83話【嫌悪の行方】
◇
シュダイハ家の
「
バンッッッ!!
「――うわっ!サ、サクヤ……!?」
身体を休める為、
今度は寝ていただけで良かったと、心の中で安心する。
今日のエドガーは
昼には無かったサクラとの契約の
「――どうしたのっ!?サクヤ……すっごい汗だけど」
「わたしはいいのですっ……それよりも本当に
「し、城!?城って……【リフベイン城】に!?」
「そうそれ!それです!そう言っておりました……これから城に向かうと、花嫁をこの目で見ると!」
「――!……まさかそれって、エミリアの……」
「はいっ!エミリア殿の
しかしエドガーは、その言葉で背中に一気に汗が
セイドリック・シュダイハが、エミリアと会うために王城へ向かうという事ならば、エミリアは。
「じゃあ……もしかしたらエミリアも?」
「恐らくは……しかしながら、兵を用意するとも言っていました、強引なことも考えられます……」
「――分かった。準備をしながらでもいいから、その時のことを聞かせてくれるかな。あと、ローザとサクラを呼ばないと……」
「それはわたしが……」
「頼むよ。サクヤ」
エドガーは
それでも、戦いがある可能性がある以上、装備は
サクヤは、自室で休んでいるであろうローザとサクラを【心通話】で呼びつけた後、エドガーに先ほどあったシュダイハ家での
◇
少し前。約束事などは特に取り付けてはいない。
だが、一度入り込んだことで忍びやすくなっていた。
『……ルーリア。いないのか?』
『
【赤い仮面】を取り出してそれを身に着ける。
『さてと……
今回のターゲットであるセイドリック・シュダイハを
『ここは二階か……普通、
『ん……ここは……?」
『……
ぼそりと
誰もいない事を確認して扉に耳を当てる。
――すると。
『……父上、これはどうしますか……?』
『ん?なんだ?……それは』
『先ほど城から届いたのですよ……第三王女の
『……中身は、確認したのか?』
『ええ。まぁ……エミリア・ロヴァルトが登城するらしいですね』
『ロヴァルト……ああ。お前の嫁になる娘か……』
『そうですよ、父上』
『確か、騎士学生だったな……しかし、ロヴァルト伯の娘か……』
ぺらりと紙を
『王城の西に兵を多数用意してある。そなたの嫁になる者を見ておいてはいかがかな、セイドリック殿
『……行くのか?』
『ええ。そのつもりですよ……ふふふ。美女と言われれば、父上だって
『……ぐふふ、確かに』
⦅確かに。では無いっ!そもそも、一国の姫がそのようなことを言うかを
サクヤは、声が出そうなほど
『兵を用意してある……という事は、エミリア・ロヴァルトが城に向かうのを邪魔をしろってことでしょう?つまり、そのまま連れて……いえ、お
『うむ。いいだろう。どうせ嫁に来るのだ、数日早かろうが、別段
『ですよね♪……それにしても、王女
『さてな……
『……』
とうとう言葉まで出なくなり。
ここから去りたい気分に
『こ、こ奴らの
もしもセイドリックがエミリアを気に入り、そのまま
『では、父上。私兵を貸してもらってもいいですか?』
『ん……?構わんが、今すぐ用意できるのは五十くらいだぞ……?』
『十分ですよ。城からも兵が出ているのでしょう?……これだけいれば、小娘の一人くらい簡単ですよ。いくら相手の
『……これは……まずいか?』
セイドリックはエミリアを連れて行く気満々だ。
これでは七日あった筈の期日は効力を失ってしまう。
『と、とにかく……
『エミリア・ロヴァルト……僕
『……ワシはボンキュッボンがいいのう……』
『はっはっはっ。駄目ですよ父上、少女は僕の為に存在しているのですから』
部屋の中からカタンと何かを置く音が聞こえ、サクヤは嫌な予感に、首をギギギっと横に
『……ま、まさか』
その少女の像は、どう見ても幼い少女だった。
この像がエミリアに見えてしまうくらい、部屋の中の
サクヤは、無意識のうちに
何よりも、先行してエミリアと合流をしなければならない。
その為にはエドガーを、ローザとサクラを連れなければ、エミリアの
『くそっ……一対一ならば何とでもなるが……!五十人は
サクヤは自分の強さを、個人技での戦闘ならば優位であると
しかし複数、それもかなりの人数になると別だ。【魔眼】で動きを止められるのは自分の
話に聞いた五十人など、
『魔力?が万全であれば、忍術次第でどうにでもなるが……わたしもローザ殿の事を言えないくらいには、疲労がたまっている……――むっ!……あれは、エミリア殿……!?」
現在、サクヤは【
『おーいっ!エミ――っ!!――あぶっ!』
声を掛けられれば簡単だったが、
『ちっ、ならば……急がねば!』
サクヤは急ぎ、【
「……と、言う訳でした」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!な……何それ!キモイキモイキモイキモイィィィィっ!!」
自身の身体を
サクヤが話しているうちに、サクラとローザもエドガーの部屋に来ていた。
「王室の
ローザも、
「……準備は出来た。行こう」
エドガーは静かにそう言い、
まだ全回復ではない魔力を
(あ、
(そりゃあそうでしょ……エミリアちゃんがそんな男に取られたら……って言い方は変か……)
(とにかく急ぐわよ……計算上、恐らくは王城の近くで
サクヤがサクラに寄り
すぐ後ろからローザも混ざり、二人に
「行くよっ……三人とも」
「う、うん!」
「……
「……ええ」
そうして、【福音のマリス】一行は出撃した。
夜になる聖王国で、一人の少女の運命は転がり始めていく。
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