109話【決闘~そう言えば、妹~】
◇決闘~そう言えば、妹~◇
戦いの為にわざわざ
四角形の石が何十個もつなぎ合わされたもので、
四方には木で作られた
大半の客は王家が用意した貴族であり、下町民はあまり見られない。圧倒的アウェイだ。
それでも、たった二日で用意されたとは思えない出来に、エドガーは
(凄い
◇
どこにでもありそうな前置きや
舞台上に出場者が入場して並び立つ。
「……」
下町の
シュダイハ家が五人、ロヴァルト家が三人だ。
そう――三人だった。
(に、兄さん……っ!)
ぎりりと
兄アルベール・ロヴァルトが
(ど、どうしようエド……)
(どうするって言われても……アルベールを待つしかないんじゃ……)
ひそひそ話で会話するエミリアとエドガーに、隣の陣営からクレームが。
「そこっ!
真面目そうな男、フェルドスに
「へぇ……本当に
顔を
「――べーーーーーっだっ!!」
「――なっ!」
エミリアの
声を出そうとしたが、音声拡大“魔道具”から『ごほんっ!』と
◇
【
アルベールの前に、数人の男達が現れた。
「なんだあんたら……」
あからさまに
「ア、アルベール……」
「大丈夫だ、メイリン……」
二人は
しかし何度か
会場直前まで来て、最後がこれだ。
「……そうか、やっぱりシュダイハ家の差し金かよっ……ちっ!」
後ろからも数人現れ、
完全に囲まれていた。
「アルベール、後ろっ!!」
「分かってるさ、俺から離れるなよっ!!メイリン」
アルベールは剣を抜き、構える。
「……へへへっ……――やれぇっ!」
一人の男が笑い、パチンと指を鳴らしたのが、戦いの始まりだった。
◇
「……どうしよう」
「お兄さんの順番を変えてもらう?」
アルベールの出番は、一番手だった。
「もう無理だよ……時間がない。せめて
もし
それでなくても一人足りロヴァルト陣営なのだ、それだけで二敗になってしまう。
「
「も、もしかして
エドガーの一言に、全員がピンとくる。
「……だからさっき、セイドリックはお兄さんを
サクラは、シュダイハ家側の専用席を見る。
出場者は
もしも、シュダイハ家側がエミリア陣営の出場者を完全に予測していたら、アルベールを
それでなくても主役の兄だ、出場者としての
「くぅ~……兄さんを無理矢理にでも馬車に乗せるんだっ――あっ!!」
「エミリア?」
エミリアは顔を青くする。
「――兄さん……メイリンさんのところだ!……多分」
「――ちっ!」
<……メルティナ!上ね、聞こえていたら
ローザは
戦えないメイリンが一緒にいれば、アルベールが彼女を守るのは
ローザは《石》の反応を
<――イエス。聞こえていました……ですがローザ、これは
上空にいるらしいメルティナは、ローザからの【心通話】受けると、先日
ここで
<――
<……イエス>
シュダイハ家の
そんなローザを、エドガーは気にしていた。
「ローザ?」
「大丈夫よ。信じなさい……」
その意味は、アルベールを、なのか、ローザを、なのか。
訳も分からないまま、エドガー達は
◇
騎士学校の会場、その
一人、出場者の少年を
明るめの茶髪に、
(どういう事なのっ!?なんでお兄ちゃんがエミリア先輩と一緒に戦うのっ!?)
少女リエレーネ・レオマリスは、騎士学校の先輩であるエミリア陣営を応援するために、
わなわなと
先程から何度もそれを
もしかしたら見間違いかもしれない、いや、そうに違いないと考えて。
自分にそう言い聞かせて、何度目かの顔を上げる。
「……――いるぅぅぅぅっっっ!!」
つい、
会場は
隣にいた友達の三人は
「――わぁっ!?」
「ど、どうしたのっ?リーちゃん!」
「ビビ、ビックリすんだろぉ!?」
上から。レイラ、ピリカ、ラルンの三人は、リエレーネ・レオマリスがおかしくなったと思っただろう。
「ご、ごめん……」
やはり、間違いではなかった。
兄がこの場にいると言う
――更には。
「ねぇ、リーちゃん……あの
「――えっ!?」
ピリカの一言に、リエレーネは
「……ほ、本当だ!……おっぱいの人」
リエレーネが以前、
まさかその人が会場にいるとは。
しかも兄や先輩と仲良さげに話している(
「うおっ!ホントだ、あのねーちゃん、エミリア先輩と知り合いだったのか!?スゲー!」
ラルンは楽しそうに笑う。
「でも、出場者じゃないわよ?さっきの
レイラは
「それで、リエは何で
「――ばっ!?」
「こらラルンっ」
「ダメでしょラルンちゃん」
学友の
レイラとピリカが口を
リエレーネは
「……うぅ、あれ。私のお兄ちゃん……」
泣き顔になりながら、エドガーを
「ええっ!?あの男の人!?」
「私は知っていたけれど……」
「し、【召喚師】、だよね……」
ラルン以外は知っていたようで、
ピリカはちょっと怖がっているようだった。
「ご、ごめんね……お兄ちゃんが……」
兄を|恥じる訳ではないが。
その兄から「自分の事は話すな」と言われ続けてきた妹の立場上、
「何でリエが
「リエが
「リーちゃんが悪いわけじゃ……ないよ」
ラルン、レイラ、ピリカの
この三人だって分かっている。
リエレーネは【召喚師】ではない、その家族だ。
【召喚師」は
だからといって、【召喚師】であるエドガーを
「……うん。ありがとう」
物凄く
そんなリエレーネだが、
――
「……ピ、ピリカ?」
「……」
ラルンとレイラもそれに気づいて、ピリカの正面で手を
完全に熱に
「だめだこりゃ……」
「リエのお兄さんを見てるわね」
「……
ピリカと兄の
単に
【召喚師】と知って恋に落ちる?
「ピ、ピリカ……?お兄ちゃんを知ってるの?」
「――ふえぇっ!?ちち、違うよっ!?私はね、エドガー先輩を見てたわけじゃなくて……その、えーっと、違うのっ!!」
「……
どうやら確定のようです。
先輩と呼んでる時点で、一応エドガーが騎士学校の先輩である事を知っている。
ピリカは初めからエドガーを知っていたのだろう。
かつ、【召喚師】であることを知っていながら
「
しかも
「……ははは、
自分が
四度目の「
エドガーの妹、リエレーネの目の前は、真っ暗になったのだった。
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