73話【今後の方針】
◇今後の方針◇
翌日の【福音のマリス】に戻り、メイド達の話は終わった。
しかし。
「――で?
エドガーの様子を見に行ったローザは、彼がつぶれていることを確認して食堂に戻り、黙ってフィルウェインとナスタージャの話を聞いていたが、
「こ、これからなんですぅ!」
「すみません。私はその場にいなかったので、このナスタージャが見聞きしたことしか分からないのですが」
フィルウェインがローザに謝る。
「だってフィルウェインさん!お嬢様が結婚ですよっ!大切な話なんですから、前後をはっきりさせた方がいいでしょう!?」
「――わ、分かったから落ち着きなさい。はしたないでしょう……」
テーブルに
「それで、その後に何があったのだ?」
ローザの隣に座るサクヤが、身を乗り出すナスタージャを押し返して聞く。
「はい。結婚のお話は、お嬢様方がお帰りになったあと、持ち帰ったお手紙に書かれていたのです」
「――手紙?」
フィルウェインがコクリと
「これです」
「これを見て、エド君が必死になったんだよ」
一度話を聞いていたサクラが、手紙を見て言う。
「失礼」
ローザは一言声を掛けて手紙を読み始める。
ローザは異世界人だが、
それはサクラやサクヤも同じであり、“謎の異世界バフ”がかかっていて、勝手に変換されているのだ。
「さて、【聖騎士】昇格、
「……」
「なるほど」
サクラは苦虫を
サクヤは何かに納得するふりをする。つまりはよく分かっていない。
「まだ続きがあるわ……
「今日は【火の月26日】……です」
(えっと……日本でいえば、4月26日……かな)
サクラは充電がギリギリの【スマホ】で確認する。
この世界の
土、火、水、風に分けられ、各月91日(風の月のみ92日)で月が替わる。
日本で言えば1~3月が土。4~6月が火。7~9月が水。10~12月が風となる。
今は【火の月26日】だ。多少前後はあるが、一年が365日なのは日本と同じでサクラには分かりやすい。
(そっか……あたしがここに来て、まだ15日くらいしか
「後7日か……で、どうしたいの?
サクラが一人考えていると、ローザがメイド二人に話を進める。
ローザが言うのは、王家が決めた
「……はい」
「……はいぃ」
「それを
手紙に書いてある名前を指でトントン叩き、貴族の
貴族の結婚はややこしいものがあるのは、どうやら異世界だろうが自分の世界だろうが変わらないらしい。
ローザは嫌そうに
「その通りです。旦那様も奥方様も、この手紙を読んで
「――エミリアは……?」
フィルウェインが手紙をローザから受け取る。
少しだけ力を込めて、クシャリと手紙が音を鳴らした。
「……口では平気……とおっしゃいますが、その日の夜はお部屋から出てまいりませんでした」
「はぃぃ……私も入れませんでした。多分お嬢様は泣いていたんですぅ……」
エミリアの
「でもおかしくないですか?」
「何がだ?」
サクラが
「だって【聖騎士】に昇格させたばかりの新人でしょ?正確にはまだなってもいないのに……いきなり結婚っておかしいでしょ?――それに、エミリアちゃんを気に入ってる様子なんだし、王女様もそんなこと言うかなぁ……?」
「しかし、手紙の
フィルウェインはサクラの意見は違うと思っているらしいが、サクラは。
「そんな物どうとでもなりますよ。《魔法》や“魔道具”なんて物があるんですから」
サクラは基本的に、まだこの世界自体を信用していない。
ましてや隠れオタクで、マンガや小説を親に隠れて読んでいたくらいだ。
貴族の
「王女様が
ただ、「異世界と言えば」と言う先入観と
「サクラ……落ち着きなさい。あと王女を
ローザはサクラを
ローザも元は異世界の王女だ。サクラの言葉には耳が痛い部分も多々あるので、決して強くは言わないでおいた。
「でも、ローザさん……」
サクラも、ローザの言いたいことを理解してか、それ以上の
「取り
「はい。
フィルウェインは
「もしもその王女……が、エミリアを結婚させたいとして、正直言ってメリットはないと私も思う。むしろデメリットの方が多そうだわ」
ナスタージャやフィルウェインから聞いた話から
エミリアの【聖騎士】昇格が正式発表されれば、貴族達は
十代の若い【聖騎士】であり。それも、王女を
これから多大な注目も浴びることにもなるだろう。そんなエミリアに、わざわざ王女が結婚と言う
「サクラの言う通り、裏はありそうだけれど……」
「――でしょ~!?」
ローザが乗っかってくれたことで、サクラは生き生きしだす。
「でも
「……つまり……協力しては頂けない……と?」
フィルウェインはローザを
「そうね。現状は無理――でも、エドガーは助けるつもりでいるのだろうから、問題は時間と……」
「お嬢様の、
「「……」」
「……くぅ……くぅ」
会話が止まり、静かになった部屋に、一人の人物の
「……こ、こいつ。静かだと思ったら……なんでこんな時に寝れんのよ……」
サクラは怒りと
「起きろぉぉぉっ!
「―――んぶぅっ!ぬっ!?――あ。あぁぁぁぁ~っ」
いつもより大きめのハリセンは、寝ていたサクヤの
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