110話【決闘~一回戦~】
◇決闘~一回戦~◇
「ど、どど、どどど、どうしようっ!!」
頭を
「落ち着いてってば、エミリアちゃん!」
向かい直って、エミリアの両肩を
「だ、だ、だって兄さん、メイリンさんも……やばいよっ!どうしたら……」
「いやいや、ローザさんが信じろって言ったでしょ?信じようよ、お兄さんっを!」
しかし、言うのは簡単というやつで。
ロヴァルト家の
「あれが……セルエリス
確認して、エドガーが言う。
セルエリスが
いずれも【元・聖騎士】の
一試合は
「エミリア。あの三人が誰だかわかる?」
「え?……ん~、一人……くらいなら」
ローザの問いに、エミリアは
「一番左の方は、確か騎士学校の
エミリアは槍術使いだ。
剣技の
「後のお二人も、【元・聖騎士】の方なんだろうけど……全員、
今エミリアが言った一人は、よくて五十代。残りの二人の見た目の
二~三世代前の貴族までは、騎士学生のエミリアは知らなかった。
貴族のエミリアは、本来知っててもおかしくはない筈なのだが。そこはエミリアだと言わせてもらおう。
「……そう。まぁ、確定ね……」
ローザは小さく
そしてそれと同時に、
『皆様!!大変お待たせ
「「「「「わあぁぁぁっ!!」」」」」と、
どれだけの
司会
テンションがチョットおかしい。
『
大剣を持ち、左手を
ジュダス・トルターンは、戦いが待ち遠しいと言わんばかりに
『それではぁ!第一回戦、続いて東側ぁ!エミリア
三度「「「「「わぁぁぁぁっ!!」」」」」と
呼ばれたアルベールは
『……おおっと、アルベール選手、出てこない!これはどうした事かぁ!』
登場どころか、
しかし、一番イラついているのはジュダス・トルターンだった。
その事情はエドガーとエミリア達も、
それどころか、実はセイドリック・シュダイハも知ってはいない(知ろうともしていない)。
ジュダスは、まさかアルベールに自分側のメンバーが
「……ヤバいヤバいヤバいっどうしようっエド!!」
「何とか時間を、もしくは対戦順を変えてもらえるか……」
「無駄よ。エミリアの立場が悪くなるだけだわ……止めておきなさい。
「――ほら、間に合ったわ……」
ローザが言う。
と、入場ゲートから走ってくる男性が。
「――兄さんっ!」
「アルベール!!」
「はぁ、はぁ……わりぃ。遅れた」
息を切らして、ぎりぎりで会場入りしたアルベール。
「聞こえてたよ、
「ちょっ、大丈夫なのかいっ!?」
後ろ姿のアルベールは、エドガーの言葉にグッと
「……」
<……メルティナ、どう?>
<イエス。数人の人間に
<……そう。助かったわ>
【心通話】をメルティナと行いながら、ローザは会場を
すると、
どうやら
「一つ……安心ね」
(メルティナが何をどうやって
「――ローザ殿。メイリン殿も来ているな、どうする?……見ておくか?」
「そうね。頼める?」
(この子、メイリンが
「
――シュバッ!と消えるサクヤ。と思った
<せめて隣に居なさいよ……>
<むっ……わたしは忍びだぞ?忍ばないでどうする>
目を細めてローザを見てくるサクヤ。
それだけは
(……まぁこれで、メイリンの心配はいらないわね。後は……)
肩で息をし、そこら中に見える切り傷
だが、それを王女や
(――誰だったかしら……あれ……)
ローザは、シュダイハ側の選手の名前を覚えていなかった。
◇
「来ないかと思ったぞ、アルベール・ロヴァルト。
長身のアルベールを、さらに上から
「へっ……よく言うぜ、あんなことしておいて……」
「――?……何の事だ?」
アルベールの返答に、首を
「――は?あんた……」
何をとぼけた事を。と言うつもりでいたアルベールは、ジュダスの反応に
「――まあいい。俺は、お前を倒すだけだ……殺された――
「――!!……イグナリオ!?……イグナリオ・オズエスの事か!」
意外な名前に、アルベールは聞き返す。
「ふん。忘れている訳ではなさそうだな……そうだ。お前が殺した、
「……こ、殺した……?」
イグナリオ・オズエスは、【
ジュダス・トルターン、この男がそれを知っている?
「……」
「なんだ。
「
会話はそれ以上できなかった。
時間いっぱいになり、
『――さぁぁ!時間いっぱいです!両者、構えぇ!一回戦~!開始ぃぃぃぃぃ!!』
ソイドの
「――くっ!」
アルベールは
開始前の会話のせいで準備不足だったため、見ているエドガーとエミリアは動きが
「――アルベール!」
「兄さん、頑張って!」
二人の声が聞こえて、アルベールも気を入れる。
(……くそっ!――変な事考えてる場合じゃねぇ!
イグナリオの事を出され、初手で
戦いは止まらない。これは試合だ、勝つか負けるまで続く。
考えながら戦えるほど
剣を構えるアルベール。左手には中サイズの盾が。
その盾も、エミリアの槍と同じく赤い
(
アルベールのこの盾は、前日にローザが
名は【バックファイア・シールド】。
その名の通り、
「――おおおおっ!!」
アルベールはその攻撃に合わせて、盾と剣を合わせて防ごうと構えた。
「来やがれっ!」
ジュダスの大剣が盾に
「――ぐ、ぐぁぁぁぁぁっ!!」
苦しむジュダス。
しかし、炎に
「――うおあっ!……ぐっ!っと」
ドサッと背中から
会場からは
見たこともないような炎の盾。
特に貴族の
「くっ……こんな力が――っ!……そうか、そうかぁ!……この力で、イグナリオを
しかしジュダスはアルベールを
「――なんだよっ!あんたは……!」
アルベールは、一人
「なるほど
ジュダスは右腕に張り付く焼けた服を
衣服に張り付いた
「あんた……イグナリオの先輩なんだろっ!なんでこんな事……アイツが何をやったのか知っているのかよ!!」
「――知らぬっ!!関係のない事だ、俺にはぁぁぁぁ!」
ジュダスにとっては、イグナリオが何をしたかが問題ではない。
イグナリオが
「くっ……!!」
「……聞いてはいるさ。
ジュダスはそれを
全力でアルベールに向かい、焼け
「おいっ!あんた何か
ガギンッ!!と大剣と盾が再び
「――ぐぅ!――う、うおおおおおおおっ!!」
「なっ!こいつっ!?」
ジュダスは、バックファイアを物ともせず、大剣を
アルベールは、ジュダスが盾の炎を
そのせいで
「――がっ!!」
盾ごと押し出されたアルベールは、自身の
「……やっべ……――
(
痛みながらも、左手には何とか剣を持たせる。
ましてや
(攻めるしか……――なっ!)
攻め手に
全力で、しかし声を
「――マジかよコイツ!!」
アルベールは大剣を盾で受ける。
右手に持ち替えた盾は、炎を
「ぐおぉぉぉぉ――!!」
「くっそ……!ぐっ!?」
短く
しかし、
「うおおおおおぉぉぉぉっ!」
肩がうまく上がらず、横っ腹に刺さる剣を、アルベールは引き抜かずに横に
これで終わりにすると、最後に気合を入れた。
もう一度剣を突き立てようと、痛む肩を無理に上げて剣を突こうとする。
――しかし。
『――終了ぉぉぉぉぉぉっ!!それまでぇぇぇ!両者、剣を
「……なっ!?」
後一歩、後一歩でトドメを刺せたのに、
「おいっ、どういう事だよ!決着は……時間だってまだあるはずだ!!」
そう、時間はまだ残っている。
開始と同時に落ち始めた大型の
しかし、
『……アルベール選手……自分の足元をご覧ください。そうすれば分かります。どちらが勝ったのかを……』
ソイドの言葉に、アルベールは足元を見る。
「……――っ!……あ、足が……」
アルベールの右足は、
『――勝者ぁ……シュダイハ側!……ジュダーース・トルターーーン!!』
そうして、アルベールの
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