84話【槍の加護が引き寄せるもの】
◇槍の
月が上がり始めた【王都リドチュア】。
その
この【
中央に位置する【リフベイン城】からは、城の“魔道具”で生み出された大量の水が溢れる川が、【
しかし、【リフベイン城】の正門に渡る為には、【
【
今回は、エミリアとアルベールだけで、メイドのお付きはいない。
帰りも無事に送り届けるからという事で、メイドの付き添いは
しかし、それは功を
エミリア達の乗る馬車は、丁度一区画と四区画の連結門近くで
馬が大人しくなった自然
「――きゃっ」
「うおっ!?」
「……副団長っ!」
ノエルディアが、エミリアとアルベールの頭を押さえ込みながら
「――っ!分かっている……どうしたっ!?」
エミリアとアルベールを
「わ、分かりませんっ!?前方に、大勢の人がいて……矢をっ!」
「何っ!?」
オーデインはちらりと馬車の窓から
外には大勢の
奥には
「ちっ!……強引に来たか、
今ごろは王城で、第三王女の出方を
「……はい!副団長!」
「エミリア
そう言い、オーデインは【聖騎士】ノエルディア・ハルオエンデを
「……兄さん、どうしよう……」
「どうするって言われてもな……動くなって言われてるし、勝手に動くわけにもいかないだろ」
本来ならば、先陣を切って前に出るタイプのエミリア。
しかし、事情が事情だと理解しているので、自分から進んで無理を
アルベールも同じだった。
「私に用って……つまり」
「……ああ。だろうな。きっと、シュダイハ家の奴らだっ」
「……」
ごくりと
エミリアは赤い槍、【
「お、おいっ!エミリア!車内に居ろって言われただろ!」
「――でもっ!」
「でもじゃない!……何の為にルクストバー公とハルオエンデ殿がいてくれるんだ!さっき話を聞いただろっ!?」
さっきとは、家を出る時だ。
ここまで来る
少しむくれながら、ノエルディアが説明してくれた。
そのことを話し合うために、ローマリア王女がエミリアとアルベールを王城に
日も完全に
「我慢しろ……二人は【
「……うん」
顔を暗くし
馬車から降りたオーデインとノエルディアは、囲んでいる
「副団長……」
「ああ。確定だね……
しかし、【聖騎士】であるオーデインとノエルディアを襲わせる事を、騎士達にどうやって
「あの騎士達は……
「大臣の私兵……ですか?」
「仮にも大臣の一人だよ。騎士を動かす
オーデインは一歩前に出て、大きな声で叫ぶ。
「これはいったい何事かっ!……私達は、第三王女ローマリア・ファズ・リフベイン
オーデインの
「――何を言うか!……
「……ちっ」
(そうきたか、これでは騎士達も命令に逆らえないっ)
「副団長、これ大臣が……?」
「
「……」
ノエルディアが目を
「私達が
ざわざわ――と、騎士達が
「……
「――えっ!?」
騎士達は
「決まりだな……【聖騎士】オーデイン、それに【聖騎士】ノエルディア……
「……ぅ」
「ほらねぇ……
それを見越していたように、ぞろぞろと増える騎士の
先日
「囲め囲めぇ!取り囲めっ!!」
隊長格の騎士は、大声を上げて指揮を
「おや?あの騎士、中々
「感心している場合じゃないでしょう!?ロヴァルト兄妹どうしますか!」
馬車ではエミリアとアルベールが待機している。
このままでは、量で押し切られて、エミリアを奪われる可能性が高い。
「……さてと、どうしようか……」
(……団長はどうしているかな?……異変には気付いている筈だが、如何せん動きがトロイからなぁ)
普段の
城にいるであろう上司、クルストル・サザンベール団長が動いてくれている事を願って、戦闘態勢に入った。
◇
騎士達や
その馬車の中で、一人【
後ろで
その出た腹にはチェインメイルが巻かれて、後方からの狙撃を
「ふぅん……あの馬車に
第三王女の
「王女
ほくそ笑むセイドリック。
確かにセイドリックは【元・聖騎士】だが、ローマリアに会ったことはない。
ローマリアが
自分の配下にする人物だけだ。セイドリックが【聖騎士】なのは知っていただろうが、自分の
ローマリアから送られた
それが、【聖騎士】オーデインとノエルディアを
大量の騎士や
「やあやあ……【聖騎士】オーデイン・ルクストバー
騎士と
騎士達は盾を構え、
意外にも
「……セイドリック・シュダイハ
「はっ、よく言うね。我が妻となるエミリア・ロヴァルトを
セイドリックは、
「……これが全てだよ、
セイドリックはそう言って、左手を
それが
その弓に
「……ちっ!火矢か……セイドリック・シュダイハ!馬車にはエミリア・ロヴァルト
エミリアをも巻き込むつもりの火矢攻撃。
しかし、セイドリックはゲスい笑みを浮かべて。
「ぐふふ……大丈夫ですよ。僕は傷ついていても愛せる自信がある……死ななければ、
「――くそっ……ノエルディア!」
「分かってますよっ!……ロヴァルト兄妹!早く降りて!矢が来る……!」
ノエルディアはオーデインに言われる前に動いていた。
声がかけられた時には
思いっ切りドアを開けて、二人に出るように
表情も固く、深刻なのが
「見てましたよっ!火矢……って、そんな物を街で使うなんて何考えてんだっ……!」
しかも王城の前である。
アルベールは剣を
この状況に応戦出来るよう、馬車の中で心構えだけはしていた。
「ほら!妹もっ!!」
ノエルディアはエミリアに手を伸ばして、槍を持った手を
バチィッ!っとノエルディアは
「いっ!たぁ……!?な、何っ!?」
しかし、エミリアにはこの
(ローザの……魔力?)
この槍、【
本来の魔力の武具は、魔力を使い果たすと自然
もし、この槍の持つ魔力が何かに反発して、ノエルディアを
エミリア自身は魔力を持たないが、槍自身が持つ魔力がエミリアを守ってくれている。
――エミリアはそう
「私……戦うっ!」
「は?……いきなり何言って……ってちょっと!ロヴァルト妹!?」
エミリアは馬車から飛び降りて、ノエルディアやアルベールを越して
「――!お願いローザ!!力を貸してぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
気合とともに、エドガーを
正直言ってどうなるかはエミリアには分かっていない。
魔力を持たないエミリアが、ローザのような炎を使えるはずもないことは、エミリアが一番理解している。
だが、エミリアの持つ
【
この槍には、
それは、エドガーとローザが
馬車に迫っていた大量の火矢は、空中で炎を
全てがただの矢となり、
そしてその
馬車の
「――すっご……」
「な、何したんだよ……エミリア」
「――な、なんだ……?あの娘、まさか……あれがエミリア・ロヴァルトか……!?」
ただ一人、セイドリック・シュダイハを
セイドリックは、槍にも炎にも目もくれず。
只々、槍を
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