79話【一日目~エミリアside~】
◇一日目~エミリアside~◇
サクラが
サクヤが、廊下で倒れていたローザを
【
「今日もお部屋から出てこないのかなぁ……お嬢様は」
ナスタージャは、
「知らないよ~、ナッちゃんが
ナスタージャに返答したメイドは、忙しそうに皿を
「冷たいなぁ……ケイト~」
ケイトと呼ばれた
実はナスタージャよりもメイド歴は先輩である。
「そんなこと言われても~、ナッちゃんはエミリアお嬢様としょっちゅう一緒じゃな~い……私は
「それは分かるんだけどぉ……お食事も取ってないから、心配で……」
ナスタージャはここぞとばかりにエミリアの好物を皿に
「ふふ。これならお嬢様も食べてくれるっ……!」
「……
隣で、エミリア以外のロヴァルト家の
それもそのはずであり、部屋から出てこようとしないエミリアに、好物があると言って簡単に釣り出せれば、エドガー
「分かってますけどもぉ」
口を
「フィルウェインさん、そのお料理
ケイトは冷めないうちにと、出来たばかりの料理を
「……ええ。
本来、調理担当のコックがいるのだが、今日に
「コルデンさんの味じゃないって……怒りませんよねぇ?」
コックのコルデンは腕がいい。
他にもスカウトされていたが、
そんな腕の立つ料理人の料理に比べたら、メイド達が作る料理は
「今は大丈夫よ……皆様それどころではないから。はいケイト、お願いね」
「了解で~す!」
急に決められた、
それにアルベールも、ロヴァルト家の
ケイトは大皿に盛られた【川ジブネール】(ロブスターに似たもの)を豪快に両手で持ち上げ、
「……落とさないでよぉ」
「ナッちゃんみたいなミスはしませんよ~だっ!」
「――んなっ!」
ナスタージャにダメージを与えて、ケイトは
地味に心に傷を負ったナスタージャは、フィルウェインと目が合い。
「私、そんなにミスしてますぅ……?」
「……さ。お嬢様の所に行きますよ。エドガー様の所に行ったことも説明しなくては」
完全にナスタージャをスルーして、フィルウェインは行ってしまう。
それが全てを物語っていた。
「うぅ……はい。」
ナスタージャは、エミリア用に作られたワンプレートの食事を持ち、自分にがっかりしながらフィルウェインの後ろをついていった。
◇
カーテンは全て閉ざされて、部屋の明かりは
しかし、ベッドの横に置かれた机の上に、小さく光るランプが
その机では、エッグゴールドの金髪を
「……絶対
エミリア・ロヴァルトは、目元をクマで
「ぶち壊すって言っても……ただ
大きな空色の
エドガーが
どうにかして、自分の未来を切り開く為に
「……くっ」
ぐしぐしと涙を
貴重な紙が、などとは言ってられず、なりふり構わず書きなぐる。
「セイドリック・シュダイハ……シュダイハ子爵家の長男。
騎士学校で一度
借金苦で、騎学に
しかし、その身体は売られてしまい。
結局騎士学校には戻れず、今も
それがシュダイハ家の
「――っんんんんんっっ!!」
自分が見知らぬ男に身体を売るという怖ろしい事を考えてしまい、エミリアは口元を
「はぁ……はぁ……――っ!?」
部屋の扉の向こうに
急いで小さなランプの
コンコンとノックがされて、
「……お嬢様。起きていらっしゃいますか?……フィルウェインです」
「私もいますぅ」
(フィルウェイン、ナスタージャ……)
「お食事をお持ちいたしました……ナスタージャが作ったのですよ」
「お嬢様の大好物ばかりですぅ!【チャコット】と【クーム】もありますよぉ!」
チャコットは
(……ゴクリっ)
空腹で、とても可愛らしいとは言えない腹の音が、ぐぅぅぅぅ!っと鳴らす。
(うぐぐぅ……)
扉の
それもその筈、扉の向こうではフィルウェインが、匂いを部屋に
(――!!)
エミリアはハッとして、反対の手でノブにかかった手を
「……お嬢様。そこにいますね?」
(――ギクッ!)
向こう側のノブが
フィルウェインは
だが、エミリアは言葉を
「お嬢様。ドアを開けては頂けませんか……?」
「……ご、ごめんっ!」
エミリアは
別に無理矢理開けられるとは思っていない。
「お嬢様ぁ……一緒にご飯食べましょうよぉ」
「今日、エドガー君の所に行ってきましたよぉ」
「――っ!?」
――
「ご安心ください。エドガー様のご様子を
「……」
まずは安心だ。でも、
個人的ではあるが、ロヴァルト家にもメイド達にも迷惑は掛けたくない。
それにエドガーだ。王家が
【召喚師】を“不遇”と
エミリアは、それを知らなかった。
隠されていたとはいえ、ただただエドガーはやる気も
それを世話して、自分一人で納得していたのだ。
兄にエドガーがそういう
「エド……何か言ってた?」
「――!……い、いえ。お嬢様の事は話していませんから」
(すみません……お嬢様)
「ローザさんもサクラさんも、全然気にしてませんでしたぁ!」
「それはそれでムカつくなぁ……ん?サクヤは……?」
「……ね、寝ていましたぁ」
それだけは事実だった。
しかし、エドガーも異世界人達も、動き出している。
エミリアが知らないだけで、特にエドガーは自分のことなど考えていない。
王家や貴族などの事など考えずに、エミリアを助けようとしている。
ローザに
「今後も、エド達には言わないで、絶対……分かったら下がって」
(絶対……
このままでは、いつエドガーに知られてしまう。うかうかなんてしていられない。
異世界人達がエドガーを
「
「お嬢様ぁ、お食事ここに置いておきますから……せめて食べてくださいねぇ」
カタンと音が鳴り、フィルウェインとナスタージャは戻っていったようだった。
少し待ち、エミリアは扉を開け、
◇
広い
フィルウェインとナスタージャは、エミリアが出てくるのを待っていた。
「なんにせよ、お嬢様がお食事を取っていただいただけでもよかったわね……」
「そうですねぇ……でもお嬢様、エドガー君の事気にしてました……よねぇ?」
二人でメイド達の
「……一番、エドガー様のことをお考えになっているのでしょう、お嬢様は」
当然と言えば当然だ。エミリアがエドガーを好きなのは百も
エミリアだって
家の事や国のことを
「……だといいんですけどぉ」
「……」
◇
こうして、各場所での一日は終わる。
シュダイハ家に
エドガーの魔力を回復させたローザとサクラ。
一人で何とかしようと、
――しかし、ローザが魔力の
倒れた事だけは、サクヤ以外の誰も、知ることはない。
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