93話【戦いはいつも心で行われる】
◇戦いはいつも心で行われる◇
何とか心を
(あれ……?メイリンさんだ――あ、そっか。もうそんな時間なんだ……)
自分が
メイリンは現在、
いつもは朝早く、一番にやって来ては
別に宿が
「あら、サクラさん……ど、どうしたの……?顔が真っ青よっ!?」
ロビーの
が、その顔色の悪さに
それは、サクラにとってはとても嬉しい事でもあった。
「……へ、平気ですよ。メイリンさんこそ、何してたんですか……?」
メイリンのしていた
銀行員がお金を数えるソレに似ていた。
それが気になったのと、心配を掛けられないという点から、サクラは話を
メイリンがそわそわしていたのに
「――えっ!?あ~、えっとぉ……うん。何でもないわよ?」
ぎこちない笑顔が、それを物語っている。
「あはは。なんですかそれ、メチャクチャ気になるんですけど」
「……」
サクラの
特にメイリンが
「――!……ち、違うわよっ!?私、何もしてないからねっ!?」
どうやら、
メイリンはサクラに何かを
「分かってますって。それにあたし何も言ってませんよ~?」
ジト目でにやけるサクラ。
「あっ。うぅ……意地悪ねサクラさんは。……ローザの方が
プンプンと
「で。結局のところ……何をしてたんですか?」
「ああ!ちょっとサクラさん!
「……ふむふむ。
「やだもう~」と、おどけて言おうとしたが、
見なければよかったと
「――はぁ~……どうするんですか?これ」
「……ねぇ。どうしようか……本当に」
メイリンが
会計は
「……~」
声にならない声を
(ま、まさか……ここまで
エドガーに“召喚”された時『ここは
というか、信じざるを
(普通異世界に来たらさぁ……とっても
自分が四次元に
(こ……このままじゃ、アカーーンっ!!)
自分の異世界ライフが、
今のサクラに、そんな
「メイリンさん!」
「――は、はいっ!!」
突然
「……ちょっと、エド君を呼んでもらってきても……いいですかねぇ?」
「……は、はぃ」
満面の笑顔だったが、メイリンはサクラが
◇
突然、サクラに名指しで呼び出されたエドガーは、緊張した
場所はロビー。サクラは
先程エドガーを呼びに来たはずのメイリンは、いつの間にかいなくなっていた。
「……な、何かな?いきなり呼ばれて、びっくりしたよ……」
(どうしたんだろう。サクラ……
サクラが怒っているのだけは理解出来たエドガー。
しかし、
(……えっと、ここにいるってことは……う~ん、ダメだ……な、なんだろう一体)
全く
「――エド君」
いつもの何倍も低い
ローザが見ていたら笑うだろう。
「は、はいっ!なんでしょうかっ」
しかも声が
「……これを見て、どう思います?」
サクラに突き付けられたのは【福音のマリス】の
宿の
「……
「うん」
「え?……それで?」
エドガーは
「――は?」
別にとぼけたつもりはないのだが。
サクラを見ると、どうもこの
「い、いや……えっと、ホントに何で……怒っていらっしゃるのかなぁ……と」
「分からないの……?これを見ても?」
突き付けられた
「えっ……と、赤いね」
「――バカなのぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
エドガーが
どちらにせよ、解決しなければサクラの異世界ライフに未来はない。
この世界には、
エドガー達が戦った【
「……それで?」
今エドガーにそれを説明されても、
腕組をしながら、
「い、いや、だからね……ということは、外国からのお客が取れない訳で……」
「……で?」
「そうなると【召喚師】の
「……」
(サ、サクラがここまで怖いと思わなかった……)
「はぁ~……いい?エド君……これ、
「はは、死人って……」
サクラの言葉に、エドガーはつい笑ってしまうが。
「――笑い事じゃないんだよ?エド君。この赤字を見る限り、一年以上続いてる……宿はお母さんが切り盛りしていたんだよね?……つまり、その時期からもう赤字だったんだよ?」
「……え」
区画一の人気宿。国でも
自分が
母マリスが
いくら生活していけるだけの
「ヤバい……よね。これ」
「うん、ヤバい。近い所で言うと、来月の妹さんの騎士学校の
この世界の月間は約90日だ。
前回の騎士学校の
騎士学校の
だからエドガーは中退したのに、それを
そしてエドガーは、ローザが食べる食事の量を思い出す。
思い出してしまう。
「……!?」
「……ね?」
「……う、うん。ごめん、僕が全面的に悪かったよ……」
「それは別にいいよ……あたしはこういうの
サクラの顔は、一転して
「サクラ……?」
「……あ――ごめんっ。何でもないや……あたし行くねっ」
まるで逃げる様に、サクラはロビーから飛び出す。
「サクラっ!ちょっと待って!」
「……やっぱり、エミリアの事……いや、それよりも戦いの事……考えてたんじゃない?」
「……!?エド君……気付いて」
やはり、サクラは戦いの事を考えていた。
それも、自分が戦わなければならないと言う事を。
「少し……話そうか。待ってて、コーヒーを
そう言って、エドガーは
ついていってもよかったが、サクラの足は重くなっていた。
まるで、重しが付いたかのように。
エドガーは
熱いコーヒーを二杯持って。
「あたし……ミルク欲しいな」
「うん。あるよ、ちゃんと」
ロビーの
まるで客と
「「……」」
エドガーは、サクラから話した方がいいと思い、
外からは子供の声が聞こえて来て、
どれくらい
「あたしさ……」
「……うん」
「怖いんだ……そりゃあ、エド君もエミリアちゃんも怖いだろうけど……あたしは、きっと戦えないよ。死ぬのが怖いってのも、
(……やっぱり)
そうでなければ、あんな
「きっと……ローザさん、エミリアちゃん、【忍者】、アルベールさん、エド君が出るはずだったでしょ……?」
エドガーの考えと、
メンバーが少ないのだ、
「ローザさんの参加が駄目なら、もうあたしが出るしかないじゃん……人数的にもさ」
「……そうだね。僕の考えも、同じだったよ……」
サクラは「でしょ~」と笑う。
無理に笑っていることが分かる、
「……あたし、多分誰よりも戦えない。ビビってるって言われてもいい。エミリアちゃんの結婚が
武術を
ただ少し頭がよかっただけ。しかもそれは、
そんな自分が、誰かの人生を
「でも、あたしが出ないと……一敗しちゃう。相手がどんな人を連れて来るかも分からない以上、そんな
「……」
理解している。自分の一敗は、命取りになる可能性があると。
エミリアの運命が決まるかもしれないと。
そんな
誰かのせい。なんて言う人は、この中にはいないだろう。
でも、サクラはきっと自分のせいにする。
元の世界で、そうしてきたように。
「――怖いよ。怖い……あたしのせいで、誰かが苦しむのは、怖いっ!」
『あんたなんか、産まなきゃよかった!!』
『母さんがこうなったのは、お前のせいだぞ……』
『お姉ちゃん……まだいたんだ』
「……はっ……くっ……ぅぅ……」
「サクラ!落ち着いてっ……大丈夫、大丈夫だから!」
胸を押さえて、必死に
「……はぁー……はぁー」
涙目でエドガーを見つめるサクラのその目は、
「……落ち着いた、かな……?」
背を
「うん……ありがと」
「……サクラ」
「……なに?」
エドガーの声は優しく、
でも、それは別れの
そして
「――いっそのこと、出なくてもいいんじゃないかな、決闘なんて」
「――えっ?」
意味が分からなかった。エドガーの言葉の
(……なに……それ。あたしは、もう……
決闘に出ないという事は、勝ち星を一つ
サクラはいなくても大丈夫。そう言われた気がして、目の前が暗くなる。
「……クラ?……いてる?……!えぇ?あっ……ロー…ザ!?…――ちょっ!!」
(……何なのよ……自分から“召喚”しておいて、
サクラに、エドガーの声は聞こえていない。
――しかし、突然
まるで、野生のボクサーに殴られたような、そんな
野生のボクサーなんて知らないけど、そんな感じ。
ドサリと
結構飛ばされたみたいだ。
「サ、サクラっ!?」
「……つぅっ……」
エドガーが、自分の名を呼ぶ声が聞こえた。
メチャクチャ心配してる感じで、
つまり、エドガーに殴られたわけじゃない。
「――立ちなさい」
「!?」
その人の声を聞いただけで、自然と顔を上げる。
「ロ……ローザ、さん……?」
「ええ」
(あ、あたし、ローザさんに殴られたの……?)
自分でもよく死ななかったと思う。
「な、なんであなたに
サクラは
「なんで?――じゃあキミは、どうしてエドガーの話をちゃんと聞かないの?」
質問に質問で返され、
「……――えっ?」
まるで、エドガーが話をしていたのか。と言いそうなほどぽかんとさせて、サクラはエドガーを見る。
エドガーは「気にしないでいいから」と笑うが、少し悲しそうだ。
「どうせ一部の言葉だけ
変に頭がいい分、エドガーの短い言葉を全て聞かずに
「エ、エド君……ごめん、あたし、勝手に……もう一度、聞かせてくれる?」
(あれ……なんだろ、なんか……気分がスッキリしてる)
「うん。
エドガーだけでは、サクラに傷をつけたままだったかもしれない。
「……私は行くから。後は勝手になさい……くれぐれも、ちゃんと話すのよ?今みたいに足りない言葉じゃ
「……は、はい」
エドガーの笑みにローザは
サクラは何だか嬉しくなった。
「……あ、【忍者】」
よく見れば、柱の影にサクヤもいた。
こっそり見ていたようだ。
(あたし……どんだけ周り見えてなかったんだろ)
メイリンを見つけて、
先の事を考えずに、別のベクトルをぶつけて、
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