上がりながら、腹の痛みに
カリーナが感電して思うように動けない事は分かっている。
「はぁぁぁぁっ!」
「ぐ……待っ――」
「――カリーナ!!【
外野から、カリーナに声がかけられた。
「――!?そ、そうだ……“魔道具”!」
「それが――なによぉぉっ!!」
カリーナがその
しかし【スタンガン】はカリーナに届くことはなく、
「く、う……うぅ!」
(……何よ!!これぇぇぇぇ!)
「――は、はは。はははっ!!最高だよっ、セイドリック坊ちゃん!この“魔道具”【光のカーテン】!」
カリーナは“魔道具”の効果に
「――あうっ!!」
背中から叩きつけられ、一回転して寝転ぶサクラ。
【スタンガン】は転がって、カラカラ音を鳴らす。
「いやぁ、
サクラにトドメを差す為、歩み出そうとしたカリーナだが、脚が動かなかった。
では
「ちっ!この“魔道具”かっ……そういえばそうだったわねっ。
“魔道具”【光のカーテン】は、見えない壁を使用者の前に発生させる。
その力は非常に高く、サクラの腕力では突破できなかったのだ。
カリーナが“魔道具”でごたついている内に、サクラはフラフラしながらも立ち上がって後方を見る。
(ああ……良かった、皆見てる……エド君も、ローザさんも。【忍者】も、エミリアちゃんも……あ、アルベールさんとメイリンさんもいる……)
いざとなったら、ローザが助けてくれる。
勝手にそう信じ込んで、サクラは前を向く。
「あたしは……何にだって
だが、その言葉はサクラの
誰にでもなれる、演じることの出来る力だ。
「あたしは……軍人、陸軍少佐……
サクラの
その
◇
空気が変わった。
サクラを
「……サクラ?」
「……む。サクラか?」
「……」
「ガキがっ!あんたがどんな“魔道具”使おうと、この【光のカーテン】があれば怖くないよっ!」
「……」
それは、この世界には存在しない武器だった。
歩兵式
<……ローザさん、
<――!?サ、サクラ……?>
ローザは【心通話】を受けるが、サクラの
そのサクラは、カリーナの攻撃を
まるで別人のように。
<早くっ!!>
<分かったわよっ>
モーニングスターを
「――ぐぅぅぅ!」
【スタンビュート】で痛めた
痛みと、思わぬ反撃にカリーナはいったん
「このまま待てば、時間切れ……ダメージは五分五分、見た目じゃアタシが不利かね……でも、この【光のカーテン】が
「……」
カリーナも、サクラも動かない。
カリーナは【光のカーテン】を発動させたままサクラの出方を
サクラは、【アサルトライフル】をカリーナに
「……」
一言も言葉を
「来ないのかい?お
「……」
反応を
「――いい気分だね!このまま時間切れでアタシが勝てば、あんたたちは二敗、セイドリック坊ちゃんの出番が来る前に終わっちまうのさぁ……ちっ!――なんか言ったらどうなんだい!?」
「……
「――なっ!?」
人の変わったような
<……いいわよ>
「……
誰かに言われたかのように答えるサクラは、引き金を引く。
――それは、
会場の
見ていたのは、味方の陣営と、一部の人たちだけだった。
【光のカーテン】など
ドシャリと倒れるカリーナは、自分が作った
静まる会場で、サクラがソイドに告げる。
「……
その言葉に
『――しょ、勝者ぁ!ロヴァルト側ぁ!サクラァァァァァっ!!』
勝敗が決まっても、会場の静まりは続いた。
そんな中、ロヴァルト側の待機所から
エミリア、エドガー、ローザにサクヤも、アルベールとメイリンもが、サクラに
そして、パチ――パチ――パチパチ――パチパチパチパチ。
と、徐々に増える音。
そして
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