107話【決闘~開始前~】
◇決闘~開始前~◇
期日が早まってしまった決闘を、一日早めたのは、【リフベイン聖王国】の第一王女セルエリスだ。
参加している出場者の中に【召喚師】エドガーの名を見つけて、その命令を下したという事はだが、その事実は、本人、そして妹王女のローマリア、最後に。出場者達しか知らない。
その結果、ロヴァルト家側は
しかしそれが
もう、期日が
そして、エミリアの結婚を
◇
~宿屋【福音のマリス】~
「――ん、んん~っ!ふぅ……」
大きく
右手でシャコシャコと奥歯を
「んひ、ひょうおはっひい!」
(よし、今日もばっちり!)
「……終わってからにせいよ」
隣で顔を
「お
「いやもう、全然オッケー!体力も魔力?もバッチリよ」
その結果“
本来ならば、魔力の回復に
では、
それは、約一名の赤いお姉さんしか知らない事だった。
「……そ、そうか?……ならいいが、頼むから無理はするなよ。いつでも変わるからな」
「は……はいはい、あんがとっ!」
(なーんで、こんなにあたしを心配してんのかな、この【忍者】は……)
サクヤに手をひらひら
残ったサクヤは。
「……あれだけ戦いには
一人ボソッと
だが、この一言が、サクラの戦い方を
◇
エドガーとローザは【召喚の間】で最終確認をしていた。
「よしっ……特に持っていくものはないし、後は会場……騎士学校に行くだけだね」
そう言うエドガーに、赤い剣を
「――大丈夫?」
「ん?……ああ、
「……そう」
昨日の
それは、エドガーにとっては
今更だ。と、エドガーは受け入れた。
「……エドガー」
「ん?なに……?」
「今、キミの力はかなり高まっている。多分、メルティナとの契約効果でしょう……きっとあの火炎弾も……使えると思うわ……でも――」
決闘とは
「大丈夫。使わないよ……使わなくても、勝つ。勝つから……」
ローザは心配している訳ではないが、もし、万が一
「ありがとう。ローザ……僕やエミリアの事、
「……べ、別に、私は……サクラも、私の剣を使わないって言うし……エミリアも、その……いろいろよっ」
そのエドガーが笑顔で見ていたことに、ローザは
「……ほらっ、行くわよエドガー……」
「うん!」
◇
【
赤い
ジャケットの上には軽装の鎧。
両肩と胸を守るナイトアーマーだ、それも赤い
「……着やすい……しかも軽い……」
昨日ローザが用意してくれたこの衣装を
「エミリアお嬢様……アルベール様の準備、
コンコンとノックをして、メイドの一人フィルウェインがエミリアを呼ぶ。
「ありがとう、フィルウェイン」
バサリと青いマントを
と、部屋の外にいた人物に驚く。
「――!……お母様っ!?」
そこには、
いないと思ったら、母を連れて来てくれていたらしい。
「エミリア……
エミリアは母に合わせる様に
「いってきます、お母様……私、自分の未来を切り開きます……」
普段は寝室から出ることはない母ミランダだが、娘の結婚が
「ええ。頑張って……私の可愛いエミィ。お母さんは、貴女の帰りを、待っていますからね」
娘を
「はい。お母様……行ってまいります……フィルウェイン。ナスタージャ……お母様をお願い」
「はい」
「はいぃ」
そしてエミリアは
外には、王城から
「遅いわよ、ロヴァルト妹」
馬車の中から顔を出すのは、ノエルディアだった。
「ハルオエンデさん!昨日はありがとうございました!お陰で元気出ました」
「……別に……私は
馬車のドアを開けながら、
「兄さん……父様は……?」
エミリアは、この場にいない父を気にする。
「ああ、父さんは先に向かったよ……騎学長に
決闘の会場となるのは騎士学校【ナイトハート】だ。
「そっか……少しでもいいから、話したかったけど……しょうがないね」
「信じてんだろ。父さんもさ、お前がしっかり勝つってな」
エミリアは「そうだといいね」と言いながら馬車に乗り込む。
「……あれ、兄さん?」
馬車に乗り込まない兄に、エミリアは首を
「あ~悪ぃ……先行ってくれ。俺はちょっと……
「……」
兄を見つめるジト目のエミリアには、思い当たる
しかしそれを言ったりはしない。
それで兄にやる気が出るなら、それに
「……じゃあ、先に行くね。
「――分かってるっ!!」
こうして、エミリアは騎士学校に向かった。
◇
【
どう見ても十代前半、下手をすればそれ以下に見えるこの少女。
【リフベイン聖王国】第三王女、ローマリア・ファズ・リフベインだ。
数人のメイドに付かれて
げんなりとしながらも、されるがままのローマリアは、姉である第一王女・セルエリス・シュナ・リフベインに言われたことを思い出す。
『……
ノエルディアが急いで探していたのは、このセルエリスからの呼び出しがあったからだ。
『……へぇ、決闘なんてまた
目が悪いせいか、目つきもかなり悪く見える。そしてなにより、怖い。
『マリア、このエドガー・レオマリスと言う男……どういう男か
『……エドガー、ですか?……エミリア・ロヴァルトの幼馴染、ですが……それがどうかしましたか?姉上』
エミリアではなく、エドガーを
セルエリスは
インクを
『……ふぅん、やはり知らないのね――【召喚師】の事……』
ローマリアが知らないと言うと、セルエリスは
それは、
『――え?』
【召喚師】がどういうものかを。
どういう
『……そんな……そんなものっ!!
セルエリスが告げた【召喚師】と言う“不遇”職業の真実に、ローマリアは
『そうね。それが正しい反応だわ……』
ローマリアの怒りに、セルエリスは軽く
『姉上は、それを知っていてそんな事を言っているのですか!?』
『そうね』
セルエリスはまたも受け流す。
ローマリアの意見をまともに取り合うつもりはないようだ。
『……それを私に言って……また、
ローマリアは、姉から過去にされた
『……まさか。可愛い妹に、そのようなことをするわけないでしょう……?』
セルエリスは持っていた書類を手放すと、数枚の書類はひらひらと舞って落ちる。
すかさず、
『――ヴェイン、その書類に私が
『はっ。
ヴェインと呼ばれた銀髪の騎士は、セルエリスの
『――?……姉上?
『――
『――!』
姉の
いや、その
『
ニヤリと口端を吊り上げる姉の笑顔に、ローマリアは
そしてローマリアは自室に帰り。
姉の笑った顔を
姉に言われたことを、エミリア達が不利になる事を。涙を流しながら。
だが最後に、一枚の紙切れに最大の
結果として、エミリアとエドガー達の
◇
「……よし、行きましょうか……そろそろエミリア達も到着するだろうし、エドガー達も……」
二日前の
エドガーに
ノエルディアが言うには「手紙は何事もなく渡されました、心配はいりません」との事だったが、何度か失敗しているノエルディアは信用ならなかった。
「自分で確認するしかないわね……エリス姉上がこれ以上何かしてくる前に」
友達になれるかも知れない男の子と、将来のある未来の騎士に会いに。
姉の事は
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